My Sweet Home ~1歳年下の昭和マンション問題~
ワクチン接種の予約が取れてホッとした直後、職場に陽性者が出て、バタバタの生活の中、新たに私の人生に急展開が起こった。
まったくもって、次から次へと色々巻き起こる。そんな私の人生。
次の議題は、我が家、いや我がマンション問題である。
私が今住んでいる家は、ファミリーマンションの1室でたった1人私だけが分譲賃貸という形の契約である。
そのマンションの1室を買った個人から私が借りているという形で、毎月の家賃を見ず知らずのその人に払っている。
そのため、家賃がこのあたりの相場では考えられないくらい安く、ファミリーマンションの面倒くさい文化のような自治会には免除していただいており、私は分譲賃貸の恩恵にあずかって快適に生活できているのである。
その持ち主が家を売ることにしたという知らせが飛び込んできた。
えっと、私が住んでるんですけど…。
間に入っている不動産会社からの手紙で知らされてびっくり。
休日にその不動産会社に出向いて詳しい話を聞きに行くこととなった。
すると、
「もしあれでしたら、買いますか?」と想定外のことを言われて更にびっくり。手数料も無しでOKだと言う。
家を買うということは私の生き方に合わないと思っていた。
ローンを払うために仕事を辞めにくくなるのも嫌だし、買ってしまったら近所に気の合わない人や変な人がいたときに厄介だし、そこで一生暮らすと決めるのは嫌だった。
飽き性だから新しい環境に変えたいと思ったらそこに住んでいられなくなるだろうし、嫌々諦めて住むのも嫌だった。
今まで一人暮らしをしてきた家は3か所あるのだが、3か所ともいい点と、必ず悪い点があった。いつでも出ていけると思って住む方が私の性格的に合っている気がしていたのだった。
それをまとめて表現すると、私が家を買わない理由は
「お金がないこと」です。(生き方や性格以前のお話…)
ちなみに貯金もない。
ただ、ハード目の積み立ての生命保険は入っており、長生きすればするほどお金がもらえるゲームに参加しているので長生きせざるを得ないけど、最低限60歳を超えないとお金は手元に入ってこないシステム。
生き方うんぬん気取る以前に、織田裕二並みにマンションを買うお金がない!のであった。
しかし、今の家は長年住んでいて、気に入っている。
たった一点を除いて完ぺきなのである。
不動産屋さんに「もうあのマンションに何年住んでましたっけ?」と聞かれて、「7年です」と即答したら、書類を見て「え?もうすぐ10年になりますよ。」と訂正された。
なぜ自信満々に7年と即答したのか我ながら謎だが、とにかく7年どころか10年も住むくらい気に入っているマンションであることは確かである。
ここで我が家の自慢をすると、
・2DKだったが1LDKにリフォームされてとにかく部屋が広い
・9階で南向き日当たり良好
・大阪の大きな花火大会がベランダから見れる
・最寄駅から徒歩1分圏内
・15分圏内にいろんな沿線や私鉄の電車の駅が5個もある
・玄関から梅田(大阪都心部)まで電車で10分以内
・コンビニが徒歩1分圏内に3個あるし全部違う
・インド料理屋が徒歩3分圏内にある
・マンションの前にたこ焼き屋がある
・窓から実家の屋根が見える
・しめちゃんちまで自転車で5分で行ける
完璧。
そんなマンションあるの?って感じ。
書いててしびれた。
気に入らない点はたった一つ。
それは、
築40年を超えていること。
私の1歳年下です。
だって幼稚園の時に同じ組だった友達が当時このマンションに家族で住んでたから。あの頃はまぶしいマンションだった気がするけど。
うーん…。築同世代。伝説の昭和マンション。
提示された値段は、私の予想を遥かに下回る格安のお値段(もちろん3桁)で、そんな値段で大阪の中心地のマンションを買ったって言う人を私は聞いたことがないくらいである。
黒くなったバナナの叩き売りみたいな感じだろうか。
値段を言えばほぼ全員に「買えよ」と言われちゃうくらいの格安で、悩んでるのが恥ずかしくなるくらいなので、さすがの私も値段を書くことは控えるけど、とにかく安い。
頭金もいらないし、もしも今の安い家賃と同じ額で月々のローンを組んだとしても、60代のうちに完済できるとのこと。
私が61歳の時マンションは築60年。
どうなのそれ。
重要文化財レベルか。
「これだけの条件なら買ってしまってから貸すのもできるし」「私が子供2人と暮らしているマンションより広いんですよ」などと不動産会社の女は言うけど、オンボロマンションを独身40女に売りつけてしまえという魂胆ではないかと疑心暗鬼にもなる。
私がここで暮らしているこの10年で、このマンションは誰かが出て行ってもすぐに誰かが入っているので空き部屋が出ることはほぼないから、確かに借り手はすぐに見つかるかも知れない、築50年くらい迄は。
この立地の良さはなかなかないから。
だけど築60年となるとどうだろう。
予想もつかない。
阪神大震災と大阪北部地震は生き延びているマンションだから意外と耐震は強いとも言えるが、見えないところのダメージも予想がつかないとも言える。
ただ、間違いなく言えるのは、私が一人暮らしをし始めて払ってきた賃貸料の総額で十分買えてしまう金額のマンションであり、私が20代の時からこれまで払ってきた家賃は1円も返っては来ないが、マンションを買ってしまえば資産となるし、売ればお金は戻る、目減りしたとしても。
ちょうど今、我がマンションは大規模な修繕工事をしているから、まだまだ取り壊さないし、大事に長くマンションとして活躍してもらうつもりらしい。
私の人生設計に変化が必要な事態になれば、誰かに売ったり貸したりしたらいいし、一応バリアフリーだし、親や年老いた頃の妹弟に譲ってもいいし。
古くなったところを自分で直していくのも、ちょっとDIY好きな私の心に火がつき始めているのも事実。
どうしようか。
とにかく一人でマンションのこの部屋で考えてみることにする。
あーあ、貯金があったらポンと買えたのにな。
手元に何もない。
一体何に消えたのだろう、私のお金。
ああ。
旅だった。
素晴らしい旅の時間が私の手の中にキラキラと残っていた。
良い良い。
さ、今日も働こう。
写真は過去に旅したモロッコの写真。
部屋のイメージをこんな感じにしたい野望がある。