第16話 未経験35歳なんて誰も雇わない
起業する業界を「グリーン業界」と決めた。
では、「グリーン業界」のなかで、具体的に何をやるのか?
20年前は、まだインターネットに情報があふれていたわけでないので、書籍だけでは情報が少ない。
そこで、何で起業するかを調査するために、3つの学校に同時に通うことにした。
「お花屋さんを開業するための学校」
「観葉植物のレンタルを主業としている会社が組合を作って運営している学校」
「ガーデンデザインの学校」
なので、僕は、このごつい指で花束を作れる(笑)。
樹医の通信教育も受けた。
習ってばかりではとも思い、アルバイトも申込んだ。
ただ、どこも、僕の経歴をみて「なんで???」と、どこも相手にしてもらえない。
グリーンの仕事は若い子に人気の職業だったので、35歳は、業界で学び始めるには超年寄りだった。
ある造園会社さんで「掃除からならいいよ」と言って下さったところがあったが、僕も35歳だったので「掃除を何年くらいやったら次のことを教えていただけますか?」と聞いたら「そりゃわかんないなあ~」との回答だったので、辞退したこともあった。若ければそれでもいいが、35歳には時間がない。
そんななか、1枚のチラシが自宅に入る。
またチラシで変わる人生(笑)。
1回目は、最初の転職先になる「コーポラティブハウス」のチラシ。
これが2回目。
後にチラシによる3回目の大きな変化があるが、それはそのとき話したい。
話を本題に戻す。
そのチラシは「お庭のことなんでも承ります」という手書きのチラシだった。
僕は「これだ!」と思った。早速、電話して「働かせてもらえませんか?」と尋ねた。
すると相手の方は「1人でやってるから無理だな」との回答だった。
僕は「では、タダだったらどうですか?」と尋ねた。
すると「タダか?タダだったらいいよ。だけど生活どうするの?」との回答だった。
「条件があります。タダなので、掃除ばかりでなく、出来るだけ色々なことをさせてください。そして1年たったら僕は独立します。それでいかがでしょうか?」と尋ねた。
「なるほど、魂胆がわかった(笑)。じゃ来な」となった。
その方はすでに他界されているが、埼玉のドライブインを2代目として経営していたが事業を失敗し、趣味の園芸を仕事にして再出発していた方だった。なので、僕の魂胆も理解いただけたのだと思う。
起業準備をしながら、その方のもとで1年弱お世話になる。その方のお仕事は、一言でいえば「お庭の便利屋」だった。剪定もやるし、DIYみたいな造作物もやるし、植え込みもやる。実際に掃除だけでなく、すべて少しずつ触らせていただいた。この方と出会っていなかければ今の僕はない。感謝しても感謝しきれない。
知らないって怖い。
うぬぼれも怖い。
「俺ならできる」
それだけだった。
僕は、無謀にも、業界1年の経験で起業する。