JR東日本の少数派車両 209系500番台のいま
武蔵野線や京葉線では白い顔の電車が走っています。この車両がかつて中央・総武緩行線や京浜東北線を走っていたのはご存知でしょうか? 209系500番台と呼ばれる車両で1998年に登場したものの、10両編成17本(170両)で製造終了。首都圏を走るJR東日本の電車のなかでは数少ない存在です。
(この記事は2021年5月に会員限定記事として配信したものです。)
209系500番台って、どんな電車?
500番台という枝番号の形式が付いているように、209系500番台は209系という車両の改良型として登場しました。JR東日本の車両のなかで、209系は製造方法やメンテナンスの方法を全面的に見直した電車として知られていて、「寿命半分・価格半分・重量半分」というキーワードが有名です。
209系500番台では209系の走行機器を引き継ぎ、幅を広げた車体を採用したことが最大の特徴となっています。ちなみに、209系は大半の車両(0番台)が京浜東北線に投入され、現在では千葉から東側の房総地区に転用されて活躍しています。
▲武蔵野線を行く京葉車両センターの209系500番台M72編成。習志野電車区に新製投入後、三鷹車両センター→浦和電車区→京葉車両センターと転属し、8両化されて現在に至る(2021年、伊藤真悟撮影)。
209系500番台はJR東日本の車両製造部門だった新津車両製作所で製造されました。現在では総合車両製作所新津事業所となっていますが、209系500番台が製造される前は横須賀・総武快速線向けのE217系が製造されていました。209系500番台ではE217系の車体構造を引き継ぐことで、車体の共通化が行われています。
それまでの国鉄・JR東日本の電車は、近距離利用向けの通勤形と比較的距離の長い中距離向けの近郊形で、作り分けが行われました。209系500番台では通勤形と近郊形の車体構造を共通化することで、一般形車両として車両の種類が統合されています。さらに、車体の幅が広くなった分だけ車体も大きくなり、1両あたりの輸送力もアップしたことで、ラッシュの混雑緩和を図ることもできました。
▲新津車両製作所(現・総合車両製作所新津事業所)の一般公開で展示された製造途中の209系500番台。すでに編成札「51」が掲げられている(1998年10月4日、伊藤真悟撮影)。
JR東日本では、209系500番台に次いでE231系が製造されましたが、E231系の試作車となる209系950番台は209系500番台と同時期(209系950番台のほうが1ヶ月ほど早い)に製造され、E231系が量産に入った段階でE231系900番台に改めています。
▲落成後に信越本線で公式試運転を行う209系950番台。500番台とは異なり前面は銀色で、6扉車が組み込まれた(1998年10月19日、伊藤真悟撮影)。
E231系では通勤形と近郊形の車種統合に加えて、走行機器を一新していますが、新規に開発した走行機器の性能を確認する必要があった一方で、車体の方はE217系で既に実績があったので、幅の広い車体が先行して導入され、機器の方の量産は少し後となりました。
ということで、209系500番台はE231系が量産化されるまでの「つなぎ役」として製造されたのでした。
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