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こんな夜に

こんな夜に

「好きにして」100日後に始まるw杯どこが優勝するか。なんて他愛もない会話に躍るにはアルコールが足りないようだった。今持てる精一杯の笑顔を振り絞って、good byeそう言うと皆の顔がこわばったのを受け取りそれを部屋に残すようにドアを閉めた。「待って」と言う彼女の声は私には届いたが届いてない。私はロビーを出るとすぐさま、腰につけたケースから白い固形物を両耳に当てる。一人の男の私を呼ぶ声が何度もきこえたが、その場をさった。誰も追いはしないことに思うことは思ったよりなかった自分に少し残念な気持ちもなくはなかったが、続けて歩いた。歩いた。たまに両手を広げてみて、街中の街灯が自分に注いでるような気もした。頭から足の先まで音楽に満たされた。心地よかった。

私は今一人光に照らされたビーチの前で一人大柄な態度でベンチに腰掛ける。目の前を通り過ぎる人々は誰一人私に見向きもしない。私は外の音が聞こえない白い固形物で外の世界を遮断していた。海辺の人々も目の前を過ぎる人々も私にとっては一つの絵の中の話のようだった。冷静な心とは裏腹に私は汗をかいた。

そんなこんなで、さらに奥のベンチに移ると、友人がいた。知らない世界に知っている情報が入ると、現実に戻るので、私は移動することにした。丘へ向かう。夜風が吹いて、心地よかった。さらに奥へ進むと誰もいない海岸へ出た。

坂を降りながらも私は何も考えないようにした。考えることができなかったと言えようか。しばらく歩いて先ほどのビーチに戻ってきた。

彼らは海岸中央にいた。人を見つけるときに先に見つけられることはかなり珍しいことだった。柵を降り、二人に近づいた。歩こうという彼女。少し後ろを男と私は歩いた。「正直めんどくさい」そう彼に言ったのは、私だ。吹けば飛ぶ男のプライドだった。端の方に着くと、彼女は足を止め座り込んだ。私は男の横に行き、月を見上げた。ひどく美しい。それから男はさってさらに時間が経った。二つの影がまた一つになって、小さくなった。そしてまた二つになった影は、少し揺れ、、また重なってひとつになった。


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