切なリリカル
ミステリーが大好きだった当時、
読みまくっていた綾辻行人が途端に詰まらなくなったのは、隠れ巨匠の佐々木丸美氏の『切なリリカル』なミステリにやられてしまったからだ。
今朝ふと見かけた『断章』というワード。
好きな語感で…何故かと言えば
私の中で『断章』といえば、佐々木丸美氏のデビュー作(と知らず手に取ったが)である『雪の断章』だからだ。
『雪の断章』
記憶が定かではない。
この本を手に取ったのは、理由はどっちだ?
本作を原作として、斉藤由貴ちゃんのデビュー映画『雪の断章-情熱』が撮られた。
この本を手に取った日のことは鮮明に覚えている。"美術科"の高校生をやっていた頃のことだ。
心斎橋のアセンス(という書店)にこの本を目指して赴いた。目的の本は見つかったが、新品を買うというのに、中の紙はすっかり焼けてしまっていた。なにせ昭和50年発刊だ。そして、初版に近い版であったように思う。
探しに行った理由が思い出せぬ。
斉藤由貴ちゃんのデビュー映画を観てから原作を探しに行ったのか?
…いいや、原作をトレースしながら映画を観た記憶もあるような。
✴︎
ある日、全てのミステリが詰まらなくなった。
リリカルミステリの巨匠、佐々木丸美氏のせいだ。
56歳でおっ死んでしまって、
死後は絶版した本を復刊して欲しくないと言い残した我儘な作家様。
それでも遺族をとりなしとりなし、先ずはネ申の復刊ドットコムさんが復刊を果たしてくれた。その後は東京創元社さんが発行して下さり、手に取りやすい価格にもなった。
リリカル、ポエティック
情景描写が夢うつつを行き来する。
それでいて人が殺されるミステリだ。
詰まらなくなった十角館の殺人を、力無く手に取る。
男の手による、以前は感じなかった乱暴さを感じた。
なにもかも、56歳でおっ死んでしまった叙情ミステリおばけの佐々木丸美氏のせいだ。
彼女の構築したイバラの楽園からは死ぬまで抜け出ることは出来ぬだろう。
喜びの循環^^