「家の中が明るくなるから」
結婚するとき、私は夫になる人に何度か「子どもは欲しくない」と言った。
私が子どもを持つかどうか悩んだ何十年も昔にも、やはりいじめの問題など子どもに関わる不安や子育て全般についての心配は変わらず存在していたのだ。
それに何より私自身もある意味、孤独な児童、生徒だった。
「もしも自分の子どもが」
そう思うと、その当時は積極的に子どもを持ちたいという気持ちにはなかなかなれなかった。
けれども私がそう口にするたびに夫はなーんにも考えてないような顔をして言ったのだ。
「だって、家が明るくなるから」
夫の、本当に能天気な、でも無邪気なひとこと。。
何度も言われているとそんなものかと思えてくるから悔しい(?)
とにかく、結果として私は二男一女の母となり、やがて子どもたちはあっという間にそれぞれ社会人となり、家を出始めた。
時を同じくするように私も再就職し、その後転職もした。
ふと必要があって、子どもたちが高校生くらいのときの私の写真を見てみた。
今の写真と比べると、明らかに鼻から下が違う。
経年劣化は言うまでもないが、要するに昔の写真は自然と頬が上がっていたのだ。
理由はわかる。
あのとき、いつも大声で心から笑っていたんだもの。
長男と次男は学校の先生のまねをしたり、漫才をはじめたりして、いつもバカなことをやっていた。
自分たちでじゃんけんに似たゲームを編み出して突然勝負を始めたかと思えば、お風呂で二人で歌合戦を始めたこともしょっちゅうあった。
中高生なのに。
私は大爆笑。
長女は私と一緒に笑ったり、茶々を入れたりして、楽しかった。
彼らは決して私を笑わせるためにやっていたのではない。
単に自分たちが楽しかったのだ。
けれど、私はいつも笑い、幸せで、だから明るい顔をしていた。
家が明るくなるから、というのは本当だった。
思えば、小さい頃から笑い上戸だった私が、もう何年も大声で笑ったり、涙を流すほど笑い転げたりしていない気がする。
今の写真もむべなるかな。
でもなあ、この表情のままは嫌だなあ。
せめてこれからは自分で私自身が声を出すほど笑えることを見つけよう。
そういえば結婚前、夫になる人が口癖のように私に言っていた。
「いつもニコニコしときなよ」
そうさせてくれる人がいない今、自分が頑張ろうっと。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?