「速度格差」が「輻輳」を産む?
【AIと量子コンピュータが作る未来】
AIが量子コンピュータに載ると、すごいスピードで、あらゆる可能性を考え出し、すごいスピードで試行錯誤をシミュレーションし、おそらくその速度はものにもよるが人間を超える。
【「輻輳」はなぜ起きるか】
例えば今回のau/KDDIのトラブルの解決策も、ネットワークのモデルのシミュレーションのための仮想ユニットさえちゃんとできていれば、一瞬で終わるだろう。それにしても、現代のコンピュータの(広義の意味での)CPU間の通信は、いぜんとして電気に頼っていて、通信は基本シリアル通信(つまり通信にはそれが非常に短くても時間がかかる)で、現代のルーターとかのデータ通信機器はシリアルの信号転送でかつ逐次処理をしているわけだ。当然だが、CPUの処理速度に比べて通信の速度は遅い。また、ルーターや交換機器そのものも、処理速度が速いものや遅いものがある。その「速い」「遅い」という2つ以上のものを複雑につなげると、全体として遅くなったり、ひどいときは全体として求められる機能そのものが失われる。これが「輻輳」の基本モデルだ。
【au/KDDI事件でちらっと見えた未来】
速度を求めるためにパラレルな処理ができても、所詮はクリティカルな領域に至れば輻輳が起きる。もっと言えばメモリの読み書きのスピードさえ問題になる領域もある。ということは、AIがいくら優れていて、多くの処理を非常に速い速度でできるとしても、そのためのデータの入出力が計算速度のネックになる。つまり「CPU内での圧倒的な演算速度」と「それに比べたらドン臭い遅さのメモリなど周辺の読み込みや通信、入出力のスピード」の間で「輻輳」が起きる可能性が高い。つまり、演算だけ突出してスピードを速くしても混乱がやってくるだけだ。au/KDDIの「事件」は、AIと量子コンピュータだと言われる現代にそれを見ていると、そういう未来がちらっと見える、そういう事件でもあったと思うんだな。
【スピードを求める技術の「限界」】
少なくとも、現在のネットワークの数万倍のスピードを持った信号の伝達について、おそらく電気や光以上のスピードの通信ができるものが出来なければ、この先の技術の進化」はスローダウンしていくだろう。実際、スローダウンするはずだ。「電気を超えるスピード」。言い換えれば「光を超えるスピード」を求める時代になりつつあるのかもしれない。「このまま行けば」だけどね。今や、半導体メモリ素子の1つのセルには1つの電子くらいの単位の電荷で0/1が記憶されているという。であれば、その情報の伝達のスピードは早晩大きな問題として我々の前に立ちはだかる。いや、一部では既に始まっているが、我々はまだその問題をはっきりとは整理して切り分けられていないのだろう。
【「ただ速くする」時代が終わるのかも?】
物事をただただ速くするだけではなく、もう一つの方向として「ネットワーク構成機器間の処理スピードや伝達スピードのバランス」を重要視し、そこに重点を置いた研究も必要だろう。「処理がとんでもなく速いもの」と「処理がとんでもなく遅いもの」は常に世の中に両方ともあるわけで、これらのバランスをいかに取るか、という「モデル」を考える、ってことだな。これは社会にも応用できるし、大規模通信などにも応用できる。実際、人間の脳は「身体」という「うすのろ」なスピードしか持てない「実体」とのインターフェイスをうまく取っているのではないか?と、想像する。加えて、人体の外部との境界のインターフェイスでも同じことが起きるだろうし、更に外側の「人間個人」と「社会」の間でも、同じ問題が起きるだろうし、起きている。さらには人間のコミュニテイ間でも同じ問題を抱えているし、これからもこの問題は増える。おそらくそれはこのスピードに対してクリティカルになればなるほどトラブルを抱える現代に必要な「根が深い」問題なのだ。
簡単に言えば実社会でもあるよね。「お前だけ先に行くんじゃねぇ。みんなのことも考えるんだ!」みたいな。
【物理学の発展のアナロジーか?】
思い返せば、物事がのんびりとして混沌としていた時代には「ニュートン力学」が物理の全てを説明できると思われていたが、時代が下って宇宙が相手になるなどの発展で、物理学は「相対性理論」に行き着いて、今も検証されたり発展したりしている。しかも「相対性理論」は、ごく速度が遅い普通の現実として私達が手にできる現象の範囲であれば「ニュートン力学」にも、適合している。なんか似てるよなぁ、という感じ。
【新しい「モデル」を作ろう】
ここに「アイテム間、それをつなぐインターフェイスでのスピード格差を調整する方程式・あるいはモデル」ができれば、おそらく大きな人類への貢献になるだろう、と、私は思う。
などと、まぁ、想像しちゃうわけで。