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欧州ロングセラー『公共善エコノミー』の日本語版 目次

『公共善エコノミー』はオーストリア・ウィーン在住のクリスティアン・フェルバーが、 2010 年に同名の本によって提唱した、新しい市場経済のコンセプトである。著書は、2018 年には改訂版の文庫本も出版されるロングセラーになり、今年 2022 年暮れに出版されるフ ランス語版と日本語版を含め、8 ヶ国語に翻訳され、14 カ国で出版されている。

資本主義による市場経済システムは、人間が生物学的に不得意な「競争」を原動力にして「利潤」を獲得することを目指すものである。それによって深刻な環境問題や社会問題が引き起こされている。「尊厳」と「信頼」という人間社会の根源的な価値をベースにしたフェルバーの公共善エコノミーは、人間の得意な「協力」を原動力として、万人が幸福な持続可能な社会の構築を目指す、オルタナティな市場経済のコンセプトである。

公共善エコノミーは、《公共善決算》という、事業体の総合的な経営評価ツールを有している実用的なものである。だからヨーロッパを起点に、世界中にその実践が広がっている。しかし、単なる新しい経済コンセプトではない。そのために必要な法的な枠組みと、《主権者デモクラシー》という、市民の主体的な政治参加(社会構築)システムも提唱している。学校教育に関する本質的な提案もある。ドイツの著名な環境ジャーナリストのフランツ・アルトは、公共善エコノミーのことを「社会主義と資本主義の間に位置する実用的な第3の道」と評している。経済・政治・教育分野をつなぐ、ホリスティックで具体的な道を、公共善エコノミーは簡潔・明瞭に描いている。

現在、3000以上の企業・団体が「公共善エコノミー」のコンセプトに賛同していて、約500企業・団体が「公共善決算」を採用している。自治体レベルでの参加と実践も増えていて、市民を巻き込む包括的な運動として展開している。また、2014年に設立された公共善協同組合は、既存の銀行に呼びかけ、公共善バンキングの導入を推進していて、現在、700以上の公共善口座(預金総額は約22億円)が複数の銀行で開設・運営されている。

以下、12月に発売予定の『公共善エコノミー』日本語版の目次を紹介する。

『公共善エコノミー』 クリスティアン・フェルバー著

はじめに


第1章  短い分析
人間的な価値 ー 経済の価値
価値は北極星(指針)
エゴイズムから公共善へ
「尊厳」は最高の価値
「自由」な市場?
信頼は効率より大切
利益追求と競争の結果: 資本主義の10の危機

第2章 公共善エコノミーの核
経済活動の目標
システムポイントのシフトチェンジ
経済的な成功を新たに定義する
手段ではなく目標を測る
公共善を測る
公共善を定義する
プランB: 主権者デモクラシー
市場透明性を構築する
公共善への努力を報いる
公共善査定
手段としての利益
容認される利益の利用
容認されない利益の利用
成長圧力の終わり
最適な大きさ
構造的な協力
破産
共同の市場制御
社会的な保障と自由年
連帯所得
確実な年金
公共善とグローバル化

第3章 公共財としてのお金
「お金はそれ自体が目的ではない。目的のための手段だ」F・W・ライフアイゼン
民主的銀行 & 公共善銀行
目標と成果
補完性とデモクラシー
透明性と安全性
社会的でエコロジカルなクレジット査定
ファイナンス、リファイナンス、倒産
利子とインフレ
 与説:金利と指数関数的成長
相互補完的な地域通貨
私立のプロトタイプ: 公共善協同組合

第4章 所有
ネガティブフィードバック(抑制機構)
所得格差の相対的制限
私有財産の制限
大企業の民主化
従業員の経営参加
会社利益の分配
相続権の制限、世代ファンドと民主的持参金
不動産
企業の継承
贈与
民主的アルメンデ
自然の所有
自由と平等
所有形態の多元性

第5章 モチベーションと意義
モチベーション
意義
教育

第6章 デモクラシーのさらなる発展
本物のデモクラシーは穴の開いたフレーズではない(アインシュタイン)
私たちは主権者
権力分立の拡張
主権者による憲法
コンベントへの道
教育コンベント
生存配慮コンベント
メディア・コンベント
デモクラシー・コンベント
三段制の直接デモクラシー
三つの柱のデモクラシー

第7章 事例、類似例、模範例
1. Mondragón - 世界一大きな協同組合(スペインのバスク地方)
2. SEMCO - 工業デモクラシー(ブラジル)
3. Cesosesola - マルチ協同組合(ベネズエラ)
4. Sekem - 砂漠のビオ農業(エジプト)
5.フェアトレード - 生産の背景にいる人間に価値を置く(58生産国)
6. OIKOPOLIS - ビオ卸売(ルクセンブルク)
7. Community Supported Agriculture (USA, ドイツ、オーストリア)
8. Regionalwert AG - 地域の自己資本(ドイツ)
9. 倫理銀行(ドイツ、オランダ、スイス、オーストリア、イタリア)
10. GEA, gugler, Sonnentor, Grüne Erde, Thoma, Zotter - 各分野のパイオニア(オーストリア)
11. 連帯エコノミー(ブラジル)
12. オープンソース(グローバル)
13. NPO: 非営利の事業体に17万人の雇用(オーストリア)
14. 無償の社会貢献、ボランティア(世界各地に)

第8章 実践の戦略
I. パイオニアグループ
II. 関係者たち
III. 地域グループ(「エネルギーフィールド」)
ポジティブなフィードバック
戦略的なネットワーク
自分はどのように参画できるか?

付録1: 数字とデータ
付録2: 民主的経済コンベントの根幹となる問い

注釈

参考文献

謝辞


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