対藝大用ショートショート 奇術師
今日は藝祭。いわゆる学校祭の日だ。私の大学の学祭は一般の見物人もよく来ていると聞く。巷では、『最後の秘境 東京藝大』と呼ばれることもあるようで、物珍しさに来る見物人も多いのではないかと思う。
実は今、和装した一般の見物人(男)に絡まれている。何やら自分の作品を藝大の人に認めてもらいたいらしい。正直、鬱陶しいが、藝大生ならわかってくれるはず、とさんざん煽られたので、現に今、この作品を読み始めてしまった。今の状況に嫌気がさしてきたので、顔をあげて男を睨む。
すると男は、クイズを出してきた。
「では、ここでクイズです!
この作品に散りばめたトリックはどれでしょ~か?
最後に答え合わせしましょう!」
また、面倒なことを。藝大生をなめるなよ。この手の現実と作品を行き来する系の”作品”は今まで腐るほど見てきている。その使い古された手法で、私たちを試そうとしているなら、馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。
しかし、売られた喧嘩は買うしかない。だから、私はまず作品を読み進めようと次の文章を探す。…探す?なぜ無いのだ?と思い、もう一度男を睨む。
男「もしかして、続きが気になっていますか?(笑)。」
まるで全てを見透かしているかのような、この男。タダモノではないのかもしれない。藝祭に乗り込み、喧嘩を売るだけのことはある。
男「では、そろそろ、答え合わせをしましょうか?」
まだ全て読み終わってないのに、強制的に読み終わらせられたような感覚だった。
男「まだ、読み終わってないのはわかってます。しかし、安心してください。ここからは”現実”のターンですので、あなた(方)と話しているうちに物語は進んでいきます。
では、答えをお聴きしてもよろしいですか?」
私はこの作品のトリックを答えた。その度に男は顔を緩ませていた。なんだか、犬のような人間である。
男「では、【答え】に移ります。もう少し文章を読み進めてください。」
【答え】
・舞台をこの藝祭、主人公をあなたにしていることで現実とリンク。
・主人公の行動(”顔をあげて睨む”など)を入れることで、あなたがどこまで読み進めたのかわかるようにしておき、あなたの考えを読んでいるかのような構成になっている。
・この作品は作者以外でも「男」役を演じることができる。
だから、この作品が面白いと思ったら、あなたが「男」役になって、他の人にも読ませてあげてネ。
確かに納得はできる。ただ、鼻につく。何なんだこいつは。ペテン師か。
しかし、己から手の内を明かしたのだから”睨む”と書いているときに顔をあげなければいい。それだけ。すると男は声をかけてきた。
男「面白いと思ったら、このInstagram(@TABINORITO)のフォローお願いします。ブログにこのようなショートショートを投稿しています。」
そうゆうことか。やっぱり裏があると思った。新手のナンパじゃねぇか。
あとがき
今年の藝祭に乗り込みます!対戦よろしゅう!
したらね~。