
2度目の恋:大人になって観るセーラームーン
出産前のゆったりした時間、7月にセーラームーン・ミュージアムに行った。その時、近年(2016年)に新しいシリーズが放映されていたことに気付き、観てみた。30年越しの驚きとは。
イギリス育ちのセーラームーンファン
私はロンドン出身のいわゆる「帰国子女」だ。にもかかわらず、ほぼリアルタイムで当時放映されたセーラームーンのエピソードを全て観た。徳島に住む祖父が、毎週毎週今は亡きVHSに『セーラームーン』と『生き物地球奇行』をダビングしてくれて、1ヶ月ごとにイギリスに空輸してくれていたからだ。
4歳から小学校まで、セーラームーンの世界に浸っていた。
お気に入りはセーラージュピター、セーラーネプチューン、セーラーウラヌスだった。理由は単純:同時期にはまっていた太陽系の惑星の中で、この3つの見た目がカッコ良かったから。
もちろん、セーラームーンのアニメ内でのキャラもカッコ良かったのは言うまでも無い。
かいりきだけど乙女のジュピター。
私と同じヴァイオリンを弾くネプチューン(しかも好きな海がテーマ)。
私と同じで唯一ショートヘアのウラヌス。
2022年のセーラームーンミュージアムで再開
幼少期にあれほどはまっていた『セーラームーン』だが、大人になるにつれていつの間にか生活から消えていた。そんな時、六本木で『セーラームーン・ミュージアム』という展示があることを知る。
行ってみたら、なんと私の世代の女性ばかりだったことはさておき、なんと2016年以降に放映され、私が観たことのないシリーズがあるではないか!と気付く。
臨月は、ひたすら昼休みに新しいセーラームーンを観あさっていた。
90年代のアニメなのに、ダイバーシティを謳歌している内容
大人になって気付いたことがあった。それは、登場人物の人生設定の多様なことだ。2022年の今でも所得税の計算は「男性だけが働き、子供2人の4人家族の<普通の家庭>」を想定しているこの国で、90年代に放映されたセーラームーンには素晴らしい世界観が展開されていた:
<普通の家庭>に住んでいるのは、主人公の月野うさぎのみ。他は母子家庭、親がいない家庭、中学生なのに一人暮らし、など。
主要キャラの2人がレズビアン?または何かしらのQueer (定義はこちら)。お気付きでなければネプチューンとウラヌスの関係を注意深く観てほしい。
ウラヌスはそもそもNon-Binary? 変身していない時は男性っぽいが、セーラー戦士に変身すると明らかに女性っぽい服装になる。と思ったら、2016年のシリーズでは変身していないのに女性っぽい服装をしている日もある。
女性が世界を救い、男性の愛でサポートされる。もしかしたら、これが一番驚いた世界観かもしれない(笑)。主人公のセーラームーンがどんどんパワーアップして戦闘を繰り返す側で、パートナーのタキシード仮面はひたすら己の非力さを嘆きながらも必死に彼女をサポートしているのがとても印象的。注意して観ると結構な回数、彼は非力さを嘆いていた。
こうして新たな発見をしながら30年越しにセーラームーンの世界に浸った。そして、数あるアニメの中から、幼少期にはまったのがセーラームーンで良かった、と少し誇りにすら思ったのである。
当たり前のようにLGBTQや多様な家族の在り方が存在し合い、男性に支えられて大活躍する女性が世界を救う。
服装も性に縛られず。でも、周りからは変な目で見られたり、イヤミひとつ言われず。
さりげなく表現されたユートピアの様な世界観に魅入った夏だった。