キハ58系、中国・天津に放置 いったいなぜ? 背景に「幻の観光鉄道」計画か
かつて日本全国を走り回っていたキハ58系ディーゼルカーが、遠く離れた中国の港湾地帯で「放置」されています。なぜ中国に渡り、何にも使われずに放置されているのでしょうか。
(この記事は2018年2月に会員限定記事として配信したものです。)
中国の国際貿易港に昔懐かしい「キハ」の姿
中国の首都、北京から南東約120kmの位置にある「天津」。人口およそ1500万人を誇る、中国でも有数の大都市です。渤海に面した天津港を有し、国際貿易の拠点としても成長しました。
国際貿易を担う港湾や空港には、税関手続きが完了していない物品を一時的に留め置くスペースがあり、「保税区」「保税地域」などと呼ばれています。天津港にも保税区が設けられていますが、ここに日本のJR線で運転されていた「キハ58系」の廃車体が2両、なぜか10年以上にわたって放置されているといいます。
▲キハ58系の廃車体2両が縦一列に並ぶ、中国の天津港(2018年1月14日、草町義和撮影)。
キハ58系は、非電化路線の急行列車用として開発された、昔懐かしい日本国鉄のディーゼルカーです。1960年代に大量生産され、全国各地の急行列車で活躍しました。しかし、老朽化に伴い新型ディーゼルカーに置き換えられる形で徐々に数を減らし、定期列車での運転は2011(平成23)年に終了しました。
日本では現在、JR東日本盛岡支社が保有している3両と、いすみ鉄道(千葉県)がJR西日本から譲り受けた1両の計4両しか運転されていません。いずれも観光客向けの臨時列車や団体列車で使われており、毎日運転されているわけではありません。
▲広島駅に到着したキハ58系(キハ28形)による急行「みよし」。天津に放置されているものと同タイプの車両(2007年6月、恵 知仁撮影)。
このほか、海外の鉄道事業者に譲渡されたキハ58系もあり、一部がロシア・サハリンやタイ、ミャンマーに渡りました。
また、中国のネット掲示板では、かなり前から「天津港の保税区に日本のディーゼルカーが放置されている」との情報が出回っていました。
▲キハ58系が放置されている保税区の脇には、自動車右側通行の道路がある(2018年1月14日、草町義和撮影)。
そこで2018年1月14日(日)、中国のネット情報や衛星写真などを手がかりに天津港の保税区を探し歩いたところ、保税区の敷地内でキハ58系が2両、南北に縦一列で置かれているのを発見しました。
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