「電話をするな」というお話
【最近増えた「ビジネスでは電話しないのがいい」】
最近は有名なYouTuberなど、多くの人が言っていることで「電話をしないほうがいい」という話がある。実際「電話」は、かける人がいいタイミングがかけられる人に良いタイミングとは限らない。今私がいる業界は「なにかと電話」が一番早くて良いコミュニケーション手段だと思われている。しかし、スマートフォンが普及した現在では、そうとも限らない。SlackやLINEなどの各種メッセンジャーはとにかく早い。内容も意識しなくても記録に残るので、メモを取らずとも、読み返してやるべきことを再確認もできる。
【私たちはなぜ「電話の時代」に慣れたのか?】
実は「電話の時代」の日本は時間の流れも今よりゆったりしていて「経済的に豊かな時代」「それぞれに時間の余裕も今よりあった時代」だった、と言えるだろう、と、私は思っている。今や大企業でも赤字垂れ流しが普通、というこの時代のコストダウンは急務であり、仕事のためのコミュニケーションの通信にかかる時間・料金もその例外ではない。であれば、電話で相手の時間を奪うのではなく、送ったら、相手の時間に割り込むことなく、緊急にでも確実に連絡ができる「メッセンジャー」の利用が普通、という時代に変わったのだ。
加えて、かつては日本人の「労働」は、朝7時に起きて、夜寝るのは11時で、など、生活パターンもほとんど全ての人で同じような時代だった、ということもあるだろう。「今電話しても大丈夫だな」という時間が、なんとなく「当たっていた」のだ。今はそれぞれに働き方が違い、仕事の中身も多様化した。休日の夕飯前の時間にかかってくる「セールス勧誘電話」などは、そういう「前提」があってのことだったが、今はそれぞれに違う時間を皆がバラバラに生きている。今どき、休日でも仕事をしているときにセールスの電話がかかってきても「二度とかけてくるな!」と追い返されるだけだ。
【最悪な「留守番電話」】
この前もあったのだが、電話をくれ、という電話をもらって、それがこちらが忙しくて電話に出られないときで、留守番電話にそれが入っていた。そこで、こちらに時間の少しの余裕ができたときに、すぐに電話を返したら、相手が留守番電話で。。。これが相互に何度も繰り返される。一体どれくらいの時間を無駄にしたのだろう、とイライラした。留守番電話を使うなら、要件まで全部入れればよいのだが「電話をくれ」ではねぇ、と言う話は誰しもが経験しているはずだ。「白ヤギさんからお手紙ついた。。。」の現代版だ。
【ビジネスなら電話は最小限に】
実際には、気持ちを伝えるために、本当は会いに行きたいのだができない、というときの「次善の策」としての電話は、音声のほうが感情が伝わるので、あって然るべきだろうと思う。ビジネスであれば「お詫びの気持ちを伝える」などはどそうだ。しかし、ビジネスの多くの場面では感情ではなく具体的なお互いの動きを知ったりすることのほうが重要だ。また「話しことばで伝える」よりも「書き言葉で視覚を通して伝える」ほうが、コミュニケーションにかかる時間が少なくて済む。通信するデータ料も激減するので、通信コストを下げられる。
【災害時の生存確認も】
実は災害時のコミュニケーションも、音声で「大丈夫だった?」などと聞くにしろ、答えるにしろ、それは感情が伴うだろう。しかしそれ以前に「生存確認」が重要なことになるのは言うまでもない。であれば、まずはメールとかメッセンジャーでのコミュニケーションが重要になる。また、現在の音声の電話は、音声をデータ化して送受信するが、同じことを伝えるのに多大なデータ量が必要になるので、多くの通信が集中する被災地との通信は、音声では全員がつながりにくくなってしまう(「輻輳が発生した」と言う)。当然だが、静止画にしても動画にしても、画像の通信はさらにデータ量が増えるので、災害時にはご遠慮いただくのが良い。災害時はメッセンジャーなどでの通信のほうが望ましい。災害時通信ではなく、普通の通信が復旧してから、電話なり、画像の送受信はするほうが良い。そうでないと「みんなの迷惑」なのだ。
【コロナの時代が「電話ダメ」を加速する】
このコロナ禍の時代、この傾向は更に強まったと言えるだろう。遠隔地どうしのコミュニケーションは以前にもまして必須となり、しかも、時間は限られる。「電話が通じない」ので「ここでメールやメッセンジャーが使えたら良かったのに」と思うのは、特に役所との通信に最近は多い。急病人が出ても、電話がつながらない、なども増えた。通信はインフラである。通信には徹底的な合理化・コスト低減を急激にすすめるべき、という意思がなければ、これからの世の中にも置いていかれることになるだろう。え?FAX、なにそれ、美味しいの?みたいに言われる時代でもある。古い通信手段は早く捨てなければ、と思う。なにも「新しいモノ好き」だから、新しい通信手段にしよう、ということではない。実務的に新しい通信手段のほうが優れているから、そうしないと時代に置いて行かれるのだ。
【今の時代の通信の確保はこうしよう】
現代という時代は、通信の時間等のコストも最小限にする必要がある時代だ。しかし、1つの通信手段しかなければ、それが切れると「万事窮す」。そこで、ビジネスや家族との通信は、以下の優先順位で用意しておこう。なにせ、GoogleだdocomoだNTTだ、という巨大通信企業でも、通信が1日止まる、なんてのはざらに起きる時代だ。
1.メッセンジャーとメール、電話など、複数の通信手段を持つこと。
2.電話は副次的な手段として確保はしておくこと。会うことが最善なのに、できないときの代替手段とすること。
3.普段はLINEなどのメッセンジャーを使うこと。
オンライン会議などの手段もあるが、既に特別なことではない。こまめに設定しては、オンライン会議に慣れておく、ということも必要な時代になった。
時代が変わる。であれば、通信も変わる。ついていけなければ組織が壊れる。
そういう時代になったのだ。
【追記:とは言うものの】
今は、特に日本では、役所、大企業などでは、古い慣習はなかなか組織全体で急激に変えるのが難しい「過渡期」だ。そこで働く人の感覚も、明日食うためのお金が入ってくるか、来ないか、などの切羽詰まった緊張感は中小企業とは違って、無いのが普通だ。そこで、自分の場合は、非効率はわかっていても「相手にあわせる」こともある。ここは電話した方がいいな、と感じたときは、過渡的な扱いと割りきって電話にすることもあるのだ。お客様あってのビジネスである以上、こういう割きりや柔軟さがビジネスを救うこともある。「こっちの方がどこから見ても効率的だから正しい」わけでもない。「ときと場合」である。何事も「なんとか原理主義」で性急に物事が変わることができるくらいであれば、ある朝起きたら、世の中全部が未来になっていた、くらいにはなるはずだ。