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iPhone13発売で見えたもの

【毎度のことでは】
ついこの前、iPhone13が発売された。毎度の騒ぎにも慣れっこで「やっぱり、またか」くらいの話ではあって。自分はAppleものは秋葉原の販売店で売っていたAppleIIの互換品から、AppleIIeなんてのを買ったこともあった。そんなときから使ってはいるものの、普段から使うスマートフォンもPCもAppleではないから、Appleの製品に親しみも思い入れもない。あくまで自分としてはOne of themってことだが。

【「購買意欲を呼び起こす」マーケティング】
毎回、Appleは新製品が発売される前後に、最近はメディアがその時のマニアの消費行動の「奇異」をニュースとして取り上げるようになった。消費者のそういう行動はニュースになるからか、あるいは、それを売りたい業者が、何らかのお金を報道機関に流しているのかは、ニュースを見ているだけでは伺いしれない。いずれにしても、この時期には、テレビなどレガシーメディアのニュースではなくても、広告のためのネットニュースなどのパブ記事(広告扱いでスポンサー付きの記事)は多いのはあからさまによくわかる。

【メディア露出の多さが決め手】
こういった製品はAppleに限らないが、とにかく多くの人に見られることが多いところにいかに多く露出するかが製品の売れ行きを決めるのは、よく知られていることではある。現代の先進国における「モノ」は、それを持っていない人に「これを持つとあなたと言う人が今とは違う素晴らしい体験ができます」ということを匂わせることで、お金を出させる。100円ショップで売っているものから、何十万円もするAppleの製品まで同じことだ。それが普段の生活に必要ではないものでも「普段の自分ができる体験とは違う体験をするため」に、多くの人はモノにお金を払う。

【いつもと違う体験の意味】
「いつもとは違う体験」に価値がある、と言うことで行われる消費は、旅行などもそうだ。世界でも比較的豊かな経済先進国地域における消費者の、生きるために必要な消費以上の余剰利益ができたときの基本的な消費行動の一つだ。それは人の作る社会の拡大、言い換えれば人という種がより広い生きる場を獲得するための、生物個体としては一見して不合理で無駄に見え、むしろ人という生物個体の危険の度合いを上げる行動である。しかし、その行動は種全体では種の生きる場の拡大のための行動である。「人は社会的動物」と言われる原点がここにある。個体の生存の危険を犯し種の将来の生きる場の拡大をするのだ。「お金」は、手元にある値(お金)が多いほど、個体の生存の確率を上げるが、減らせばそれを下げる。

つまり「ヒトの消費行動の原点」の一つは「将来の種の生きる場の拡大」のために「生物個体としては危険を犯すこともある」というところにある。その絶妙なバランスを保ってヒトという生物は今ここに社会を作って生きている。

【それは命を削る価値があるか?】
であれば、ヒトの余剰の蓄積を消費する行動を起こす判断の原点は「その行動は種の保存のために」「個体の危険を侵してでも行う価値があるものかどうか?」というところになる。ヒト個体の所有する、個体の持つ、将来にわたっての生存に必要な蓄えの価値を測るのが「お金」である。お金の余剰とは、限られたヒト個体の一生を超える生存の時間の確保に必要以上の蓄えを持つかどうか、と言う事だ。大きなお金の支出は、個体にとって大きな生存のリスクであるが、それはヒト個体の持つ蓄えの量によって、その支出が大きいか小さいかが判断されるものでもある。簡単に言えば「Aさんには10万円は大した支出ではないと感じるが、Bさんには大きな支出と感じる」ということだ。

【「魂を揺さぶる」消費】
私達が時折感じることがある「魂を揺さぶる」体験とは、ネガティブな意味では「個体の命の危機が迫っているとき」あるいは「種の危機」のときだ。ポジティブな意味では「種の拡大のチャンス」というものが大きいのではないか?ネガティブなところを埋めるための消費は当然あるが、ポジティブなところへの消費を行わせる機序がいかに働くか。新しいものを売るとき、プレスリリースで「最先端のテクノロジー(Leading Edge technologies)」などという言い方をして、それを持つ気持ちをくすぐる(実際に最先端技術が使われていないこともある)、というやり方があるが、これは人間の持つ「種の活動領域の拡大」という基本的な欲求がそれをさせるのではないか?

【なんであんな高いものを買うのか?】
現在、多くのスマートフォンを使っている人には「Appleのものは他社のもに比べて性能は同じでも高い値段だ」というのは、常識のようになっているが、それでも「買う」という人が多いのは「最先端テクノロジー」という「印象」がそうさせていて、その根底には「人間」というものへの洞察の深さによるマーケティングを私は感じる。


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