「世界はほしいモノにあふれてる」 【山ごもりの夏休み②】
今、標高2450mの場所にテントを張って、昼ごはんを食べて(プルコギを炒めてウィンナーとわかめごはん)、雨が降ってきて、横になって昼寝して、起きたら17時過ぎてて、アマプラで映画でも観ようか、という1人の時間を贅沢に過ごしている。
35kgのバックパックを背負い、さらに湧き水を2リットル汲んで37kgになり、ヘロヘロで息切れしながら徒歩40分の距離を1時間半かけて歩いた。もう今日の仕事は終了だ。
夜行バス、電車、バスを乗り継いで降りたら絶景が広がっていて、前回は霧で影も形も見えなかったみくりが池が見えた。雪が残っていて、緑と青と白と。美しい。
こういう美しい場所がまだまだ世界にはあふれていて、こういう場所をもっとたくさんこの目で見たい、と思う。
最高の気分だ。
この気持ちは、どんな辛いことにも負けないし、私の中で消えることはない。
なのに、どうして。と思う。
下界のいろんなものを忘れて過ごすために山奥まで来たのに、なぜかWi-Fiが飛んでいたせいで、よせばいいのに、ついネットを開いてしまったら、飛び込んできた悲しいニュース。
すごくファンだったというわけじゃないが、三浦春馬氏とJUJUが出ている、NHKの「世界はほしいモノにあふれてる」(略して「せかほし」)という番組が好きでかかさず見ている。世界各地にある素敵なものを紹介する番組で、彼はいつも世界の素敵なものを見ては目を輝かせていた。彼自身も時々旅をしていた。旅をして世界の美しい場所や素敵なものを知っているはずだった。
なのに、どうして、と思ってしまう。
もうほしいものは見つからなくなったのだろうか。
苦しみしか見えなくなってしまったのだろうか。
彼の事情は知らないけれど、心が痛む。
誰かの命が失われたことが辛い。
若くて才能に溢れる青年なのに。というのはついつい周りが思うけれど、私はそんな風には思わない。周りが羨むような人だとしても、その人が抱えている苦しみや闇の深さなんて誰にも分かるはずない、ということくらいしか私には分からないけれど。
「世界はほしいモノにあふれてる」の中でも、色彩豊かなメキシコが取り上げられていた回が一番印象に残っている。
メキシコの手作りのテキスタイルを求めて工房を訪ねたシーンで、独特な色の組み合わせに対して質問された工房のおじさんの言葉。
「とにかく悲しい色にならないように」
色を選んでいるという。
メキシコは確かに原色の組み合わせが独特で、雑貨が並んでいるのを見ていて気持ちも明るくなった。今私の枕元にあるメキシコで買ったポーチも、むちゃくちゃビビッドな色合いで、私の気持ちを悲しい色にしないように頑張って側にいてくれている。
私のテントからは、灰色の霧だかガスだか分からない物に包まれて何も景色は見えない。どんより暗い。
でも、晴れていた時に見えたあの山の緑や残雪の白さ、空の青、湖の青。
今見えなくてもそこには美しい場所が広がっているということを忘れず。世界はほしいモノにあふれていて、見たいモノにもあふれていて、素敵なものがあふれていて、美しい場所がまだまだあふれている。
それだけを思って今夜は眠る。
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