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大学入試小論文「慶應義塾大学法学部(2015年度)の解答例」生物多様性と関係価値

生物多様性という言葉は、多くの生物種が消滅の危機に瀕している現状を社会に伝えるために生まれた。しかし、その定義は一様ではなく、「保全」と「利用」という二つの異なる立場が対立する場面も少なくない。特に、地域社会が生物多様性の保全において重要な役割を果たしている点は見逃せないだろう。そして、私たち一人ひとりが「関係価値」――すなわち、相互のつながりに価値を見出す考え方を持つことが、生物多様性の持続的な維持につながるとされている。

本記事では、2015年度の慶應義塾大学法学部の小論文課題をもとに、生物多様性と関係価値の関係について考察し、どのような解答が求められるのかを探っていく。受験対策としてはもちろんのこと、生物多様性の意義を改めて見つめ直す機会として、ぜひ最後まで読んでほしい。

【問題】生物多様性は多くの生物種が消滅の危機にあることを一般社会に分かりやすく訴えるために生まれた言葉である。しかし、その定義はかえって混池としている。その中で、生物多様性は二つの考え方の対立が問題となっており、1つは生物多様性を保全するための考え方で、2つは生物多様性の利用を目的とする考え方である。しかし、生物多様性の保全は地域社会が大きな役割を担っており、その地域社会を支える私たちが、関係価値という相互の繋がりに価値を見出す考え方を見つける必要がある。これについて、あなたの考えを述べよ。

【ある人の解答例】生物多様性と関係価値―慶應義塾大学法学部(2015年度)小論文の解答例

本文では、生物多様性をめぐる対立と、それを支える地域社会の役割に言及しながら、関係価値の重要性について述べている。生物多様性をめぐっては、「保全を重視する立場」と「利用を目的とする立場」の二つの考え方が対立している。しかし、生物多様性の保全は地域社会が担う大きな課題であり、その地域社会を支える私たちが、関係価値、すなわち相互のつながりに価値を見出す考え方を重視することが求められていると筆者は主張している。

では、私たちは本当に関係価値を重視すべきなのか。私は、関係価値を重視することが不可欠であると考える。なぜなら、相互のつながりによって生まれる価値は、単なる経済的な取引では得られない、持続可能な社会の基盤となるからだ。

たとえば、商取引において、目先の利益や商品の質だけに注目し、交換価値や使用価値のみを追求する場合を考えてみる。短期的には利益を上げることができるかもしれない。しかし、長期的な視点では、売り手と買い手の間の信頼関係を築くことで、安定した需要の確保や適切な価格設定が可能となる。また、買い手との綿密なコミュニケーションを重視することで、消費者の声を反映した商品開発が可能になり、結果としてより良い商品が生み出される。つまり、関係価値を重視することで、経済的な利益だけでなく、社会全体の持続可能性を高めることにつながるのだ。

では、どのようにして関係価値を築けばよいのか。消費者からの信頼は一朝一夕で得られるものではない。それには、社会や消費者に対する誠実な対応を継続し、長期的な関係を構築することが不可欠である。たとえば、企業が地域社会への貢献活動を積極的に行ったり、SDGsの目標を踏まえた社会的責任を果たすことで、信頼関係を築くことができる。このように、関係価値を重視することは、単なる道徳的な理想ではなく、実際に社会と経済の安定につながる重要な戦略である。

以上のように、関係価値は単なる感情的なつながりではなく、持続可能な社会や経済を築く上で不可欠な要素である。瞬発的な利益を求めるのではなく、長期的な信頼と協力を大切にすることで、より多くのメリットを享受できる。したがって、私は関係価値を重視するべきだと考える。

生物多様性と関係価値のポイント

  1. 生物多様性の意義

    • 多様な生物が共存することで、生態系のバランスが保たれる。

    • 人間社会にも恩恵(食料・医薬品・気候調整など)をもたらす。

  2. 生物多様性をめぐる対立

    • 保全派:生態系を守るため、開発や資源利用を制限すべき。

    • 利用派:自然資源を有効活用し、経済発展と両立させるべき。

  3. 関係価値とは?

    • 「相互のつながり」に価値を見出す考え方。

    • 生態系と人間社会の関係性を重視し、持続可能な共存を目指す。

  4. 関係価値の重要性

    • 地域社会が主体となることで、持続的な保全活動が可能になる。

    • 文化・歴史・経済と生物多様性を結びつけ、地域の発展にも貢献。

    • 短期的な利益よりも長期的な信頼と安定を生み出す。

結論:生物多様性の保全と利用のバランスをとるために、関係価値を重視し、地域社会と協力しながら持続可能な社会を築くことが重要。


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