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私らしさを諦めて手に入れた私らしさ
私はずっと周りを気にして生きてきた。
でも、そのことに気づいていなかったし、自分で自分の性格を認めることもできていなかったと思う。
学生の頃、社会は不安でいっぱいの場所だった。
スーパーや飲食店でバイトをしてみても、どこかでつまずいてばかり。
「私は社会不適合者なんだ」と、本気で思っていた。
だから、せめて“ふつう”に結婚して家族を持てたら、それだけで十分だと思っていた。
最初に就職したのは、田舎に工場のある着物メーカーの設計部署。
周りはほとんど30歳以上年上の方々で、比べる相手がいなかったせいか、自分の立ち位置を気にすることはなかった。
でも、その後、結婚・出産を経て、仕事は在宅ワークに。
日々の人間関係は、同じく子育てをするママ同士の付き合いが中心になった。
同年代・同じライフステージの人ばかりの世界。
みんな、なんだかキラキラして見えた。
赤ちゃんのお世話でいっぱいいっぱいの自分が情けなく思えて仕方なかった。
そんな中で、世間はいつの間にか「ふつう」よりも「自分らしさ」を大事にするようになっていた。
「自分らしく生きるのが正解」みたいな空気に触れるたびに、私は焦った。
「自分らしく生きてる人は、きっと自信があるはず」という勝手な思い込みから、 自信のない自分がますます嫌になる。
とりあえず、自己啓発本を読んでみたり、「自分を愛そう」と発信しているSNSを見たりもした。
でも、いまいちピンとこない。
変わらなきゃと思うのに、何をどう変えればいいのかもわからない。
そんな中で、何かを変えたくて、流行りのパーソナルカラー診断を受けてみた。
「もしかしたら、外見を変えれば少しは気持ちが前向きになるかも」と思ったから。
私が受けた診断では、「しっくりくること」を大事にしていて、ファッションの前に性格診断があった。
そこで言われたのは、「あなたはファッションにおいても他人軸ですね」ということ。
薄々気づいてはいたけれど、改めて言われると「やっぱりそうなんだ」と納得した。
でも、アドバイスは思っていたのと違った。
「自分軸を持つのが大事」って言われると思っていたのに、そうじゃなかった。
「他人軸なら、周りに溶け込みながらファッションを楽しめばいい」
「身近な人が喜んでくれるものを着ればいい」
そっか、「自分らしく」なくてもいいんだ。
その考え方は、すぐにしっくりきたわけではなかった。
でも、なんとなく気持ちが軽くなったのを覚えている。
それから少しずつ、変わり始めた。
自分がほしい言葉を、自分から取りに行くようになった。
例えば、久しぶりに恩師に会いに行って「もっとどんどんやったらいい」と背中を押してもらったり、
友達に電話して、悩みを聞いてもらいながらアドバイスをもらったり。
少しずつ、少しずつ、「私は、人からの言葉で動くタイプなんだ」と認められるようになった。
それが分かると、自分の扱い方もなんとなく上手になった気がする。
「こうあるべき」と思っていた自分と、本当の自分との距離が、ゆっくりと縮まっていく感覚がある。
以前より、生きやすくなったかもしれない。