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【大学入試小論文】宇都宮大学農学部(2020年度)小論文解答例「昆虫と農業」

宇都宮大学農学部の2020年度入試小論文では、「昆虫と農業」に関するテーマが出題されました。このテーマは、昆虫の減少や農業の効率化といった現代の環境問題を背景に、私たちが直面する食糧供給や生態系維持の課題に深く関わるものです。受験生には、昆虫と農業の相互関係についての理解を問うと同時に、持続可能な未来に向けた具体的な提案が求められました。

この記事では、この小論文課題に対する解答例を詳しく解説し、良い答案作成のポイントや説得力を高めるためのヒントをお伝えします。宇都宮大学農学部を志望する受験生だけでなく、環境問題や農業に関心のある方にも参考になる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください!

【問題】
昆虫が減少している原因と昆虫の減少が農業に及ぼす影響、更にその対策についてあなたの考えを800字程度で述べなさい。(改題:令和2年度宇都宮大学農学部推薦入試)

【ある人の例】昆虫の減少が農業に与える影響についての解答例

私が考える昆虫が減少している主な原因は、人間活動がもたらす環境の急激な変化である。特に、大量生産・大量消費を基盤とした現代社会の仕組みが、地球温暖化を促進し、その結果として多くの動植物が絶滅や減少に追い込まれている。昆虫に関しては、農薬の使用がその数を急速に減らす一因となっており、これは極めて深刻な問題だと考える。

その背景には、発展途上国をはじめとした人口増加による食糧不足への懸念がある。これに伴い、農地拡大のために森林が伐採され、生態系が破壊されている。また、化学肥料や農薬を用いた集約的農業が一般化する中、環境への悪影響が顕著となっている。たとえば、ゲノム編集技術により害虫耐性を持つ作物の開発が進められているが、これが一部地域では農薬の使用増加を助長する一因となっている可能性も否定できない。農業の効率化が目的であっても、それが自然環境全体に与える影響について十分に考慮されるべきだろう。

昆虫減少は農業だけでなく、広く生態系や食料供給全体に影響を及ぼす。特に、花粉媒介者としての昆虫の役割が失われれば、植物の受粉が滞り、農作物の収穫量や品質が低下する恐れがある。これは結果として、さらなる食糧危機を引き起こしかねない。実際、近年では世界各地で蜜蜂の個体数減少が問題視されており、それが農作物の収穫量低下や価格上昇を引き起こす可能性が指摘されている。さらに、受粉不足が進行すれば、家畜の飼料となる作物の生産も困難になり、畜産業においても悪影響が出るだろう。

この問題に対処するためには、まず昆虫減少がもたらす危機について広く社会に認識させることが不可欠だ。特に農家や食品業界に対して、現状の理解を深めるための啓発活動を進めるべきだと考える。その上で、農薬依存の慣行農業から、環境負荷を低減した有機農業や再生可能な農業への移行を促進する必要がある。しかし、日本のように土地条件に制約が多い国では、農薬を完全に排除することは難しい現状もあるだろう。そのため、企業や政府が連携して、環境に適応した新たな農法や作物品種の開発に取り組むべきである。加えて、植物工場や水耕栽培といった先端技術を活用した生産システムも、多様な生産方法の一環として推進されるべきだ。

昆虫の減少は、自然環境と人間社会の持続可能性を揺るがす深刻な課題である。この問題に対して私たち一人ひとりが関心を持ち、行動することで、未来の生態系と食料供給を守る第一歩を踏み出すことができるはずだ。

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