専門医受診まで
起立性調節障害を診断されて半年強。
残念だけど、本人の意欲は多少ある中で、登校できても未だ週1の息子①、とうとうかかりつけ医から「これ以上の内服増量は判断が難しい」ので、一旦専門医を受診するようにと言われた。薬を調整してもらうように、薬の調整がある程度出来てからならまた続きを見ますとのことで腹をくくった。
何せ、夜はどんなに一丁前の口をきいていても、朝には打って変わってメンタル茶碗蒸し未満になるのが重症起立性調節障害の息子①
朝の受診なんて、本人が納得しなきゃ到底できるわけない。
今までならこの納得を得るまでが大変な道のりだった。いかに本人の自律性を尊重しながら「受診する」と自分で言えるように働きかけるか、こちらのコミュニケーション術が大いに試されたのだけど、本人もちょうど「もうこの病気しんどい」ぼやき始めた頃だったから、ちょうど良かったらしい。
私「今の先生がさ、もうちょっと良くするのに専門の先生受診してって。ちょっと遠いけど、その方が良くなるからって」息子①「うん、わかった」
....思わず私も3度見レベルの二つ返事で納得した本人の目の前で即予約。
せっかく親族宅から帰ってくるならと、予約前日は、本人のかねてからの強いリクエストを叶えて潮干狩りを予定。いざ朝になったら、ドタキャン戦争が始まるのではとハラハラしつつも、もうなるようにしかならないと腹を括った。
そして迎えた潮干狩り、結果的にはこの無謀とも言える計画が、翌日の受診への布石になる。
相変わらず朝になって(案の定)「俺はもう嫌や!」絶叫と共にドタキャンしかけた息子①。
こちらもムキになって思わず置いて行ってやろうかという考えが頭を掠めたけれど、よくよく考えたら彼が行かないのならそもそも私も別にそこまで行きたいわけではない。そして私がキャンセルすれば息子②も当然行かないであろう状況の中でもう一度私も状況を俯瞰する。
いそいそと前日からBBQの準備までした上、いつの間にか誰になんの断りもなく義母まで誘って、完全に本来の目的から宙に足の浮いている夫を冷たく見放すか、言い出しっぺでありながらドタキャンを試みようとしている息子①を置いて行くのか。昔流行った言葉遊びを思い出した。「ねぇねぇ、ミミズ味のカレーと、カレー味のミミズ、どっちを食べる?」
正直に話した。「ねぇ、お母さんどうしたら良い?あなたを置いていくのも、パパが1人で突っ走ってるとは言え、何も知らずに来てるおばあちゃんにドタキャン食らわすのも、どっちも選ばれへんねん」母の静かな問いに、息子①は寝ぼけながらも冷静になったらしい。「11時出発でもいい?それなら頑張れるかも」
誰の気持ちを考えても、もちろん良いに決まってる。そして、ほとんどお昼前にようやく出かけたのだった。夫が勝手に呼んだ義母を車の中で1時間も待たせたのは気の毒だったけど、究極の選択の中ではやむを得ない。私が直談判で謝罪して、ことなきを得た。
いざ海に着いて息子①、心底自分の状態を、やりたい事も思うようにできない身体を実感したらしい。歩きながら呟くように尋ねる。
「お母さん、この病気、どうやったら治るの?」
「明日専門の先生みてくださるから、そこで相談しよ。」と答えたら、静かに頷き、潮干狩りはそれでもキャッキャとまるで小さな子どものように喜んで海の中に入って遊んでた。潮干狩りと言うよりもはや海水浴なのだが。
後で聞いたところによると、塩水の中は身体が「とても楽」だったのだそうだ。おそらく浮力が重力を和らげる上に塩水の水圧は快かったのだろう。曰く「リハビリ兼ねて来週も行く」親の都合そこのけの台詞すら可愛く思えるほど、心底安らかで涙の滲むひとときだった。
そしてこの潮干狩りドタキャン未遂事件は翌日大いに活きる。受診当日朝は、相当しんどかったはずだけど彼はほとんど眠っている巨大な赤ちゃん状態で、私が寝っ転がったままぶつぶつ言っている彼に問答無用で服を着せて、タクシーを呼び、本人は玄関からそのままタクシーへ移動。タクシーの中では完全にリクライニングを倒して、ベタベタに寝かせ、病院入り口まではタクシーで乗り付ける。
毎月これをしろと言われたら厳しいけど、今はコロナの兼ね合いで電話診療が可能だから、とにかく初診だけ連れて行くことを目標にした。
お金はかかったけど、運搬成功。
到着するころには彼も、多少人の心が戻ってきて、病院の受付まで頑張って歩いた。
着いてしまえば後は指示通り検査を回るだけ。....のはずが、ここにきて思わぬゲリラ隊が出現する。同伴の息子②、「俺は採血、受けないよ」なんせ初診のクリニックで採血が嫌だとクリニックを飛び出し自力で帰宅してしまった強者だった。すっかり忘れてた。...(続