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【大学入試小論文】新潟大学農学部(2022年度)小論文解答例「カーボンニュートラル」

近年、気候変動がもたらす影響は、地球規模で私たちの生活に深刻な影響を与えています。その中で、「カーボンニュートラル」という言葉が注目されるようになりました。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目指す取り組みであり、持続可能な社会の実現に向けた重要な目標の一つです。これを達成するためには、技術革新だけでなく、農業をはじめとする各産業の構造改革や、私たち一人ひとりのライフスタイルの見直しが欠かせません。

2022年度、新潟大学農学部の小論文では、この「カーボンニュートラル」をテーマに、持続可能な農業の視点からどのようにアプローチすべきかが問われました。本記事では、この小論文テーマについての解答例を基に、カーボンニュートラルの意義や課題、そして農学部ならではの視点を活かした提言について考察していきます。未来を支える農業の役割とは何か、一緒に探っていきましょう。

【問題】2020年10月に日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」では、2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としている。あなたが応用生命科学分野の研究者であると仮定した場合に、どのような手法でカーボンニュートラルを実現させるか、具体的な例をあげて、あなたの考えを述べよ。

【改題】日本国内の二酸化炭素排出量を部門ごとに分けて年度ことにプロットしたもので ある。今後も二酸化炭素の排出削減を精力的に行う必要があるが、どのような科学技術を用いて排出削減に貢献すべきかについて図から読み取れることを取り入れながら、あなたの意見を800字で述べなさい。

【ある人の解答】二酸化炭素排出削減に貢献する科学技術に関する解答例

この図から読み取れることは、日本国内の二酸化炭素排出量において産業部門が最も多く、エネルギー転換部門が最も少ない点である。2017年の二酸化炭素の総排出量は約11億1500万トンであり、そのうち産業部門は4億1300万トンを占め、二番目に多い運輸部門(2億1300万トン)の約2倍に達している。一方で運輸部門の排出量は近年減少傾向にあるが、家庭部門は増加傾向を示している。この状況から、二酸化炭素排出量の削減を効果的に実現するためには、排出量が多い上位3部門(産業、運輸、家庭)に焦点を当てた具体的な対策が必要である。以下に、これら3部門ごとの具体的な対策を提案する。

産業部門では、設備の効率向上が鍵となる。例えば、エネルギー消費が大きいボイラーやモーターにおいて、回転数を抑えるモーター制御技術の導入が有効である。また、工場に太陽光発電システムを設置することで自家発電を促進し、その電力をヒートポンプ式空調や給湯設備に利用することも効果的である。これにより、化石燃料の使用を抑えながら、エネルギー利用の効率化が進むと考えられる。さらに、AIを活用した生産プロセスの最適化も今後の重要な取り組みとなるだろう。

運輸部門では、物流や交通手段の転換が課題である。トラック物流から鉄道物流への切り替えや、ガソリン車から電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)への移行を進めるべきだ。また、物流全体の効率化を図るため、配送ルートや便数をAIで最適化し、無駄な輸送を削減することも重要である。さらに、公共交通機関の利用促進やシェアリングサービスの拡充を通じて、個人車両の使用を抑えることも有効である。

家庭部門の排出量増加は、世帯数の増加や家電製品の普及によるものと考えられる。この課題に対しては、家庭でのエネルギー利用を見直す必要がある。例えば、クーラーの温度設定をAIによって最適化することで無駄を省き、ヒートポンプ技術を活用した省エネ家電の導入を推進すべきである。また、太陽光パネルや家庭用蓄電池の導入を支援することで、再生可能エネルギーの利用を促進し、家庭全体の二酸化炭素排出を大幅に削減することが期待できる。

これらの対策は、技術革新だけでなく、企業や自治体、個人の積極的な協力が不可欠である。排出量の多い部門から優先的に取り組むことで、日本全体の二酸化炭素排出量削減に大きく貢献できるだろう。持続可能な社会の実現に向け、科学技術を基盤とした効率化と脱炭素化の推進が求められている。

カーボンリサイクル

カーボンリサイクルとは、温暖化の原因とされてきたCO2を資源にして、エネルギーや素材として利用することにより、CO2排出量を少なくする画期的な考え方。CO2(二酸化炭素)の有効利用が想定されている分野は、化学品(ウレタン・ポリカーボネート)、燃料(バイオ燃料・ジェット燃料)、鉱物(コンクリート)、その他(ブルーカーボン)

効率燃料(バイオ燃料・ジェット燃料)の例

➊東大発ベンチャーのユーグレナの取り組み「二酸化炭素を食う虫」、すなわちミドリムシの活用
排出されたCO2をエネルギーとして、ミドリムシを培養し、バイオ燃料として使うという取り組みはまさにロマンですね。

➋ベンチャー企業であるラスクルという「ハコベル」事業での取り組み「配送業務の効率化推進による二酸化炭素排出量削減」

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