インターネットは宇宙に行く。
【MWCを知ってるかい?】
毎年バルセロナで開催され、世界で注目される「MWC - Mobile World Congress」という携帯電話・スマートフォン、そのインフラ設備などの展示会がある。ここには、世界の将来を担った様々なモバイル関係の機器やサービスが集まる。今年は、2月26日からの3日間行われた。
【MWC今年の「目玉」は?】
この記事によればMWCの今年の目玉は、スマートフォンなどの端末機器ではなく、キャリアの局内で使用されるインフラ機器だとのことだ。記事は長いので簡単にその「効果」を言えば、渋谷のハチ公像前金曜午後6時、というシチュエーションでも、超高速でのモバイルでのサービス提供が可能になる、ということになる。仕組みとしては、サービス提供のためのサーバーをインターネットのどこかに置くのではなく、キャリアの局舎の中に置こう、というものだ。この仕組みにすると、多くの場合、データ通信のためのパケットがインターネットに出ていく必要がないので、混んでいるインターネットにデータを出し、そこからデータを入れる、というやり方よりも高速になる、という理屈だ。これはNTTドコモが2月下旬に報道発表したプレスリリースでも仕組みがわかる。簡単に言うと、キャリア自身が現在インターネット上にある(モバイルサービス向け)クラウド事業者をやってしまおう、ということだ。しかも、前記の記事によれば世界中の携帯電話キャリア会社のほとんどがこの方向に向いているという。現在のクラウド事業者にとってみれば「携帯キャリアの独占時代」が始まろうとしている、と言っても過言ではない。今後はクラウド事業者は携帯キャリア会社に飲み込まれるか、あるいは携帯キャリア会社とあくまでも対峙していくか?という決断を迫られることになるだろう。
【5Gが「体感」できないワケとは】
現在、多くの新製品のスマートフォンには5G通信ができるものが多いだろう。しかし、使っていて、サービスの提供が速くなったと思うことはあまりない。これは、キャリアのインフラ設備からインターネットとデータのやり取りがされるため、データの経路のどこかで「パケ詰まり」が起きれば、いくら無線部分で爆速な通信でも、実際に使うときはそのデータの経路の「一番遅いところ」のスピードになってしまうからだ。高速道路で交通渋滞を起こしているような感じになるわけだ。つまり、私達利用者が5G、あるいは将来の6Gの「爆速」を体感できるようになるためには、インターネット(の混雑による遅さ)そのものがネックになるから、インターネットとのデータのやり取りをやめればいいんじゃね?ということになる。
【クラウド事業者潰し?】
でもさ、NTT法という法律で動きが規制されているNTTという会社は事業の独占が禁止されているから、それ、やりにくいんだよな。だって「クラウド事業者潰し」って言われかねないわけですよ。あぁ、だからかぁ。。。
【技術のキーはSDN(Software Defined Network)】
SDNって、要するにデータセンターなんかのケーブルの抜き差しの作業を完全にコンピュータの中でソフトウエアでできる、っていうものなんだな。現在のPCアーキテクチュアの汎用サーバーに多チャンネルネットワークカードを付けて、SDNソフトウエアをインストールして、サーバーそのものを多機能インテリジェントのスイッチにした上、さらに「どーせ中身は汎用サーバーなんでしょ。通信だけに使うのはもったいない」ってことで、その上にアプリケーションサーバーソフトウエア載っけて、ってやるんだよな。今は「仮想化技術」あるからね。安全・高速・安定にできちゃう。で、端末側から見ると「はえー(速い)」ってなるわけですね。ぼくがSDNの制御ソフト書いたのはほぼ10年前だけど、今はCPUのパフォーマンスさらに上がったからね。今はもっとサーバマシンに負荷かけてもいいんじゃね?みたいな。だいたい、ネットワークカードのドライバも、今時はCPU側のバス速度も演算速度も速いので、多チャンネルでも割り込み使わずにスレッド作って、スレッド毎にポーリングで行ける時代だからねぇ。(以上、この項が読んでわかる人だけ、ね)。
【「衛星がインターネット」の時代が来る】
現在、衛星関係界隈で報道されている技術情報を総合すると、近い将来はこのインフラ系を全て衛星トランスポンダに搭載して、低軌道の衛星コンステレーションを形成し、衛星間、地上間はレーザーで結び、地上にはネットワーク機器さえない、というように持っていくことになるだろう。インターネットとサーバーの全ては地球の表面上に無く、地上では制御のUIのみが動く未来が見える。現状ではハードウエアがまだ追い付いていないけどね。大きさ重さや消費電力とかね。そして、キャリアのインフラ設備も、電話局も、交換機も宇宙に上がり、将来はスマートフォンは地上の基地局と通信するのではなく、宇宙にある衛星をスマートフォンの基地局にして通信する。すでにその実験は行われていて、成功している。既にその端緒といえるものが、iPhone14以降のスマホにも「緊急時の衛星通信機能」として備わっている。また、最近のHUAWEIスマートフォンなどにも同じ機能が備わっている。また、既に一般向けのサービスに向け、au/KDDI、米国のT-mobile、Starlinkがタッグを組んでいる。2月初めには、世界で始めての6Gの通信実験衛星が中国で上がっている。新しいスマートフォンの時代は「衛星」に向いているのだ。そして一般でも使える様になるのは、もうすぐだ。なぜかというと、前記の実験では普通に私たちがいま使っているスマートフォンと衛星を直接通信させる技術が実験されていて、成功しているからだ。
【衛星に向かうわけ】
「インターネットの全て」が宇宙に上がり、無線ではなくレーザーでつながると、戦争や天変地異などの影響を受けないインターネットができる。海底ケーブルのような「危ない」ものは、もう使えなくなる。機器の安定稼働、盗聴や乗っ取り防止などのセキュリティ、衛星打ち上げさえ安価にできるのであれば(Starlinkがそれができることを証明した)などなど、実現すれば良いことずくめだ。
で、さらに言うと、ここで必要になるのは、っと、ここからはビジネスだね。なにが必要になるか、考えてみよう。
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