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【第66回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その3

3作目は小沢道成さんの『オーレリアンの兄妹』

候補者について

小沢道成[おざわ・みちなり]
1985年生まれ。京都府出身。京都府立朱雀高等学校通信制中退。EPOCH MAN 主宰、劇作家、演出家、美術家、俳優。虚構の劇団所属。初の最終候補。

(写真撮影:渞忠之)

候補作について

昨年8月、下北沢・駅前劇場にて上演。

■時、場所
 
現代もしくは近未来。無人の家。全10場。

■登場人物
 絆太(はんた) 兄 15歳
 晃子(てるこ) 妹 14歳

■物語
 森を抜け、とある一軒家にたどり着いた絆太と晃子の兄妹。その家には喋る冷蔵庫など様々な仕掛けが施され、毛皮のコートなどが置かれていた。2人はお菓子を詰め込んで出て行こうとするが、絆太が両親の幻影に苦しめられ、そこで一夜を過ごす。翌朝、絆太が目を覚ますと晃子がカレーを作っていた。持ち主が戻るまでここで暮らそうと提案する晃子とそれは犯罪だとたしなめる絆太は激しく対立する。

総評

 この作品も実際の上演を鑑賞していて(感想ブログはこちら)、中村 中さんの歌や演技抜きに戯曲そのもので評価するのは難しいのだが、シンプルな構成の中に親による子供の虐待、暴力の連鎖といったテーマをダークな寓話として描き出している。
 面白いのは、冒頭に絆太(はんた)と晃子(てるこ)の名前の由来が書いてある点。グリム童話のヘンゼルとグレーテルをもじっているのは容易に察しがつくのだが、それぞれどのような人に育ってほしいかの願いが込められている。虐待をしてしまうような親でも、子供が生まれたときは色んな思いを込めて名前をつけるんだよなぁと思うとやるせない。絆太の方は劇中で名前が出てこないのがもったいない。

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