偉人のトホホvol.3
『敢えて逆境を選んだ人生で人は幸せになれるか?』
先日、LOVE meDo という占い師が「人生に於いて全てを幸せにする事はできない。故に絶頂を感じた時はうまく負の部分を敢えて作る事が必要」と仰っていました。思えば、かの美輪明宏さんも「あぁ正負の法則」という著書の中で似たような事をおっしゃっていました。
であれば、逆境を敢えて選んだ人は幸せだったのか❔そのテストケースとして、この度は田中正造を取り上げます。
1890年(明治23年)、田中は第1回衆議院議員総選挙に栃木3区から出馬し、初当選します。田中は帝国議会では当初は立憲改進党に属していましたが、この年渡良瀬川で大洪水があり、上流にある足尾銅山から流れ出した鉱毒によって稲が立ち枯れる現象が流域各地で確認され、騒ぎとなりました。
1897年(明治30年)になると、農民の鉱毒反対運動が激化。東京へ陳情団が押しかける騒ぎになります。当時このような運動には名前がついておらず、農民らは「押出し」と呼んだそうです。田中は鉱毒について国会質問を行ったほか、東京で演説を行いました。農商務省と足尾銅山側は予防工事を確約、脱硫装置など実際に着工されるが、効果は薄かったそうです。
1901年(明治34年)10月23日、田中は議員を辞職しますが、鉱毒被害を訴える活動は止めず、主に東京のキリスト教会などで鉱毒に関する演説を度々行ったらしいです。
そんな田中でしたが、政府の対応にしびれを切らしたのか、東京市日比谷において、帝国議会開院式から還幸中の明治天皇に足尾鉱毒事件について直訴を行うという事件を起こします。途中で警備の警官に取り押さえられて直訴そのものには失敗しましたが、東京市中は大騒ぎになり、新聞の号外も配られ、直訴状の内容は広く知れ渡たりました。直訴状は、幸徳秋水が書いたものに田中が加筆修正したと伝えられます。
この騒ぎで政府も足尾銅山鉱毒事件を放っておけなくなったようです。
解決案として、1903年(明治36年)に、栃木県下都賀郡谷中村が貯水池になる案が浮上しました。
これに反発した田中は1904年(明治37年)7月から実質的に谷中村に住むようにしています。しかしながら、同年、栃木県会は秘密会で谷中村買収を決議。貯水池にするための工事が始められました。
土地の強制買収を不服とする裁判などがあり、この後も精力的に演説などを行いましたが、71歳没。『下野新聞』によれば、死因は胃ガンなど。
財産は全て鉱毒反対運動などに使い果たし、死去したときは無一文だったそうです。
雲龍寺で9月6日に密葬が行われ、10月12日に佐野町(現・佐野市)惣宗寺で本葬が行われました。参列者は一説に30万人ともいわれます。
ざっと田中正造の生涯を追いましたが、葬儀の参列者30万という割には、なんというかあまり報われない生涯だったな…と。
いわゆる「正負の法則」で考えると、これだけ慕われたのであれば、もう少し、生活も裕福になっても良かったのではないかと。
しかし、政府関係者からはよく思われなかった可能性大ではあるので、そういう人からは憎まれていた可能性もあります。
例えば成田修造氏はこんな事をおっしゃっています。
「陰謀論とか政治家批判を見てて思うことを…
将来の年金は減るだろうから株式投資してくださいと言うと"国民に自己責任を押し付けてる"と怒る。消費税増税の話になると怒る。少子化対策をしようとすれば意味ないと叫ぶ。(中略)
国の借金増やして身の丈以上の生活をして格安の医療制度を受けて終身雇用と年金制度におんぶに抱っこになってきたのは国民だし、子供産まなくなって1人1人の負担を重くしてるのも国民だろう。今の社会を作ってきてるのは"みんな"なのではないか。」
つまり彼は全体を見てものを言え、と言っているのですが、こういった事が一般の国民に出来る、と思っている人たちにしてみれば田中正造が大騒ぎする一地域の騒動なんぞは全体を見ていないとして唾棄すべきものに映るでしょう。
つまり、こういった「当時の成田修造」からは憎まれていたという事はおおよその察しはつくのです(成田修造氏の意見については私としても思うところが結構ありますが、ここでは割愛します)。
つまり慕われた人数と憎まれていた人数が拮抗していたか、或いは憎んでいた人数が多かった為に彼の生涯は何とも報われないものになってしまったのです。
こんなんだったら、長いものに巻かれた方がいいかな…と弱気にもなりますが、今、田中正造は道徳の教科書に載るまでになっています。彼はいわば金を捨てて人望を手に入れたとも言えるのです。
つまり、金と人望、両方とも手に入れるのは、よほど運が良くない限り難しいのです。
私のような凡人はまずは人に憎まれないように少しずつ徳を積む以外、開運の道はないようです。敢えて逆境を選ぶにせよ、人から憎まれないという器用さが開運には必要になるのです