札幌・北海道スタートアップ地図2023、昨年からの変化は!?
はじめに
株式会社POLAR SHORTCUT(ポーラー・ショートカット)の大久保です。普段は札幌で、スタートアップ投資(シードVC)を行っています。
昨年大きな反響をいただいた「札幌・北海道スタートアップ地図」ですが、1年分の情報をアップデートして2023年版を作成しました!!
2年目となり、昨年からの数字の推移も見ていけるようになりました。単なる地図としてだけでなく、札幌・北海道のスタートアップの現在地を知ることができる「まとめレポート」として、多くの方の参考になれば幸いです。
【前提】本記事の「スタートアップ」の定義
何を以て「スタートアップ」であると判断するのか?は、人や話の文脈によって微妙に定義が異なってくる部分です。
本記事においては、スタートアップ企業の特徴を
①エクイティ等で外部資金を調達し、赤字を許容しながら急成長を目指す
②非上場で、大企業資本からも独立している一時的な組織形態である
という2点で捉えており、以下のような条件で企業を選定しています。
地図からわかる!札幌・北海道の特徴は?
2023年版のスタートアップ地図は、2023年6月末時点の情報を反映してあります。札幌のスタートアップの数は、41社です!!
思ったよりも多いですよね!
では早速、地図からわかる特徴を見ていきましょう!
まずは、北海道大学とその周辺エリア。すごく数が多いですね。全体の4分の1程度がこのエリアに固まっています。
北大エリアは特に「医療/バイオ」系や「宇宙/ハイテク」系のスタートアップが集積しており、資金調達の金額も多めであるのが特徴です。北大の研究を事業化したスタートアップが多いですね。
もう一つ目立つのが創成イーストエリア(EZOHUBを含む)です。こちらは、新幹線札幌駅の開通に向け再開発が進む注目のエリア。
企業のカテゴリにあまり偏りはありませんが、かつて開拓使麦酒醸造所をはじめとした「明治時代のスタートアップ」が集積したエリアでもあり、今後スタートアップも増えていくのではないでしょうか。
直近では、Medi FaceやYounodeが創成イーストへ移転してきています。
▼下記記事は北海道新聞の創成イースト特集。ご参考までに!
そして、札幌「以外」の地域のスタートアップは、2023年6月時点で17社!(実は当社の非公開投資先が1社あるので、実際には18社ですね…)
こうして見ると、GOODGOOD(厚真町)、Fant(上士幌町)、ファームノート(帯広市)、農業情報設計社(帯広市)、エゾウィン(標津町)など、一次産業系のスタートアップが多いのが、札幌以外のエリアの特徴ですね。特に、十勝を含む道東エリアはその傾向が顕著です。
ちなみに、4月に公開されている「福岡市スタートアップ地図」の2023年版を確認すると、スタートアップの数は88社。札幌市の41社と比較して、まだ2倍以上の開きがあります。これからこれから。
2023年版で追加された注目企業5選!
それではこれから、直近1年で札幌・北海道のスタートアップシーンに名を連ねた企業を紹介していきます。この5社を知っているあなたは、なかなかのスタートアップ通です!
エントリーNo.1:遠友ファーマ株式会社(札幌市)
まずは、北大発バイオスタートアップの遠友ファーマ。2022年秋のOpen Network Lab HOKKAIDO 5th Batchで最優秀賞を受賞した企業です!
遠友ファーマは、細胞表面にある「糖鎖」に着目し、その糖鎖を目印として活用することで、薬剤を特定部位にピンポイントで届けるという創薬の技術を事業化したのこと。素人にはよくわからないですが、すごそう…
エントリーNo.2:大熊ダイヤモンドデバイス株式会社(札幌市)
続いては、ダイヤモンド半導体の社会実装を目指す大熊ダイヤモンドデバイス。2023年5月にCoral Capitalやグロービス・キャピタル・パートナーズなど、東京の大手VCからシードラウンドで総額1.4億円を調達しています。
10年超に及ぶ研究を経て、実用的に動作するレベルに到達したため2022年に創業に至ったとのこと。北大には他にも多くのディープテックが眠っていそうです。
エントリーNo.3:株式会社よびもり(札幌市)
次にご紹介するのは、海難事故発生時の救助要請サービスを提供するよびもり!北海道紋別市出身の千葉さんが、2019年に福岡市で創業したスタートアップですが、2023年6月付で、北海道札幌市へ本社移転となりました。
このよびもり、2020年に実施されたOpen Network Lab HOKKAIDO 3rd Batchで最優秀賞を受賞した企業でもあります。注目スタートアップの帰還は嬉しいですね!!
エントリーNo.4:株式会社マッシブサッポロ(札幌市)
4番目は、2010年創業のMASSIVE SAPPOROです!
不動産の無人ホテルプロデュースをテーマに、株式投資型クラウドファンディングのイークラウドで、2,940万円を調達!イークラウドサービス開始以来最速の8時間34分で目標を達成したとのこと。
もともと札幌のベンチャーシーンでは有名な会社でしたが、これを機に大きくアクセルを踏んでいくのでしょうか。期待です!
エントリーNo.5:株式会社ドゥーファ(室蘭市)
最後は、2022年9月に東京から室蘭へ本社移転したドゥーファ!
2022年12月に本業である副業・転職サービスの「kasooku」を事業譲渡しており、現在は新しい取り組みに向けて着々と動いている様子…
もともと2020年にプレシリーズAラウンドで総額約1.9億円を調達していた一戸さんだけに、次の動きが気になるところです👀
余談ですが、一戸さんのご出身の室蘭栄高校は、優秀なスタートアップ人材を多数多数排出しており、個人的に注目しています。
EXIT(上場 or 売却)した企業も。
一方で、昨年のスタートアップ地図掲載企業から、IPOした企業も!
Salesforceを用いたシステム開発・DX事業に取り組むキットアライブ(札証アンビシャス・5039)です。
2016年8月設立、2022年9月に札証アンビシャスへ上場しています。初値での時価総額は2,087 百万円でした。
しれっと書きましたが、北海道は「札幌証券取引所(札証)アンビシャス市場」というベンチャー企業向け新興市場がある数少ない地域なのです。地域スタートアップ・エコシステムとしても、この特徴をうまく有効活用していきたいところですね。
スタートアップ企業数の増加
今年からは、数字の推移も見ていけるようになりましたので見てみましょう。昨年と比べると、札幌には(条件を満たした)新しいスタートアップが8社追加になっています!
また、北海道全体で見ると、スタートアップの数は+11社となっています。
※EXITしたキットアライブの1件分が減
このペースでいけば、2027年前後には「北海道に100社のスタートアップがある」状態も実現できそう。来年の伸びにも期待です!
直近1年で実施された注目の資金調達は!?
続きまして、2022年7月〜2023年6月の期間で実施された注目の資金調達をご紹介します!
エントリーNo.1:カムイファーマ株式会社(旭川市)
まずは、旭川医科大学発スタートアップであるカムイファーマです。炎症性腸疾患治療薬の研究開発に取り組む企業で、2022年7月にシリーズBラウンドで、CYBERDYNEやDGインキュベーション、三菱UFJキャピタル等から総額6.5億円の資金調達を行なっています。
旭川市は道北エリアの医療拠点となる都市であり、今後もこのような医療系スタートアップが産まれていくかもしれません。
エントリーNo.2:株式会社あるやうむ(札幌市)
続いては、ふるさと納税×NFTの事業を手掛けるあるやうむ。昨年のスタートアップ地図でも注目企業としてピックアップしておりました。
その後、2022年12月にスパークルとSkyland Venturesから4,000万円の資金調達を行なったことに加え、2023年2月にはKDDIと資本業務提携を行なったと発表しています。
NFTのマーケットは今年に入って苦しい状況が続いていますが、何とか乗り越えて新たなステージに進んで欲しいところです。応援!!
エントリーNo.3:Letara株式会社(札幌市)
続きまして、注目の宇宙スタートアップ「Letara」です。この会社も昨年のスタートアップ地図でピックアップしておりました。
2023年2月に、SBIインベストメント等複数の投資家からシードラウンドで総額1.2億円の資金調達に成功しています。
インターステラテクノロジーズや岩谷技研に続いて、北海道の宇宙産業が盛り上がっていく予感….!!
創業者のLandon&平井さん、応援してます!
エントリーNo.4:五稜化薬株式会社(札幌市)
4番目は、2010年創業の五稜化薬!
北海道内では比較的老舗の北大発スタートアップです。2023年4月に、東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社等複数の投資家から総額2.6億円の資金調達を行なっています。
五稜化薬は2015年から定期的に大型の増資を行ってきており、今回は2019年の10億円超の資金調達に続く久しぶりの増資。今後の動向が気になるところです。
エントリーNo.5:インターステラテクノロジズ株式会社(大樹町)
最後にご紹介するのは、知名度が最も高いであろう、ロケット開発のインターステラテクノロジズです。
2023年1月にシリーズ Dラウンドで総額38億円の資金調達をクローズ。今回の調達を経て、評価額・累計資金調達額とも北海道のスタートアップではNo.1になったのではないでしょうか。
宇宙産業は、今年の4月に上場したispaceが民間企業初となる月面着陸に挑み、あと一歩のところまで迫るなど、夢物語から現実的な成長産業へと変化を遂げてきました。大樹町は世界有数の好条件を備えたロケット発射場でもありますし、北海道の宇宙産業にはこれからも注目です。
資金調達企業数の増加
資金調達したスタートアップの数も年々増えてきていますね。数字の推移も見て行きたいと思います!
2022年7月〜2023年6月にエクイティでの資金調達を行なったスタートアップの数は、北海道全体で20社でした!企業の総数が59社なので、だいたい3分の1程度のスタートアップが直近1年間で資金調達を行なっていることがわかりますね!
なお、上記の20社のうち1億円を超える資金調達は、GOODGOOD(1億円)、Letara(1.2億円)、大熊ダイヤモンドデバイス(1.4億円)、五稜化薬(2.6億円)、イーベック(4億円超)、AWL(数億円)、インターステラテクノロジズ(38億円)、カムイファーマ(6.5億円)の8社です(公開情報ベース)。
こうして見ると、大型の資金調達は、宇宙・半導体・AI・バイオといった領域に寄っているのがわかりますね。
【おまけ】 当社ファンドの新規投資先
株式会社プレスリー(札幌市)
温浴施設向けのデザインツール「pressly」を開発する札幌市のスタートアップです。2022年9月に投資をさせていただいた後、本格的にシステム開発を進めており、現在はα版をリリースして一部の顧客に向けた実証実験を行なっている段階です。今年中には、正式リリースを行なって、本格的な事業展開を進めていきたい…!
以前のnoteでも書きましたが、創業アイデア自体を一緒に考える「共同創業型モデル」で取り組んだ最初の企業がこのプレスリー。その後もこのスキームで複数のアイデアが進行中です。
株式会社usabit.(函館市)
もう一つご紹介するのが、つい先日プレスリリースを公開したばかりのusabit.!VTuberマネジメント事業を手掛ける函館発のスタートアップです。
えっ?VTuber?と思われるかもしれませんが、昨年のANYCOLOR社のIPO(新規上場)は記憶に新しく、VTuber市場は世界的にもこれから大きく成長する市場です。
5月に事業を立ち上げたばかりですが、既に複数名のVTuberさんに登録いただいており、ここからどんどん規模を拡大していく予定。
事務所的な役割に加えて、VTuberのコンテンツ・プロデュース提案などもできますので、気になる方はぜひ気軽にご連絡ください!
さいごに
以上、昨年大きな反響をいただいた「札幌・北海道スタートアップ地図」の2023年版でした!
毎年この取り組みを続けていくことで、定量的な数値の推移なども見えるようになってきて、より札幌・北海道のスタートアップの動向がわかりやすくなってきたのではないでしょうか。
私が北海道でスタートアップ支援をやろうと思い立ち、関係者ヒアリングを初めて行なった2019年の夏と比べると、札幌・北海道でのスタートアップの盛り上がりは隔世の感があります。ですが、私も多くの起業家も、挑戦はまだまだこれから。
本記事を読んで興味を持っていただけた方、起業したい方、起業かはわからないけど業界のこういうところに課題感を感じている…という方、ぜひご連絡ください!それがスタートアップ創業のきっかけになるかもしれません!
Mail:info@polarshortcut.jp
Twitter:@OkbNori
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