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桶狭間からダービー・そして菊の舞台へ|第69回京都新聞杯回顧

川田騎手の手腕に舌を巻くレースだった。

川田騎手が様々な面で高い技量を有することは疑う余地もないが、他の騎手と一線を画すのは、待ちではなく勝負になる展開に自力で騎乗馬を導く点だと思う。
今日のレッドジェネシスのレース運びは、そんな川田騎手の強みが凝縮された競馬だった。

勝負のポイントは、インに拘り、人気馬二頭(ルペルカーリア・マカオンドール)に対し終始アドバンテージを稼ぎつづけたことだろう。
外枠から流れの中でスムーズに中団インを確保するソツの無さ、その過程でマカオンドールを押し込める周到さ、いつでも動けるスペースを確保しながら運ぶ強かさ、早い仕掛けでレースを動かしたゲヴィナーをやり過ごすヘッドワーク。
レッドジェネシスの一つ後ろ一つ外を選択するしかなくなったマカオンドールや、ワンテンポ早く踏み込まざるを得なくなったルペルカーリアと比べると、その違いは歴然である。
一つひとつの貯金を積み上げた結果、直線を向いた時点ではほぼ勝負は決していた。

この日、川田騎手は4Rのミスフィガロでは向こう正面の直線区間で捲りを決めて三角以降はインを通って粘りこみ、10Rのジュンライトボルトでは果敢にインを強襲し、勝利を収めていた。
いずれも開幕週の馬場を味方につけた絶妙の立ち回りであるが、川田騎手だからこそ、苦しい状況を自ら打破して手繰り寄せられた勝利だった。


もちろん、それができるのは、川田騎手の手綱さばきに応えるだけの力と器用さと冷静さをレッドジェネシスが兼ね備えていたからでもある。


勝ちきれない時期も続いて出世が少し遅れたが、様々な形のレースを経験してきたことは間違いなく彼の力となっている。
一戦毎の消耗が大きい現代の競馬においては、最短ルートで本番へたどり着くことが理想形となりつつあるが、敗北の経験を重ねることは馬を骨太に育てていく。
起伏が大きくて距離以上にスタミナを求められる中京2200mで長く脚を使って勝ち切ったことは、ダービーや菊花賞を見据えても大きな自信となるだろう。


堪らないという感じでゴール板前でハナを奪ったルペルカーリアはゴール寸前でわずかに脚が鈍っての2着。
かかり気味にハナを奪う不本意な展開であったろうが、それでも直線一時は後続を突き放したように、非凡なフィジカルの強さは見せた。
直線でモタれた心身の弱さは言い換えれば伸びしろでもあるし、福永騎手が折り合いに苦労するのは、豊富なエンジンを積んでいる証拠でもある。
父モーリスのような成長曲線を辿れば、偉大なシーザリオの血をさらに高める活躍も期待できよう。

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