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リアル坂の上の雲 Dalian, China

私は、いよいよ、かの地に立った。
背後に二〇三高地も控え。


まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている。


司馬遼太郎「坂の上の雲」

ここに来る数年前、NHKでドラマをやっていて、めちゃくちゃハマっていたのだよ。


勝利は不可能に近いと言われた日本海海戦の参謀、秋山真之は本木雅弘
史上最強の騎兵と呼ばれたコサック師団を破った秋山好古は阿部寛
短歌中興の祖、正岡子規は香川照之

当時のドラマを、オンデマンドという仕掛けでまた見ることができる奇跡にも大いに感謝したい。



この痛々しいばかりの昂揚が分からなければ、
この段階の歴史は分からない。


当の小説は一気に揃えて一気読み。
横須賀に係留されている戦艦三笠も観に行ってしまったし、伊予松山の司馬遼太郎ミュージアムや、秋山兄弟生誕地も訪問してしまった。
(秋山兄弟を演じた御両名のサインが置いてありました)


彼らは明治という時代人の体質で、
前をのみ見つめながら歩く。
登って行く坂の上の青い天に
もし一朶の白い雲が輝いているとすれば、
それのみを見つめて坂を登って行くであろう。



もうこのオープニングの渡辺謙のナレーション&久石譲の”Stand Alone”を聞いただけで、テレビの前に座りドラマが始まる前のワクワク感をありありと思い出す。



ドラマが放映され本当にハマってたときから数年経ってはいたものの、このとき現地に行けてよかったなぁと、心から思う。特に今、それもままならないこの時勢においては。
旅順のある大連には出張でしか行ったことないが、中国人コーディネーターさんが気を利かせて?観光の時間をつくってくれた古き良き時代でありました。同行した上司は全く歴史には興味のない方で、正直欠伸を嚙み殺していらっしゃったが、私はこの旅順の港を見てひとり感慨に耽っておりました。



もし、日本が日本海海戦で大逆転勝利しなければ。
もし、日本海海戦を待たず、二〇三高地で勝利していたら。
もし、ロシアの海軍力がずば抜けていて、日本海海戦に圧勝していたら。


歴史にIf・もしもはないし、こうなっていただろうきっと、等と予想できる程博識でもないんだが、現場に立つとどうしても想像が膨らむ。この後の第二次世界大戦、太平洋戦争、もちろん戦争だけではないにしても、時々で潮目が変わるときというのが歴史にはあるんだろう。



しかし、当地を訪問してからかなり経って思う今、最早、それのみを見つめて歩いてきた”坂の上の雲”は、存在しない時代に入ったんだろうな、という気がするのもたしか。


※2013年11月のおはなし。


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