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青ブラ文学部お題「ぼくはくま」

この作品は山根あきらさんの青ブラ文学部のお題小説です
山根さんよろしくおねがいします


僕はいまから15年前に
智樹さんのお嫁さんから
智樹さんお母さんに手渡された
ウエディング・ベアー

あの日、お母さんは笑っていたけど少し寂しそうだった。
2人がハネムーンに発つのを見送ってから
僕を子供の様にに抱きしめ
帰りの列車でうとうと眠っていた

その次の日から僕は仏壇の部屋の
茶色い箪笥の上にちょこんと座らされている

普段お母さんは
猫のことばかり考えていて
ぼくには目もくれないが、

年に2度ほど僕のところにやってくる
今日も
「今度、新しい社宅を見に行こうかな?」
とお母さんが酔った勢いで言うと、
「まだ全然片付いてなくて」と、
お嫁さんにやんわり断られ
それでもみんなの前ではそうよね~と笑う。

夜みんなが寝静まった頃やってきて
ぼくを赤子を抱くように抱き
「結構重たかったんだね~」とか
「あんなに可愛かったのにね~」とか
「一生懸命育てたんだよー」とか
「お金いっぱいっい使ったのにな~」とか言って
涙ぐみます。
たまには嗚咽します。
しばらく泣くと気を取り戻し僕をもとの位置に戻し
顔を洗い、クリームを塗り
そして、そっと布団にはいります

ぼくはくまだけど
お母さんの寂しさがちょっとわかります。



#ショートショート
#ぼくはくま
#青ブラ文学部
#山根あきらさん
#小説が好き


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のり
この度はサポートいただきありがとうございました これからも頑張りますのでよろしくお願いします