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The war is Over.
「え?1時間前に開戦したんじゃなかったの?」
「そうです。司令。でも、今さっき、戦争は終わりました」
「なにがあったんだ?」
「我が国と敵国の双方の総合戦略情報人工知能システムが、お互いの国の支配権の変化を最小限にし、まず物理的破壊をなくすことで、双方の地域の損害を最低限にしました。その後、双方の意見調整と外交的力関係、経済的力関係をお互いにやり取りし、調整をして勝敗を決めたんです。これで1時間がかかりました。今回は結構かかった感じですね。今回は国境は一部で約1km、敵国に譲ることで決着しました。海の上ですけれども」
「せっかく、あれだけのお金をかけたドローン攻撃機や広域戦闘システム、局地戦闘システム、無人戦車、無人衛星破壊兵器、完全無人の防空システムなんかも使わずじまいか。。。まるでチェスで国の運命を決めてるみたいじゃないか!」
「そういうことになります。でも、お互いにとって、それが一番いいですよね。破壊があれば、いくら戦勝国になったとしても、味方の地域や敵の地域の戦後の復興にかかるコストも膨大で、国の予算を大きく毀損しますからね。人工知能はそこまで考えています。例えばですね、東洋の某国では十数年前、大地震での原発破壊がありましたけど、その復興予算だって、その場所を占領した国が負わなければなりませんよね。しかもその原発は経済の中心の首都の近くですもんね。そこでの原発の再度の事故は避けたいですよね」
「地域どうしの戦闘によるお互いの力関係の調整による領土などの取得は、そういうことも考えているのか!すごいじゃないか!」
「現代の戦争は、不確定要素ばかりの無鉄砲とか不合理な行動、感情的なこと、短絡的なことをする人間が一切介在しませんからね。当然そうなりますよね。これら兵器が破壊に使われるのは、文明国どうしではなく、文明国が未開の国を相手にする場合だけでしょう。未開の地域には人間がまだ地域の支配権を持っているところがありますから。あるいは、SFチックで申し訳ないですが宇宙人来襲、とか。しかも、このシステムを入れていないところは戦争に負ける。みんな入れざるを得ない」
「そうか。我々はまだ出番はあるな。結局冷静に考えれば、戦争は土地の取り合い、経済だからな。経済は数字で決められる。我々軍人は感情的に戦闘を始めるような愚は徹底的に戒められているしね。煽られて感情的になりケンカ腰にさせるのは、一般庶民だけと決められているわけでね。彼らは本当の戦闘には無力なんだしね」
「不確定な人間が実質支配している地域が相手なら、総合人工知能戦略はないので、為政者が不合理な動きをする場合はありますよね。我々はそういう時のための戦闘員なんでね。世界の過渡期の仕事だよ。」
「あ、司令。今日はこれから娘の誕生日なんで、早く帰りたいんですが、いいですか?」
「わかった。でも帰る前に、娘さんへの誕生日プレゼント、忘れないようにな」
「ありがとうございます」