ショートショート 事故再現
(…?今のウインカーなんだ?すぐ消えたけど。)
私はバイクに乗って右車線を走っていた。
50m前方には左車線に軽自動車が走っていた。
左車線前方にいた車との間隔が10m程度になったとき、ブレーキランプが点灯した。
「あっ」
前方の車が突然右車線を横切ろうとしたのであった。
私の身体はバイクから離脱するように、スルリと反対車線へ投げ出された。
死に際には走馬灯が見えると聞くが、そんなモノはない。ただ現実の結果がペラペラ漫画のように突きつけられるだけであった。
投げ出された身体は、最初に膝と手を地面に打ち付け、地面との接触を皮切りにゴロゴロ回った。
そうか、ヘルメットは大事なんだなぁ。とあとになったら思い返せるが、当時はそれどころではない。
戻りようのない現実。あまりにも予想外すぎる相手の動きに対して怒りがこみ上げていた。
一通り、身体が止まったあと、やることはただ一つ。反対車線からの脱出。
私は、歩道のガードレール目指して動いた。
感情は怒りに乗っ取られていたが、我ながら冷静であった。
ガードレールについた瞬間、怒りのスイッチが抜けた。虚無である。そして、痛みと焦りが襲ってくる。
恐らく、生きていることと安全なところまで避難し安堵したからだろう。
心と身体の関係は密接である。