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アイドルが人間に戻るとき

【大学生の時のアルバイト】
大学生の時、アルバイトで、後楽園球場(今は東京ドーム)で行われた「キャンディーズ解散コンサート(ファイナル・カーニバル)」の舞台作り、舞台撤収したんですよね。別にキャンディーズファンじゃなかったんだけどね。前日と当日の48時間で2万円だったね。だから、コンサートの最初から終わりまで会場の脇で聞いてた。そして、コンサートの最後で彼女たちのなかの誰かが舞台の上から叫んだ。おそらく、伊藤蘭のはず。

【バカじゃないからやめるんです

「こんないいときにやめるなんて、君たちはバカだ、って、いろんな人に何度も言われました。でも、私たち、バカじゃない。バカじゃないからやめるんです!」

え?アイドルらしくない。この一言で、ファンではないけど、この「バカ」という言葉で、彼女たちの思いが、強烈に印象に残った。

【ライブ記録では差し替えられた】
でも、後で大学の友人に、このコンサートのライブ版(当時はアナログのレコード)を聞かせてもらったら、その部分は「でも、キャンディーズは、永遠に不滅です!」という「差し障りの無い表現」に差し替えられていた。

【アイドルが人間に戻るとき】
「バカ」には、それまで抑えていたこと、自分たちがどう扱われていたか、ということ、それをどういう想いで自分たちが感じてきたか、ということ。あらゆることが込められていたように、感じている。

私は、こういう仕事をしている。でもね、バカにするんじゃないわよ!どれだけ我慢してきたと思ってるの!努力した、成果もあったでしょう。歌もうまくなったでしょう。でも、みんな私たちから持っていく人ばかり。いつまで、こんな格好させて働かせるつもりなの?もうその手には乗りたくない。私だって歳を取るんだよ。機械じゃないんだから。私たちは一番いいときにやめる。今がその時だって、私たちは知ってる。バカじゃないから、私たちは自分たちで、自分の道を決めて、そこに向かって、走る。

【「バカ」という言葉】
「バカ」という単語は、おそらく、そんな風に、あの場を切り裂いた。そういう声が、私には聞こえる。当時も、いまも。

【アイドルは「記号」】
おそらく「あの時代」のアイドルって「そういうもの」であって、今も変わらないだろう。アイドルは「人間」ではなく、社会に置かれ、人を集めるための「記号」なのだ。しかし、時代は変わった。アイドルだって、博士だって、当たり前の人間だ。それを隠さずに、公の場に出て、良い時代に変わった。私の本音を言えば、だが、彼女たちには、少し遅すぎた、とは言えるだろうと思う。人は歳を取るから。

いま、人は人として普通に生きられる時代なのか?と、考える。そうあってほしい、と思う。


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