「スキトキメキトキス」という呪文に魅せられたあの頃
昨夜は DOMMUNE で、小林泉美さんのプログラムを見ていた。
名前を聴いただけでピンとくる人は少ないかも知れないが、80年代のシティポップ、アニメソング文化において大きな足跡を残し道を切り拓いたシンガー・プロデューサーであり、歴史上外せない重要な人物の一人だ。
本人とご子息が自らMCを務めつつ、個人的な活動経歴やよもやまエピソードなどを次々と濃密に語っていく。
どれも資料的価値が高く、有意義な2時間を過ごさせてもらった。
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小林泉美さんのアニメソング代表曲と言えば、やはり『うる星やつら』の「ラムのラブソング」が真っ先に挙がるのだが、僕個人が雄す優勝曲としては『さすがの猿飛』の「恋の呪文はスキトキメキトキス」だったりする。
彼女の曲は、Aメロ、Bメロ、サビの印象が極端に変わる「セクションごとの展開の妙」が僕にとっての魅力だが、この曲においては、個人的にその真骨頂とも言えるアレンジが施されていると言え、当時、子供心に唸った記憶がある。
印象的なサビに始まり、第二楽章が始まったかのように落としきるAメロ、徐々にドラマチックなギアが入っていき、サビ前のブリッジまで盛り上げていくBメロなど、他の曲に比べ、この曲は自分にとって、壮大な "組曲感" を感じさせてくれた。
曲の実際の尺は短いのに、非常に長い時間聴き入ったように感じる曲は、僕の中では Beach Boys の『Good Vibrations』か、この曲くらいだ。
併せて「スキトキメキトキス」というポップなワードが、最後は 7/8 拍子で畳み込まれるプログレ的展開。魅入らない理由がない。
本人の印象そのままの感じで、奔放に作った感が非常に見受けられる、素晴らしい曲だなと今もなお思う。
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どの楽曲も、基本的にラテンやサンバのリズムをベースに、ヴィンテージシンセもふんだんに駆使しつつ作られたものばかりで、当時のアニソン業界的には相当異端だったそうだが、この人の楽曲が地上波でキャッチーに流れ出た事で、以降の文化に大きな影響を与えた功績は大きい。
本人は「ただ好きな事をやっただけ」だろう。
でも、プロほど「これはこういうもんでしょ」という気持ちではなく、枠に捉われず自分のソウルを全てぶち込む。その挑戦が結果的に化学反応を起こし、次の時代のスタンダードとして、新たなトレンドを築いていく。
壊れることで気づかされる事もあるのだ。
ポップ・カルチャーの源泉を紐解いていくたび出会う幸せな感情に、今回もまた触れる事ができた。
今日はこんなところで。
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