『明解言語学辞典』長屋担当項目の補足
もう10年ほど前になりますが、2015年7月に『明解言語学辞典』が発売になりました。
この辞書は、その名の通り重要な言語学用語を明解に解説した辞典です。
音声学や形態論などの分野や、生成文法や認知言語学などの理論も横断して約330項目が解説されています。
三省堂の特設サイトによれば、
ということで、言語学を学ぶためにぴったりの辞書ということです。
私も書きました
そんな『明解言語学辞典』ですが、私も執筆しました。
具体的には、「アラインメント」「意志性」「一致」「格」「空間参照枠」「屈折・派生」「形態素」「形態論」「形態論的プロセス」「形容詞」「言語類型論」「語」「項構造」「語順」「語類」「主語」「所有」「数」「数詞」「接近可能性の階層」「接語」「接辞」「側置詞」「重複」「動詞」「動詞化」「フィリピン・タイプ」「文法関係」「名詞」「名詞化」「有標性」「連続体」の32項目を担当しました。
全体でだいたい330項目だそうですから、この辞書の実に10分の1を書いたことになります。全執筆者の中で一番多いそうです。
主として記述言語学や言語類型論関係の項目を担当しました。
基本的な用語がほとんどですが、中には「フィリピン・タイプ」のような日本語ではほとんど書かれていない項目もあります。
以下では、辞典の本体には載せることができなかった2点について補足しておきたいと思います。
謝辞
参考文献の情報
もともとこの二つは自分の Google ウェブサイトに載せていたのですが、諸事情でこちらの方に引っ越してくることになりました。
謝辞
原稿の読み合わせ会では YN 先生、HK さん、SH さんに原稿を丁寧に読んでいただきました。
ときどき TN さん、NK さん、MI くんも読み合わせ会に参加してくださり、コメントをいただきました。
全体にわたって SN くんに鋭い的確なコメントをいただきました。
他にも、HUくん (「有標性」)、RU くん (「格」、ロシア語、フィンランド語) にコメントをいただきました。
ありがとうございました。
文献情報
辞書本体には、紙幅の関係で言語データの書誌情報を載せることができませんでした。
かわりに、こちらに載せておきます。
「アラインメント」
Quechua: Payne, Thomas E. 2006. Exploring Language Structure: A Student's Guide. Cambridge: Cambridge University Press.
Kewa: Franklin, Karl James. 1971. A Grammar of Kewa, New Guinea. Pacific Linguistics, Series C 16. Canberra: The Australian National University.
「一致」
Amele: Roberts, J.R. 1999. Grammar Exercises for Tools for Analyzing the World’s Languages (Bickford 1998). Mimeo, SIL UK Training and Research Dept., Horsleys Green, Bucks. (Cited in: Kroeger, Paul. 2005. Analyzing Grammar: An Introduction. Cambridge, UK: Cambridge University Press. )
「格」
Kalkatungu: Blake, B. 1987. Australian Aboriginal Grammar. London and Sydney: Croom Helm.
「数」
Ainu: Tamura, Suzuko. 2000. The Ainu Language. Tokyo: Sanseido.
「重複」
Mangap-Mbula: Bugenhagen, Robert D. 1995. A Grammar of Mangap-Mbula: An Austronesian Language of Papua New Guinea. Pacific linguistics, C-101. Canberra: Australian National University.
Ilokano: Rubino, Carl. 1997. A Reference Grammar of Ilocano. PhD dissertation, University of California at Santa Barbara.
「動詞化」
Yidiɲ: Dixon, R.M.W. 1977. A Grammar of Yidiɲ. Cambridge: Cambridge University Press.
「文法関係」
Yoruba: Dryer, Matthew S. 2007. Clause types. In: Timothy Shopen (ed.) Language Typology and Syntactic Description, Volume 1: Clause Structure, 224-275. Second Edition. Cambridge University Press.
「有標性」
Russian: Haspelmath, Martin. 2006. Against markedness (and what to replace it with). Journal of Linguistics 42.1: 25–70.
日本語、英語、タガログ語、インドネシア語、ラマホロット語のデータは長屋によるものです。
またスペイン語は SN くんに確認してもらいました。ありがとうございました。