敏腕ガイドに出会えた僥倖 Sydney, Australia
「プロフェッショナルって何だろう」
そう考えたとき、お顔が浮かんだ凄腕ガイドさん、ふたりのこと。
ひとりめはこちら。韓国は済州島にて。
ふたりめは、オーストラリアはシドニーにて。このときもオプショナルツアーサイト、VELTRAを利用した。
済州島のガイドさんは、自らの故郷でもある済州島を心の底から愛してらっしゃることを、その語り口から生き生きと感じた。
一方で、シドニーのガイドさん(在住日本人の方)は、愛とはちょっと違っていた。内に秘めたる静かなる情熱、というのか。
それを体験できたのは、上記オプショナルツアーの写真にもある世界最古の鍾乳洞、ジェノラン・ケーブにて。世界遺産であるブルーマウンテンズでは決してない。
ここで彼の情熱が炸裂した。
とは言えこの方もやっぱり観光ガイドさんで、車中ではずーーーーーっと、オーストラリアに関する話、今日巡る場所に関する話、etc,etcを息つく暇なく喋りまくっておられた。もちろん運転手兼なんですけどね…早朝の朝靄に煙るブルーマウンテンズを後にしてからはずっと、ジェノラン・ケーブの話である。
そして突然始まる、鍾乳洞講義。
どうやって鍾乳洞ができるのか?から始まって、これから訪れるジェノラン・ケーブがどうやって発見されたか、如何ほど稀有なものか、etc,etc。尽きない話題、最終的には鍾乳洞用語、英語版のレクチャーが始まった。「ここテストに出るよー」とかなんとかジョークも挟みつつ。笑
あーもう本当に、教えてもらった英単語を今もって全く覚えていないのが残念でならない。
当地に到着後はもう彼の独壇場である。何せ、ここのツアーが許可されているのは、この催行会社、IECオセアニアだけだそうだから。
まず、鍾乳洞に入って、漆黒、文字通り漆黒の闇を体感することになる。
人間が発見する前。太陽の光が届かない地の底。悠久のときを経て連綿と続いてきた営みを知るために。
ガイドさんが持ち込んだ灯を消す。
何も見えない、音も光も自分でさえも吸い込んでしまいそうな真っ暗闇が全身を包む。
「もともと鍾乳洞というのは、このような世界でうまれました」
ガイドさんの声が静かに響く。
「この鍾乳洞を発見したWiburd卿、この暗闇の中、どうやってこの先を探検したと思いますか?あなたならできますか?」
「是非ともこの素晴らしい、太古からの自然の神秘を多くの人に見てもらいたい。けれどそれは、破壊のはじまりです」
「光を入れ、人を入れる。そのことでもたらされる利益もあるでしょう。でもそれは、この奇跡が未来永劫続くかどうかとは紙一重です」
その後、灯りがともって先へ、先へと進む。
漆黒の中のガイドさんの言葉と、Wiburd卿がこの鍾乳洞を一般公開しつつも保護しようと尽力されたことを念頭に置きつつ、美し過ぎる造形にしばし時間を忘れる。
別に、人間に見てもらおうと思ってこんな形になったんとちゃうもんね…
人は勝手に、”Temple of Baal”とか名づけて有難がるけれど。
地の底から這い出ておひさまの下に出たとき、人智を超えたもの、それを汚すまいと葛藤する人たち、そのことを伝えて下さったガイドさんに、自然と頭が下がった。
このときはブルーマウンテンズ目当てで【山】のツアーに申し込んだのだが、【海】のツアーもあるとのこと。【山】が素晴らし過ぎたので絶対【海】にも参加しよう!!!と心に誓っているけれど…自由に行けるようになるその日まで、どうか生き延びていてください。
※2019年7月のおはなし。