【大学入試小論文】教育の目的についての解答例
大学入試の小論文で「教育の目的」について問われることは珍しくありません。このテーマは、一見すると答えやすそうに感じられるかもしれませんが、実は非常に深く、個人の価値観や社会の在り方にも直結する重要な問いです。教育は知識の習得だけでなく、人間形成や社会貢献をも目的としており、その多面的な意義を的確に論じることが求められます。
この記事では、小論文対策として「教育の目的」に関する解答例を示しながら、どのような視点で論じるべきかを解説していきます。自分の考えを整理し、論理的かつ説得力のある小論文を書くためのヒントをぜひ掴んでください。
【問題】以下の＜文章＞を読んで、あなたの考えを記述しなさい。
＜文章＞人間とは何かを考えることは、道徳とは何かと考えることである。すべての人間にとって最も根源的な課題だ。人間とは何かという問いに正確に答えることは不可能だが、矛盾に満ちた存在であることは確かだ。それと同時に善く生きようとする存在でもある。善さを求めてヒトから人間になるためには教育が必要不可欠だ。教育は単純に教え育てるだけではなく、目的としての「善さ」の有無が問題となる。
【ある人の解答例】道徳教育についての解答例
道徳は人間とは何かを考えることであるが、現在の日本の道徳教育にはこのことを考える時間が少なく、機会も無くなった。小学生の頃は授業の一環として道徳の授業が存在した。しかし、年齢が中学生、高校生に上がるにつれて道徳教育の時間が減少し、ほとんど設けられなくなった。なぜ年齢が上がるにつれて道徳教育が軽視されるようになったのだろうか。それは、その年齢になると道徳精神を持っていることが前提とされてしまうからだと考えられるが、果たしてそれで良いのだろうか。
小学生の頃は道徳の教科書を用いて書き、ある事柄に対して意見を述べるという授業が行われていた。このような教育を通じて、相手の気持ちになって物事を考える力や、意見を述べる主体性、協調性が育まれていた。しかし、現在の日本の教育は、国際社会での競争力を高めるための英語教育や、IT化に対応するためのインターネット教育に重点が置かれている。確かにこれらのスキルはこれからの社会で活躍するためには重要であるが、同時に道徳教育も充実させる必要があると私は考える。
道徳教育を充実させることで、人の感情や思いを汲み取る力が育まれ、心が豊かになる。社会に出た際に、相手の気持ちを考えながらコミュニケーションを取ることができるようになるのは、道徳教育の賜物である。例えば、ディスカッション形式の道徳授業や、現実の社会問題を題材としたケーススタディなどを取り入れることで、より実践的な道徳教育が可能となるだろう。また、他の教科との関連性を持たせることで、総合的な人間力を育てることができる。
このように、道徳教育は単なる「お勉強」ではなく、人間としての成長を促すための重要な柱である。英語やITの知識と同じくらい、他者への思いやりや倫理観を育む教育にも力を入れるべきである。日本の教育システムが、学問の知識だけでなく、人間性を育む全人的な教育を提供することで、より良い社会の実現に寄与することを期待したい。