バック・トゥ・ザ・フューチャーは未来予測じゃない 〜SFが売れた読書会〜
月に一度、所属しているNPOでオンライン読書会をしている。
ここ3回は紹介する本のテーマが決められていた。前回のテーマは『科学』。科学→サイエンス→サイエンスフィクションという連想で僕はSF小説を紹介した。
80年前、太平洋戦争がはじまった年に、アメリカ人が書いたそのSFは、ジュブナイルと呼ばれるティーン向けの小説だ。
遥かな未来にある状況に置かれた少年の冒険。誤解をしている人が多いのだけれど、SFは未来の科学技術を予想するものではない。
いや、予想もするのだけれど、SFが目指すのはその先だ。
もし科学がこんな発展をしたら、個人はどう行動するのか、社会はどんな形態をとるのか、人類はどう進化するのか。SFは論文じゃなくって文学。
だから未来の技術を描くだけじゃない。その先の人間を描くのだ。
もしエイリアンが地球にやってきたら、もし人類が銀河に乗り出したら、もしタイムマシンが発明されたら、人間はどうなるのか。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』で描かれた未来は2015年。
現実の2015年がやってきた当時に、ネット上にあふれた記事がある。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』で描かれた2015年がどれくらい実現したかというもの。
そんな記事が多く書かれてたくさん読まれる社会だから、SFは多くの人に誤解されている。
SF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』は未来の風景が面白いのではない。(それも味付けの一つではあるんだけれど)
タイムマシンを手に入れた少年がどんな行動をするのか、その人間の行動が面白いのだ。話がずれた。
紹介したSFジュブナイルは少年の一人称で語られる。その少年が語る自分が住んでいる場所は地球上ではなさそうだ。
地面全体が少し湾曲していて、廊下を同じ方向に歩き続けると元の場所に戻る。
梯子を上に登っていくと、だんだん体が軽くなっていく。
その場所は多くの人間が一応社会のようなものを構成して生活しているくらい広大だ。
下のリンクの表紙ですでにネタバレになってしまうので答えを書く。
少年が住んでいるのは巨大な恒星間宇宙船の中。
円筒状の宇宙船が自転して、人口重力が生じている。だから少年の主観からは世界は上のように語られる。
でも少年も周りの住民全員も、ここが宇宙船の中であることは知らない。
恒星から恒星に移動する何百年という時間の中で革命と世代交代が起きた。それにより人間たちはここが宇宙船であることを忘れてしまったのだ。
こんなすごい設定が80年前のSFに書かれている。
ついでに言えば今のいろんなアニメや映画の元ネタのほとんどは、1950年代までの欧米のSFに描かれている。
で、ここからが大事なこと。
SFの壮大な設定は背景に過ぎない。
そんな状況におかれたら人間社会はどうなるか、個人はどう行動するかを書いているから、SF小説は面白いのです。
と、力説した読書会で、参加者のひとりがこのSF小説を買って読んでくださった。SFの普及に貢献できてご飯が美味しいです。
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