接客の極意

ライダーズカフェで2年間働いた。
マスターから珈琲の淹れ方、フードメニューの作り方、お酒の作り方、生ビールの入れ方と片付けの仕方、そして、カウンターでの接客を叩き込まれた。

カウンターでの接客に検索エンジンは要らない。
客のふとした疑問への答え方は、如何に気持ちよく『客に話させるか』だ。

検索エンジンを使って導き出した答えを相手に返すなど愚の骨頂、それは自分のエゴを満たしているに過ぎない。

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好きなやり取りは『あの女優なんて名前だったっけ？』というよくある思い出せない系の会話。

あのドラマに出てたよね、あの映画にも出てたよね…なんなら共演の俳優の名前は出てくるのに、当の女優の名前は出てこない。

客と共にジレる。
けれど、ここで検索エンジンにご登場頂いては脳細胞が劣化するばかりだ。

客が思い出すか、こちらが思い出すか、
客ならば万々歳。
それでも答えが出てこない場合は、客のジレ具合を見て「ここが潮時だな…」と感じたらやっとスマートフォンのお出ましだ。

カウンターに座る客は答えを求めにやってくるのではない。
あくまでも、『会話』を楽しみにきていることを忘れてはならない。

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