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アイスランド語の教材について
アイスランド在住の朱位昌併(あかくらしょうへい)です。
今回は、1)以前noteで紹介したアイスランド語教材についての補足と、その後に受けた、2)2)アイスランド語のワークブックはないか、という質問にお答えしたいと思います。
以前noteで紹介したアイスランド語教材についての補足
去年、以下の通りアイスランド語の教材を紹介しました。
後者「アイスランド(語)を読もう!(初・中級者向け教材)」で取り上げた『Árstíðir』という掌篇集のオーディオブックが4月に発売されていたので、その紹介をします。
このオーディオブックでは、計101篇の掌篇だけでなく、序文なども読み上げられているため、日常的な表現や易しい文章だけでなく、すこし硬い書き言葉のアイスランド語も聴くことができます。
読み手は、幅広い年齢層の男女それぞれ6人ずつの計12人で、なかには外国語としてアイスランド語を習得した人も含まれています。収録された多様なアイスランド語を聴くことは、国際化が進むレイキャヴィークそのものに耳を澄ませるようでもあるでしょう。
RÚV(アイスランド国営放送)などの番組でなく、アイスランド語で物語を読んだり聴いたりしたいのだ!という初学者に『Árstíðir』はおすすめです。
試しにどのように読み上げられるのか聞きたいのなら、オーディオブックのサブスクリプションサービスstorytelの下記画像をクリックして、書影の上の「HLJÓÐBROT」をクリックしてみてください。「まえがき(formáli)」を試聴できます。
また、storytelを用いるのでなく『Árstíðir』のオーディオブックを購入するのであれば、今のところ版元のウェブサイトのアイスランド語を読み解かないといけません。そこで最後に、本書の購入手順を手短に述べます。
まず、
1)商品ページで「BÆTA Í KÖRFU(カートに追加する)」をクリックし、
2)そのあと、商品と「FJÖLDI(個数)」に間違いがなければ、「GREIÐA(支払う)」をクリックし、
3)購入者情報を記載します。
必須なのは、「Netfang eða símanúmer(電話番号もしくはEメールアドレス)」、「Fornafn(名)」、「Eftirnafn(姓)」、「Heimilsfang(住所)」、「Borg / bær(市町村)」「Land(国)」ですが、国を一覧のなかにある「Japan(日本)」を選ぶと、「Póstnúmer(郵便番号)」の欄が追加されるので、それを入力すると、住所のうち市町村までは自動入力されます。
4)クレジットカードで支払いを済ますと、オーディオブックをダウンロードできるフォルダへアクセスできるようになります。
あとは、PCやスマートフォンでオーディオブックを楽しんでください!
アイスランド語のワークブック
初級文法の解説やオーディオブックなどのリスニング教材は手に入れたけれど、今は格変化などを身につけるためにワークブックが欲しいので何かよい教材はないか、という質問を受けました。残念ながら日本語ではありませんが、英語で書かれた教材あれば、以下の3冊をおすすめします。
その1:Guðrún Theodórsdóttir『Learning Icelandic – Grammar Excercises』
タイトル:Learning Icelandic – Grammar Excercises
著者:Guðrún Theodórsdóttir
出版社:Mál og menning
出版年:2016年
この本は、上記とは異なる装丁のものを使ったことがある人もいるかもしれません。第二言語としてアイスランド語を学ぶ人のための教材として、数年前までアイスランド大学でも使われていた本です。問題数が多く、何週かすれば「まず覚えるべき基本的な活用」を身につけることができるでしょう。
ただ、この本には文法解説などは載っていないので、姉妹本『Learning Icelandic』を参照することなどが必要です。版元では、2冊セットでも販売されています:https://www.forlagid.is/vara/learning-icelandic-pakki/
ちなみに、『Learning Icelandic』も、初学者用の教材として数年前までアイスランド大学で使われていました。ただ、文法の説明が充分でないところがあったり、掲載している表現がすこし古いなどの難点があります。初級文法を確認するためであれば、入江浩司『ニューエクスプレスプラス アイスランド語』をおすすめします。
その2:Stefan Drabek『Icelandic Grammar Step by Step – Exercise book (1st volume) A1 – A2』
タイトル:Icelandic Grammar Step by Step – Exercise book (1st volume) A1 – A2
著者:Stefan Drabek
出版社:Stefan Drabek - Isländisch lernen
出版年:2021年
この本は、著者であるStefan Drabek氏がドイツ語で作った教材(『Stefan Drabek: Isländische Grammatik Schritt für Schritt (1. Band) – Übungen』)の英語版です。単調な格変化の問題だけでなく、穴埋め問題や、短い英文氷訳や氷文英訳といった問題も掲載されており、とても充実しています。また、下記の商品ページで音声ファイルを無料でダウンロードすることもできます。
この一冊にくわえ、第2巻『Icelandic Grammar Step by Step – Exercise book (2nd volume) A2 – B1』も何週かした後は、初歩的なアイスランド語の格変化にくわえ、基礎的なアイスランド語の表現を習得していることでしょう。
タイトル:Icelandic Grammar Step by Step – Exercise book (2nd volume) A2 – B1
著者:Stefan Drabek
出版社:Stefan Drabek - Isländisch lernen
出版年:2021年
Stefan Drabek氏は他にも語彙を増やすのによいシリーズ本やカレンダーなども出版しているので、興味のある方は、彼のウェブサイトを覗いてみてください。
彼の文法解説書『Isländische Grammatik Schritt für Schritt (1. Band)』および『Isländische Grammatik Schritt für Schritt (2. Band)』もよい本なのですが、今のところドイツ語版しかありません。
おまけ:ドイツ語で書かれた教材でアイスランド語を学びたいなら
もし英語よりもドイツ語で書かれた教材でアイスランド語を勉強したい人がいれば、上述のStefan Drabek氏の教材の他にも、下記の本がおすすめです。
Ríta Duppler, Astrid van Nahl『Isländisch. Ein Lehrbuch für Anfänger und Fortgeschrittene』
タイトル:Isländisch. Ein Lehrbuch für Anfänger und Fortgeschrittene
著者:Ríta Duppler, Astrid van Nahl
出版社:Buske Helmut Verlag GmbH
出版年:2015年
多くの現代アイスランド語教材のように会話文が掲載されているだけでなく、ある程度の長さの文章が第1課から載っています。はじめは4行ほどの文章ですが、最後の第18課では丸々1ページのアイスランド語を読むことになるので、アイスランド語の口語だけでなく書き言葉にもある程度慣れることができます。ただ、コンマの使い方が、現代アイスランド語らしくないなど、すこし注意が必要な部分もあります。
アイスランド語を学びはじめる一冊として本書を用いることもできますが、文法が解説ないままアイスランド語の文章と会話から始まる構成のため、あまり自分に負荷をかけずに学びたい場合は、予め『ニューエクスプレスプラス アイスランド語』などで初歩を学んだあとに活用するのがよいでしょう。丁寧にやっていけば、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のB2程度までのアイスランド語を学ぶことができるはずです。
余談ですが、ここ最近のレイキャヴィークでは、晴れているときには芝生に寝そべって日光浴をする人をよく見かけるようになりました。とても夏らしい光景です。また、ヨーロッパからの観光客が徐々に増えてきていることもあり、大型バスが走る姿や、郊外で観光客を救助したことを報じるニュースなど、去年はなかったアイスランドの姿に、観光業界を中心として喜びの声が聞こえるようになってきました。
すこし前までほとんど貸切状態だった美術館に自分以外の来館者を見かけることだけでなく、カフェのテラス席でビールなどを笑顔で傾ける人々も、バカンスの訪れとともに増えてきました。
筆者がアイスランド語を学ぶことに決め、教材について調べ、その少なさに驚いた頃と比べると、アイスランド語を学んでみようとする人が、日本だけでなく世界各地で増えたように思います。もしかしたら、そのうちの幾人かにとっては、避暑のために訪れたアイスランドでの日々が心に残るものだったことが、アイスランド語を学ぶきっかけになったのかもしれません。
(文責:朱位昌併)