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ルワンダの教育が開いたアートの扉 ペイ•フォワード記事Vol.26
ムラホー!ルワンダの画家、ウワーヨくん来日
福島とルワンダを繋ぐ絵画展
福島市の福島駅東口のほど近くにある、子どもたちのための施設「こむこむ館」。そこで2024年の幕開けにふさわしく、福島市民とルワンダ人による国際的なコラボ絵画展が開催されていました。
「ムラホー!」ルワンダで話されている言葉で「こんにちは」。下のチラシで福島市民、松井歩未さんと並んでいるのはルワンダ出身ウワーヨ・ティエリくんです。
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この絵画展はNPOルワンダの教育を考える会さんとアトリエ縁さんの協力で行われました。実はこの団体さん、「お互いさまの街ふくしま」の「お互いさまスポット」と関係しているのです。
NPOルワンダの教育を考える会さんの関連記事はこちらです↓
https://note.com/noriko_c_o/n/nfb68f2fa0a27
ルワンダってどんな国?
「千の丘の国」と呼ばれるルワンダはアフリカの中央部に位置する国です。
駐日ルワンダ共和国大使館の分かりやすいサイトはこちらです↓
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大虐殺の歴史から求められた学校教育
そして、ルワンダの悲しい歴史として大虐殺が行われたことをご存じの方も多いのではないでしょうか。
NPOルワンダの教育を考える会は、この大虐殺を経験した理事長のマリールイズさんが、ルワンダの平和のために子どもたちの教育を充実させようと発足させました。
その努力の結果、ウムチョムイーザ学園は一つの教室からはじまり、どんどん施設を増やしていき今の形になったそうです。その平和の象徴ともいえるウムチョムイーザ学園の卒業生が、ウワーヨくんなのです。
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以下の動画では、学校の前にとても目を引くコンテナアートがあります。これがウワーヨくんが主導して描き上げたアートだそうです。私はこのアートを見ていると、彼の自由でカラフルな発想の中にルワンダと日本の輪が感じ取れて嬉しくなってきます。
ウワーヨくんはこの学校の徒歩5分圏内に住んでいて、子どもたちに絵を教えることもあるそうです。
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そんなウワーヨくんにとって、「アート」とはどのような存在なのでしょうか。
平和の花を咲かせてまわる蝶々のウワーヨ
「ぼくは平和を広げるために絵を描く」
ウワーヨくんになぜ絵を描くのかを訊いたところ、「絵を描く目的の一つは、平和を広げるため」とはっきりと言い切ってくれました。
なぜ絵を描くことが平和を築くことになるのでしょうか。実は、ウワーヨくんが絵を本格的に画家として描くことになったきっかけが、その答えに繋がっています。
まずは、ウワーヨくんのこの絵をじっくり味わってみてください。
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あなたはこの作品を観てどんな気持ちになりましたか。どのようなことを感じ取りましたか?自由に感じ取られるのがアートの魅力ですよね。
この絵に込められたウワーヨくんの想いや背景がキャプションになっていたのでご覧ください。
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このキャプションを読んでまた鑑賞してみると、新たな発見があるかもしれません。
自分の好きなことがあるのに、周りからは認めてもらえない。そんな暗い時代、煮え切らない気持ちが黒い洞窟。「死んだ心」と表現されています。そんなウワーヨくんがマリールイズさんと再会することで、暗かった洞窟の心の奥にも希望という名の光が差し、水で潤いがもたらされ、木々が育っていきます。たったひとりでもいい。自分という存在を認めてサポートしてくれる人と出会うことが、どれだけ救いとなるでしょう。
この絵を描いたとき、彼の心の中に平穏な気持ち、心の平和が訪れたことが想像できます。
ウワーヨくんがこの作品を描いたときにどんな感情だったか訊いてみました。
「人生には楽しいこともつらいこともいろんなことがある。それが複雑に絡み合っている。ぼくが絵を描くときはそういう複雑な気持ちをもっているよ。」
一つ一つの作品の中には、ウワーヨくんのそのときの様々な想いが反映されていることでしょう。
「マリールイズに会ってみて!」
ウワーヨくんが自分の作品について熱心に説明してくれている途中で、「マリールイズに会ったことある?」と聞かれました。私もお会いしてルワンダの大虐殺について話を聞いたこともあれば、おしゃべりをしたこともあります。彼は言います。
「マリールイズに是非会ってみてほしい!彼女に合うたびにたくさんのアイディアをくれるしサポートしてくれるし、とにかく素晴らしい人なんだ!」
それだけ愛されているマリールイズさん。皆さんも福島に来て是非出会ってほしい方です。
ぼくは蝶。皆に花粉を運ぶんだよ。
「ぼくが最も幸せを感じるのは、人々の笑顔を眺めているときだよ。人が悲しそうな顔をしているのは見たくないよ。」こう語るウワーヨくん。彼は絵を描くことで平和な世界を作ろうとしているといいますが、どういうことなのでしょうか。
ウワーヨくんが画家として初めて描いたこの絵をじっくり見てみてください。
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「BE A HUMAN. GIVE A HUMANITY REACH TO TEH PEOPLE」とんづけられたこの作品。「人間になる。人々に近づいていって人間味を開花させる」といった意味合いです。
ウワーヨくんによると、この誰の目にも鮮やかで存在感のあるこの真っ赤な花はマリールイズさんのことだそう。そしてその近くにとまっている蝶々は自分自身。マリールイズさんの花から蜜をもらい活力を得たウワーヨくんは、他の花に飛んでいき、受粉させ、その花が咲くのをサポートします。つまり、彼の絵を見て感動した人、彼の変容について知った人が勇気づけられ、自分らしさの花を咲かせるのを手伝いたい。そうやって多くの人の心が平和になった先に、世界の平和が成り立つのだといいます。
これはまさに、マリールイズさんから始まった恩送り。さなぎ時代には繭につつまれて世の中が真っ暗に見えていたウワーヨくんは、蝶々となり今や多くの人の心に語りかける絵を通じて、ひとりひとりの平和な心の集大成の平和な世界づくりに貢献しています。
そんな記念すべき画家としての第一作目のこの作品は、マリールイズさんに贈られたそうです。
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マレーシアにも届いた平和の種
言葉を超えて繋がる心の交流
実は2023年の12月には、隣県の宮城県でもウワーヨくんの個展が開催されていました。
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私は、「ともだち・カワン・コミュニティ」という団体をマレーシア人と立ち上げました。この団体では「違うって楽しい!」と思える多様性社会を広げていくために、心の交流を通した居場所作りをしています。この立ち上げメンバーであるマレーシア人ハムザが来日していたので、彼と一緒にウワーヨくんの個展を見に行くことができたのです。
「ともだち・カワン・コミュニティ」のfacebookと、「福島の今を世界に発信する映画プロジェクト」をご紹介しますね。
ハムザにこの絵の下にあるキャプション説明したところ、深くうなずいて鑑賞していました。そのときの様子がこちらです。
ハムザは、「これが酸素で、水、木が生えてきて・・・」と納得していました。ハムザもウワーヨくんと同じで、人の笑顔を見ることに最大の幸せを感じる人です。お国は違っても、言葉は通じなくても、心で通じることができる。そう思える2人です。
そして、私も自分の好きな方法で自己表現をする人のひとり。ウワーヨくんは絵で、私は踊りで表現します。私が初めてこの絵を見たときにとても気に入ったので、ウワーヨくんへの共感をダンスに込めて表現してみました。
絵やダンスという自己表現をしている人と出会うことで、誰かが自分自身を開花させるきっかけになったら面白いな。自分らしさが恩送りになって世界が平和になったらいいな。そう思って今日も筆を持つウワーヨくんと、ダンスをするのりぱぁ(筆者)です。
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