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覚えたてのバイバイ

会社を辞めて、転職先がなかなか決まらず、なるべくお金を使わないように生活をしていたとき。

家の食材がなくなったので、スーパーマーケットに向かって歩いていた。いつも行くスーパーは最短距離で行くと、途中に、狭い路地がある。狭過ぎて、大人1・2人しか通れないから、車も気にせず、ぼんやりとしながら歩けた。その日も、「今日も何も決まらなかったなあ」と思いながら、ぼんやり歩いていた。

ふと、何か視線を感じた。目を前に向けると、私の前を歩く女性に抱っこされた、1歳くらいの赤ちゃんが、私をじっと見ていた。

私も赤ちゃんに視線を向けると、その赤ちゃんはにっこり笑って、私に手を振った。

赤ちゃんが手を振ってくれている。もちろん、私も手を振り返した。すると赤ちゃんは狭い路地を抜ける間、ずっと、手を振り続けている。私もそれに応えて、ずっと手を振り返していた。

路地を抜けたころ、赤ちゃんのお母さんが、赤ちゃんが何かしていることに気付いたらしい。私の方に目を向けた。私はお母さんに頭を下げて、2人を追い越した。

きっと覚えたての「バイバイ」を、ずっとしてくれたんだろうな。
わたしはほっこりとした気分になり、また明日から仕事探しを頑張ろうと思えた。


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