忘れないうちに…
「少し早めにいらっしゃい」とお師匠さんに呼ばれるお茶のお稽古
今日は今年の初稽古
タツ先生もミナ先生もいらっしゃる
お弟子さんもわさわさやって来て
満員御礼
私はお正月に買い求めた伊太祁曽神社の絵馬とピンク色のスイトピーを手みあげに持ってゆく
お師匠さんは一番最初に自分の衣装部屋に私を連れて行き、着物の試着をしてれる
「茶箱点前をやるから」とミナ先生が呼びに来て早々に着物の試着を終える
お茶室に戻るとお盆の上に玉手箱のような茶箱が乗っている
姉弟子さんが準備万端とそのお盆を待ってするするとお茶室に入る
私はお客さん
だた黙って姉弟子さんの立ち振る舞いを見詰めてる
まだまだ分からぬことがいっぱいで
私の目は猫の目のようにくるくる回っている
茶箱からは手品でも見ているように数々のお茶道具が出てきて
頭の中はハテナが並ぶ
三年目に入るという姉弟子さんのようにいつか私もなれるのか…
ミナ先生は姉弟子さんの横で一所懸命に指導をする
ゆっくりと大きな大福と格闘して頂きながら、のんびりと薄茶点前を待つ
私の頭は大きな大福でいっぱいになり、いつ薄茶を頂いたのか覚えていない
「はい、次はかなちゃんの略盆点前のお稽古をしましょうね」
水屋にゆき、準備を始めるとミナ先生が丁寧に茶巾の絞り方を教えてくれる
棗に抹茶を入れるのも抹茶を綺麗に「丸くテニスボールのようにするといいのよ」とミナ先生のお手本の手元を追いかけるだけで精一杯
ふわっと雪山のように見えてくる
私の略盆点前のお稽古が始まる
姉弟子さんやミナ先生に見つめられ
緊張することしきりである
いつの間にかやって来たお客さん希望の子猿さんも加わって
お客さんがいっぱいになる
お師匠さんのすず先生は余裕の表情で見つめている
凛とした佇まい
さすが五十年は生半可ではない
同じことの繰り返し
でもやった後にはすぐに忘れる
頭で覚え込むことはない
身体で覚えよう
お茶を習って二十年の姉弟子さんに薄茶点前をしてもらう
そこは私とは違ってサラサラと流れるようにお点前をされている
時間って大切なんだと心に刻みながら姉弟子さんの薄茶を頂く
「さぁ、もう一度お稽古をしましょう」
とすず先生から施される
二度目のお稽古では一度目よりも上手くなるとお師匠さんに褒められていた
お茶のお稽古で私はいつも緊張と緩みが一緒にやってくる
そのことが心地良いのか
不思議だなぁ
もう上手く出来ないことなんて気にしない、身体が喜ぶのか、癖になってきている
お客さんだけやると言っていた子猿さんもお点前のお稽古を始めると言われる
ついにわたしも姉弟子になるらしい
この二人の弟子のお稽古中の気の流れはまだよちよち歩きと分かってきた
忘れないうちに書いておこう