8分間を繋ぎ止める
私は映画を見るのが好きで、ちょっと苦手な夕飯作りも映画を見ながらすることで苦痛が和らぐので習慣になっている。
昔見たことがある映画も見直すと、こんな伏線あった?!この作品の本当の凄さを全く知らなかったな…と思うこともしばしば。
先日は「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を見た。
9.11でお父さんを亡くした男の子を描いているのだけど、テロによって失ったお父さんの遺体にも会えず、空っぽの棺でお別れをした男の子。
どこかお父さんの温もりが残っているような日々を過ごしていたけど、もうすぐその温もりも消えてしまいそうなことに不安に思い、お父さんのぬくもりのかけらを探していく。
この映画の中のセリフがとても胸に突き刺さる。
太陽の光が地上に届くまでに、8分間かかる。
もし太陽が爆発しても、僕らは8分間何も知らない。
それが地球に届くまでの時間、8分間は変わらずに明るく
太陽の熱を感じる。
男の子は「パパとのこの8分間が終わろうとしている」と感じる。
この気持ち、痛いほど良くわかる。
「8分間」それは、大切な人のと離別を、頭ではなくて、心で理解するまでの期間に例えられていると私は考察した。
私も母を看取ったのが2019年。
その年の大晦日から2020年に変わる時が、まさにこの8分間が終わる瞬間だった。
母を2019年に残し、私だけ新しい1年が始まる。
母が死んでしまったと言うことを、痛いほど心で感じた瞬間だった。
もう戻れない。もう会えない。
頭ではわかっていたことでも、心ではその事実をずっと拒否していたけど、認めざるおえない。あの瞬間、母が亡くなってから亡くなってからしんどいと感じたベスト3に入る。
だからこそ、この男の子がこの8分間が終わる前に、お父さんの温もりやかけら、思い出を探し繋ぎ止めようとする気持ちに触れて、私の胸に刺さっている棘がまだしっかりと残っているのを感じた。
大切なパートナーを失った人から「このとてつもない悲しみはいつか終わるのか」と聞かれたことがあった。
この人の未来に希望を与えるべきなのか、現実を教えるべきなのか迷って答えに迷ってしまった。
私の答えは、「正直、悲しさの重さは変わらない。ただ、それに耐えうる心の筋力がついて、最初に感じたとてつもない悲しみの重さを支えられるほどにはなって、少し余裕を持って他のことを考えたりできるようになった。そして、悲しささえも愛と思えるくらいにはなった。何も感じないよりも、悲しい気持ちと寂しい気持ちで、愛情表現しているという感覚に近い。」
この答えが、彼女の希望を抱かせたのか、絶望を抱かせたのかはわからない。
結局その作品の主人公である男の子は、お父さんの温もりのかけらを集めているつもりが、お母さんの愛情に包まれていることに気づく。最後は声を出して泣いてしまうくらい胸がいっぱいになった。
この映画は、どんな人にも見てほしい。
離別も死別も、きっと誰しもが経験する。いくら心の準備をしていても、実際に直面すると準備なんて何の意味も持たないと思わされるけど。
でも、大切な人が次の世界へ旅立った時、そこで愛は終わらない。愛し続けることはできるし、故人の愛もこの世界に残り続けることだけは知っていてほしい。