チャッポン!第一話
お風呂。
それは、何もかもがどうでも良くなる場所。お風呂に入れば、大抵の悩み事は吹き飛ぶ…らしい。
これは、主人公 別府楽(べっぷがく)が送る日常の物語である。
「うわ~、すみません(汗)」
またやってしまった。報告書の誤字脱字。
いつも確認してるはずなのに、抜け落ちる文字達。今度から気をつけますと詫びるが、気をつけてるのになるのだから、どうすれば良いのか正直わからない。
「お先に失礼します!お疲れ様でした〜!」
今日も1日終わった。
毎日何かとやらかしているので、やらかすことにご指摘をもらうのは、致し方ないと思っているのだが、同じミスをしたときは引き摺ってしまう。はぁ~。疲れたなぁ~。
ゆ
あ!銭湯だ!
こんなところに銭湯あったんだ〜。
500円か〜。うーん。いや、行こう。
夜ご飯はもやし炒めにすればいいか。
入口から男性と女性が分かれるタイプの銭湯だ。受付の婆様に入浴料金を払う。1日の疲れで重くなった服を脱ぎ捨てる。
ガラッ
「おお〜。」
よくドラマで見る富士山の描かいてある銭湯だ。実は初めて見た。
まずは身体を洗い流す。
黄色のケロリンにお湯を溜める。
赤いボタンが付いたメカメカしい蛇口。
押すと物凄い勢いでお湯が溜まっていく。
ザバー
入浴料金と一緒に使い切りのシャンプーと石鹸を購入していた。
ザバー
さて、準備は整った。
いざ、
チャッポン!
「ゔはぁ~」
堪らん。これなのよ。どこからか漏れてしまう本能の音。自然と内側から出てくる何かがお風呂にはある。血管を流れる血の流れ、高速で回る思考。そして、遠ざかる意識…。危ない危ない。
彼は、鼻歌を唄いながら悠々と浸かっていた。
「そろそろ出るか〜」
タオルで身体を拭く。火照った身体はしばらくお風呂の余韻を残してくれる。
「ありがとうございました!」
帰り道、彼はお気に入りの場所を見つけて大喜びだった。誤字脱字のミスなんてどこ吹く風と言わんばかり。悩み事は吹き飛ぶらしい…。