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ライトアップが映し出すもの
飛騨牛ホルモン鍋を食べておばさんたちとお別れした後、宿のお兄さんに教えてもらった、「タルマかねこおり」のライトアップを見に行った。
たるま水と呼ばれるここの水は奥飛騨随一の名水と知られているらしく、この水を飲む里人たちには不思議と長寿が多く、また健康で体の麻痺などがないらしい。
旅館に置いてあったからあとで飲んでおこう。感染症にも効くといいな。
ここのタルマの滝周辺が親水公園となっていて、滝の中がトンネルになって通り抜けられるのだが、昨年の豪雨の影響で土砂崩れなどが酷く、トンネルの向こう側は塞がれて通り抜けることはできなくなっていた。
奥まで行って引き返したのだが、中のライトアップは、何とも言えないイリュージョンのような世界観だった。
また、大きな氷柱?巨大つらら?氷瀑?違いがよく分からないからなんと呼べばいいか分からないが、とにかくその冷たい塊が、カラフルなライトに照らされていた。とにかく氷と雪がオブジェみたいになっている。
正直言うと、何とも気持ち悪い造形。
誰もいないライトアップ会場には、例年だったら、ホットワインなどを提供する氷のBARがあるらしいが、私しかいないくらいだからもちろんそんなBARもありゃしない。
ここでホットワインを飲みたかった。
今夜は、ライトアップのライトを点灯しにきたり、設置しに来た人の足跡しかない気がする。
ぽつんと光るハートのライトに何とも言えない哀愁を感じる。たるま水を守る姫が平家の落人と結ばれたという「たるま姫伝説」があり、縁結びの水とも呼ばれているらしい。
恋人たちがこぞってこのハートのところで写真を撮るインスタ映えスポットになるはずだったんだろうな。
他に人がいてもいなくても、私が一人ここにいるのはなかなかシュールだと思う。
ちなみに、私は、こういう場所に一人で来て寂しいなぁとか虚しいなぁとかいう感情は抱いたことがない。
そして、こういうロマンチックに仕上がっている場所に、今度は恋人と来よう、とかもあまり思ったことはない。
それより飛騨牛ホルモン鍋の方が誰かと来たい場所だし、
一人で静かに雪の森を歩くシチュエーションによっぽどドキドキする。
とは言え、そんなに長く一人で見るものもなく、長居する必要もなかったので、そそくさと帰ることにして入り口に戻った。
ライトアップ会場を背に歩いて戻っている時に思ったのが、
ライトアップされているその場所やそのもの自体よりも、漏れた光で少し離れた場所が異彩を放っている風景の方が私は好きだということ。
幻想的だったし、何とも言えない不気味さもあったり、北欧のオーロラのように見えたり、フィンランドの森のような錯覚がしたり、光が当たっているところだけ見える吹雪の姿とかにも少し怖いくらい惹かれたり。
「これを見ろよ」と誰かに照らされているものよりも、
その近くの直接光が当たってないもの。
ライトアップのおこぼれに預かっているもの。
意図せずに浮かび上がるものたち。
そっちの方が魅せられた。
だからどうということもないのだけど、
一人分の足跡だけを残しながら、帰り道にただ何となくそう思った。
早く旅館に帰って、2回目の温泉に入ってあったまろう。
雪の中で入る露天風呂を想像するだけで、早歩きになった。
勝手に名乗る岐阜観光大使の旅日記、つづく…
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