潮風を感じながら。【ポルトガルの道#1】
これからポルトガルのポルトから、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまで歩き続けた旅の記録を綴っていこうと思うので、毎回、以下の前置きを乗せておくことにします。
いわゆる普通の(?)ヨーロッパ旅行記や世界一周旅行記はいったん中断となり、ここからしばらくは、ひたすら毎日海岸沿いや森の中を通り抜け、町から町を歩き続け、食べ続ける旅行記となります。
だけど、この道の途中でたくさんの仲間と知り合えて、世界多分一周旅の中で、その後に別の国で約束して再会した人たちもいたり、ここで別れたきり二度と会わないだろうけど、心に残る人たちがたくさんいて、出会いの記録でもあります。
毎日8時間以上歩いていて常に疲れた状態で、写真に写っている場所がどこなのか、町の名前すら分からないときも多く、適当に撮ったものがほとんどの写真。だけど、インスタのストーリーでのメモが残っているので(と言っても「これは3ユーロで美味しくなかった」とか、「足が痛い」とかその程度のメモ)それを頼りに、思い出を振り返りながら、私の歩き旅の記録として、ここに残しておこうと思っています。
前置きのさらに補足が長くなりすぎたのでこの辺にしておいて、ポルトガルの道、カミーノ初日スタート!!!
午前6:30前にはポルトの宿を出て歩き始めた。行き方なんかは分からない。Googleマップが示してくれる最適解のルートとカミーノの巡礼路は違うから、あてにしない。ただ、街中にある黄色の矢印を探してそれに従うだけ。時々、同じように貝殻をぶら下げたバックパックを背負って歩いている巡礼者についていったりするが、彼らも同じような感覚なので、みんなで道を間違えたりする。経験上分かっているが、カミーノは、大きな街を抜ける時が一番難しいのだ。
川沿いに出た。
これに沿って行けば海岸に出る。そのままひたすら海を左手にして、まっすぐ進めばいいので一安心。今日はここから30kmほど海岸沿いを歩けば、目的地にしようと思っている町に到着する。あくまで「目的地にしようと思っている」町で、確定ではない。宿の予約もしていない。おそらくその町には公営の予約不要の大人数を収容する巡礼宿があるらしく、そこに泊まれるはず。30kmを時速4〜4.5kmでのろのろ歩いて休憩も挟むから9時間くらい歩いて15:30辺りに到着できたらいいな、というざっくりした本日の予定。この気楽さこそが、私がカミーノを好きな理由の一つだ。
川が太くなっていって海になった。ポルトの海は綺麗な濃紺をしている。
ここのところ、山ばかりでアップダウンに疲れてもいたし、潮風を感じながら歩きたかったからポルトガルの道を歩くことにした。「潮風を感じながら。」このなんかいいやん的ワードに完全に騙されたことを、その後すぐに知る。
今のところ、気持ちの良い朝の海。あまりに気持ちいいから、8:30にさっさと休憩、朝食タイム。昨日買ったさくらんぼとパンにとろーりしたチーズをつけて食べる。
なんと!
このとろーりしたチーズが美味しすぎるのである。信じられない、何これ。1.58€(240円くらい)なんて安すぎる。
これ、100個欲しい。朝ごはんは一生これとパンで生きていきたい。日本でも売ってくれ。そんなことをたくさん書いていた私のメモ。実に深い意味がなくて良い。
ずっとずっとずっと、海を左手に感じながら歩く。気付かないふりをずっとしてきたが、認めざるを得ない。「潮風」が暴風すぎる。ずっと左側からの暴風にさらされながら歩いている。心地良さはもはやない。風だけならまだしも、砂浜の砂がすごい勢いで左頬を叩きつけてくる。目にも入るし、髪の毛もむちゃくちゃである。波の勢いもすごくて、繰り返されるザパーンという音と風圧で、体がおかしくなりそうだと感じつつある。早々に海岸沿いを歩くプランの輝きが消えていく。これが現実で、これが自然なのだ。ここはユーラシア大陸の果て。海の向こうはアメリカ大陸。世界地図を想像して、今歩いている場所の特別さを何とか感じ続けようとした。
これまで歩いてきた巡礼路と違って、とにかく平坦な道でアップダウンがない。
時々足が埋もれるくらいの砂浜を歩くパートもあったが、ほぼウッドデッキかアスファルト。足の爪が剥がれかけている身としては、アップダウンがないのは非常に助かる。親指に負担がかからないので、割とサクサク歩けると思いきや、砂に足を持っていかれて、横風に心も折れそうになったり、予想外のハードさがある、ポルトガルの道初日。
ただひたすら、風で髪の毛をぐちゃぐちゃに乱しながら足を動かす時間。たまらなく…、良い。最高。
今日は初日なので、あまり人とも交流なく、淡々と進んだ。良さげなベンチを見つけては靴を脱いで足を解放させてみたり。不思議なことにずっと海は繋がっているのに、空模様や色んな条件によるのか、色が変わるところがある。Vila chãというビーチの海の色がとても綺麗だった。
16時前に予定していた町に到着した。ちょうどいい時間帯と疲れ具合なので、予定を変更せず、本日はここまでにすることにした。公営のアルベルゲ(巡礼宿)を探す。予約をしていないまま受付で空いてるか尋ねると、もうあと数床しかベッドの空きがないようで、ギリギリセーフで滑り込んだ。一泊10€(1500円)の安さ。ありがたい。
適当にシャワーを浴びて、靴下と下着だけささっと洗って干し、町のパン屋で買い出しをしてから、宿のすぐそばのレストランで夕食をとることにした。
巡礼定食で、スープと、メインにトンカツとライスとサラダとポテトフライ、食後のドリンクがついて巡礼者割引で8€1200円。10€しない料理を食べられるのは、本当にありがたい。前の週まで歩いていたフランスのルピュイの道の巡礼では、夕食と宿泊と込みで50€くらい(7500円)はしていた。ポルトガルの海岸沿いは、一定区間ごとに水飲み場があり水が汲めるから、飲料を買わずに済み、今日一日で18€(2700円)しか使っていないから、物価レベルがだいぶ下がった。
単純なので、もうそれだけで、ポルトガルサイコー!となっている。これから続く長い歩き旅でのお財布事情に関しては、少しホッとした。
眠る直前まで耳元で、ビュービュー吹きさらす潮風の音と、永遠に繰り返されるザパーンという波音の残響が、いつまでも脳内で繰り返されていた。髪をしっかり洗ったはずなのに潮のにおいがとれていない。
そんな潮風を感じながら、19:30には眠りについた。
↑本日の必需品
本日の宿↓
portoからVila do Condeまで。
1日目、50,000歩、9時間、33km。
まずまずの滑り出し。
サンティアゴまで残り247km。
旅は続く…