新たな特急列車「36ぷらす3」 JR九州を代表する787系「本来のコンセプト」踏襲
JR九州を代表する電車「787系」が、その本来のコンセプトを踏襲しつつ、新しい特急列車「36ぷらす3」に生まれ変わりました。ビュフェも復活。どんな姿になったのか、各号車を詳しく見ていきます。
(この記事は2020年10月に会員限定記事として配信したものです。)
大変好評という「36ぷらす3」
2020年10月16日(金)に運転を開始したJR九州の新しいD&S列車、特急「36ぷらす3」。JR九州を代表するという787系特急形電車を全面的にリニューアルし、全車グリーン車で走りはじめました。
▲奥が「36ぷらす3」、手前が現在の一般的な787系(2020年9月、恵 知仁撮影)。
多数の受賞歴がある787系
1992(平成4)年7月15日に、博多~西鹿児島(現・鹿児島中央)間を結ぶ特急「つばめ」としてデビュー。デザイナーは水戸岡鋭治さんで、コンセプトは「走るホテル」。レーの外観で、上質なサービスを提供するモダンな空間、快適性が目指され、「グリーン個室」「トップキャビン」「グリーン席」「セミコンパートメント」「ビュフェ」「普通席」と多様な設備を備えて登場しました。JR九州によると、「大変な好評」をよんだといいます。
▲BM-363という編成番号が与えられた「36ぷらす3」(2020年9月、恵 知仁撮影)。
787系は、国際的なデザイン賞である「ブルネル賞・長距離旅客列車部門」のほか、鉄道友の会選定の「ブルーリボン賞」、通商産業省(当時)選定の「グッドデザイン商品選定」など、多数の受賞歴があります。
現在も「かもめ」「にちりん」「きりしま」などとして九州各地を走行中。今回、「36ぷらす3」に改造された車両の製造年は1992年です。
「36ぷらす3」の車両コンセプト
車両自体のコンセプトは、先述した787系本来のコンセプトを踏襲。今回はその外観を黒に変更することで、さらに重厚感、安心感を増したほか、車内はグリーン車にふさわしい落ち着きと、さらに快適な居住性を提供することを目指したといいます。
▲787系本来のコンセプトを踏襲したという「36ぷらす3」車内(2020年9月、恵 知仁撮影)。
一方、「車内を動き回れる」という列車の長所を生かすことや、楽しい雰囲気を車内の乗客同士で共有できるよう、3号車にビュフェ、4号車にマルチサロンが設けられたほか、1号車から3号車までの個室の仕切りは、一部(1号車の旧グリーン個室)を除き、開放的なものにされています。
また、「36ぷらす3」のコンセプトである「走る九州」を体現できるよう、沿線の文化、自然、食、人、事、もの、すべてがつながる「新しくて懐かしい車両」を目指したそうです。
「電鋳」を配置した外観
車体は「黒い森」をイメージしたメタリック塗装で、光のあたり具合や角度によって、さまざまな印象が生み出されます。
随所にあしらわれたロゴマークは金色をベースとし、主要なポイントには「電鋳」により製造した立体的なロゴが配置されました。水戸岡鋭治さんの手による細かな紋様が細部にまで施されているとのこと。
▲「36ぷらす3」側面にある電鋳のロゴマーク(2020年9月、恵 知仁撮影)。
「電鋳」とは、電気分解された金属イオンをモデル(原型)の表面へ必要な厚さに電着させ、モデルの形状や表面の凹凸を極めて忠実に再現できる鋳造技術だそうです。
この電鋳によるロゴマークのキーホルダーが、「36ぷらす3」の車内販売で扱われます。
定評がある大川組子 従来の787系の天井を生かし
「ななつ星in九州」「或る列車」などで定評があるという大川組子が、「36ぷらす3」でも多用されています。
天井は「格天井」「光天井」のほか、従来の787系の天井を生かした仕様にしたとのこと。
▲植物の柄が描かれた「36ぷらす3」の座席(2020年9月、恵 知仁撮影)。
座席やカーテンには、植物を中心とした柄が水戸岡鋭治さんにより描かれています。
壁や荷物棚などは、本物の木を加工した素材を使用。寄せ木仕上げや、木にオリジナル柄を印刷した新しい表現も用いているそうです。
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