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雨が降ると思い出す曲

雨ですね。
これからおそらく梅雨入りするのかな。

とかく嫌われがちな雨だけど、僕はわりと好きだったりする。

「家から一歩も出ない」と決めてる時に降る雨は、特に好きだ。
外の雨の音を聴きながら、本を読んだりコーヒーを飲んだり、時間帯によっては酒を楽しむ事に幸せを感じる。

「3月の雨」という、アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノヴァの超名曲がある。

エリス・レジーナとジョビンの囁くようなボーカルの掛け合い、抑揚をひたすら抑えた演奏、密度よりも「隙間」に重点を置いたかのような全体の空気感など、どれを取っても完璧としか言いようのない曲。

僕は、この曲を実は音楽専門学校時代に、授業の兼ね合いで初めて聴いた。

それもたまたま雨の日だった。

無機質で飾り気のない教室。室内の静寂と対比して、外は雨の音が弾くように一定のリズムでポツポツと音を鳴らしている。

イントロが流れた瞬間、空気を「奪取された」と言っても過言ではないくらい自分の中で冷静さが暴力的に失われた。
ミックスの帯域がどうとか考えるよりも先に、曲自体の魅力に取り憑かれ、分析など二の次になったことを思い出す。

授業が終わったあと講師に感動した旨を正直に伝え曲名を知り、帰りにタワレコに直行。
その後は狂ったように聴き続けたし、ボサノヴァをジャンルとして認識するための良いきっかけにもなった。今でも当時の講師には感謝している。

人はマスターピースとどのタイミングで出会うかは本当にわからない。

「3月の雨」も街中でしょっちゅうかかるようなスタンダードな曲だけど、自分にとって出会った時の瑞々しい感覚は、きっといつまで経っても色褪せないし、いつまでも特別な曲としての存在感は消えないだろうと思う。

雨が降ると、この曲を一番に思い出す。

今日はこんなところで。


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