マレー肉骨茶(バクテー)紀行
昭和初期に南洋のマレー半島、シンガポール、ジャワ、スマトラを夫人と共に旅した詩人、金子光晴。彼の筆による「マレー蘭印紀行」に、以下のような一節がある。
ペンゲランの苦力達は支那人が多い。(中略)苦力賃は、馬来、ヒンヅー六七十銭に対して、支那人一弗二十銭の割合であるが、苦力頭による請負制度で、支那苦力は仕事の能率が倍あがる。支那人は豚を食うからだと馬来達は軽蔑をこめてたゞ一口に云ってのける。
(p.91より引用。太字筆者)
馬来とはマレー人のことで、もちろん支那人は大陸から渡って来た中国人。イスラム教徒であるマレー人は豚が禁忌なのでこう揶揄したのだろう。
中華系の豚料理といえば、肉骨茶(バクテー)。様々な部位の豚肉を漢方薬と一緒に煮込んだスープのことで、白米と一緒に食す。当時の苦力たち、中国系移民のあいだで盛んに食べられていたはずだ。
もーこれがぅんまいんすよね!!!(≧▽≦)
(ぅんのところ、コブシ効かせて読んでくださいね!)
過酷な労働を強いられていた苦力たちの、空腹を満たすパワー飯!!!
私は専らスープ派だけど
ドライもありますえ。
部位は選べるのだけど
(なんならホルモン、内臓も…私は苦手)
断然、排骨、ポークリブ一択。煮込まれた骨付き肉をほおばった瞬間の至福感と言ったら。
肉は骨から、するっと取れます。
えのきもマスト。選べるときは絶対選ぶ。
右下、パンのように見える豆腐(どちらかと言えば厚揚げっぽい)、その左、湯葉?もスープにひたひたにひたして。
このように、レタスが乗ってるパターンもあり。
とっても濃ゆく見えるスープだが、漢方由来のため色だけ。さらさらいける。すごく滋味溢れたお味である。白ごはんにしゃびしゃびになるまでかけてかきこむのが大のお気に入り。
その際、チリパディ醬油を少々。チリパディ醬油とは、唐辛子やニンニクを刻んだものを醤油に漬けたタレのことで、肉骨茶には欠かせないお供。醤油はさらっとした液体状と、ドロッとしたシロップ状の2種類あって、お好みで混ぜる。唐辛子とニンニクをブレンドするのもよし。具であるところの豚肉、えのきや豆腐、湯葉につけると味変してこれまた美味で…!
結局のところ醤油なので塩分多いだろうし、こんな食べ方絶対健康に悪いに違いない。けど、健康に悪いものって美味しくないですか…
という訳で、2019年11月頃からこの料理にハマりにハマり、週末、どちらかのランチは必ず肉骨茶にしていたほど。ハマる前に行ったことがあるレストランを合わせれば、20店舗以上は足を運んだだろうか。
支那人苦力が多数働いていた港町クランが発祥の地と言われており、今でも有名店、人気店がひしめいている。自宅のあるクアラルンプール郊外からものの30分超のドライブで辿り着ける気軽さから、何度も訪れた。
2020年3月半ばより本格的にロックダウンが始まり、外へ出かけることもままならなくなってブームは徐々に沈静化していった。それでもたまに、肉骨茶食いたい!!!周期が巡って来たため、テイクアウトしておうちde肉骨茶を幾度か。
チリパディ醬油を入れるこじゃれた小皿なんぞ持ち合わせていないため、ごはんの上に直接唐辛子をオンという野性味溢れるテイストになっております。
最近は外食も解禁となりつい先日ふらっと入ったお店が、自分的にスマッシュヒットだった。それがこちら。
Ah Her Bak Kut Teh@Mid Valley Megamall
もうね、お肉がほろほろだったの。ひっさしぶりに美味しい豚肉を食べられて大満足。えのきも豆腐もスープを吸ってうまうま。ごはんはちゃぁんと、汁まみれ、チリパディ醬油まみれにして食らってやりましたえ…
そんなカオスな口中をサッパリ洗い流すChinese Tea(1枚目写真、取っ手のあるグラスに入った真っ黒い液体)の偉大さよ。
大概の肉骨茶屋は早朝~ランチまで、そして夕方に再び開店っていう営業時間なので、ショッピングモール内にあって常時ありつけるのが本当に嬉しい。うーむ、第二次ブームが到来しそうな予感…笑
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