ラノベレビューサイトをオープンしようとしたら物議を醸した話。

はじめに

株式会社BookBase代表取締役社長 兼 ダンガン文庫編集長のオタクペンギン(社長)です。

先日、Twitterで発表させてもらいましたが、2025年の2月頃にライトノベルのレビューサイト『Book Review ver.β by BookBase』をオープンします。

https://lp.bookbase.jp/bosyu/reviwer

それに向けて、レビュワーさんの募集をしましたが、予想取り賛否両論様々な反応をもらいました。何の話題にならないよりは健全だと思いますが、こちらの意図や狙いがわからないという声もありましたので、noteでざっくりまとめようかと思います。

Book Reviewはどういうサイトなの?

BookReviewは言うなれば書評サイトのラノベ版みたいなものです。もしくは読書メーターをイメージしてもらえるとわかりやすいかと思います。

ライトノベルを読んだ人がその作品のレビューを書いて投稿する、というシンプルなものです。

ただ、誰でも書けるなら読書メーターで良くない?という話で、このサイトが他とは異なる点として
①レビューを書くと1本3000円の報酬がもらえる。
②レビュワーになるには、運営の審査があり、それに合格しないといけない。
③レビューの対象になる作品はリストがある。(レーベル横断型)
④レビューの質を追求&忖度なく読者のためのレビューを書ける環境をつくる。
⑤レビュー自体は運営側で検閲せず、レビュワーに任せる。

となっています。
なぜこの形態にしているのか、っていうところを中心に突っ込んだ解説をしようと思います。

Book Review立ち上げの背景

このサービスを立ち上げた理由はいくつかあります。

まず1つは、面白いラノベを探すのが現状だと難しいなと感じていることです。
Twitterや読書メーター、Youtubeなど、読んだ人がレビューをしてくれたり感想を上げてくれているところはいろいろありますが、媒体としてレビュー用のサイトというわけでもないので網羅性に乏しかったり、ほしい作品のレビューがなかったりと、利便性の部分で不満がありました。
また、レビューの質が担保されているわけでもなく、レビュワーの背景も様々で信頼できるレビューを探すこと自体にかなりの労力が必要だったりして、気軽に探すというのが難しいなと感じています。

さらに書く側としての個人的な不満なんですが、忖度なく作品レビューを書ける場がないというのがあります。

僕は読んだ本の感想やレビューはなるべく言いたいんですが、ちょっとでも批判的に書くと、それ自体が問題になったり、著者さんたちに見られる可能性があります。

なので、★4〜5とかの良い作品はレビューも書きやすいですが、じゃあ★1〜3のものは書けないとなってしまいます。でも、継続的に見てくれている人からすると、『この人、どれ読んでも褒めてるな。ちゃんと読んでないんじゃない?』と思われる可能性が高いです。

実際、僕は編集者なので担当作品の反応は見に行きますが、その方の過去投稿をさかのぼっても『めちゃよかった!』と『よかった!』しかないと『よかった!』のほうは良くなかったんじゃないかとか、邪推しちゃうんですよね。

レビューはなにかを買うときの一押しになったり、最初の興味を抱く理由になったりと恩恵はとても大きいわけですが、それもレビューへの信頼があってこそであって、テレビとかでも食レポならなんでもうまい!っていう人の言葉か、『いや、これは正直微妙だよ…』っていう人の言葉なら後者を信じやすいのは人の心理としてあります。

ただ、現状のSNSではすべて赤裸々に書くのは難しく、特に僕らのような編集者やプロの作家さんなどなど普段から創作に携わっているからこそ、忖度なく作品をレビューするというのは難しい状況にあります。

読者として...といっても、やはりレビューを見る人にはバイアスになるわけで……。
こういった探す側と書く側の両方の観点から、こういうサービスほしいなぁと僕は思ったので、作ってみようというのがざっくりしたきっかけになります。

忖度なく、とはなにか

今回の告知の反応で『忖度なく』というのが、様々な受け取られ方をしていたので補足します。

忖度なく=何を言っても良い、とかでは全くありません。当たり前ですが。
Web小説の投稿サイトなどでは、明らかに書き手を侮蔑したり、傷つけるために書かれているようなひどい感想もありますが、ああいったものはそもそも感想やレビューとも呼べない、ただの暴言です。

そういったものを書いてほしいというわけでは断じてなく、ちゃんと作品に対してフラットに評価をして、作品に対して書こうという話です。

もちろん、面白くなかった作品に対して、面白くなかったというのはOKです。ただ、ちゃんとどこでそう感じたのか、なぜそう感じたのかまで言語化してもらうところまでが前提となります。

Web小説と事情が違うところとして、そもそも今回のレビューサイトは対象が『商業出版されている本』であり、お金を出して買われたものに対してのレビューです。
これは僕らが出版社だからこそ思っていることですが、お金を出してもらう以上、面白くなかったと言われることは許容せざるを得ないとも思います。

様々な本が発売されるなかで、相対的に面白い本とそうじゃない本は当然ありますし、そのなかで面白さを競っているわけですからね。

作っている側も、『読んでみてもらわないと評価はわからない』ということはよくありますので、そこへのアンサーとして読者さんが感じたことをなるべく純度を下げずに伝えることが『忖度ないレビュー』だと思っています。

今更レビューサイトなんて見ねぇよ

先日のお知らせや今回のnoteを読んで、『レビューしかないサイトなんて誰が見るんだ』とか『今でも個人サイトとかあるし、Xの別垢でやればいいだろ』とか、色々反発される声も見かけました。

これも当然の反応で、僕も今現在として、レビューを読みたい!とか書きたい!っていうニーズは大きくないと思ってます。

理由として
・ラノベを能動的に読んでいる人がそもそも少なくなってしまった。
・『レビュー』というものへの信頼度がそもそも低い。
・レビュワーとして影響力を持った人がいないので、なりたい!という願望が生まれにくい。
・レビューのインセンティブがなさすぎて、レビューを書く発想が生まれにくい。

他にもあると思いますが、ざっくりこんな感じかなと。
読者側としてはレビューの恩恵を受けた自覚的な経験が少ないわけですし、書く人はそもそも少ないので、こういったレビューサイトに対して懐疑的な声を上げるのは普通だろうなと思います。

だからこそ、このサービスをつくる意味があると僕は考えています。

回っている水車は逆には回転しない

なるべくですが、レビューや感想というのは読んだ人たちが自発的にやるべきことで、出版社や創り手が扇動するべきではない。という思想もよくわかります。というか、そう思います。

ただ、じゃあほっとけばええやんって話なのかというと、誰も何もしなければ変わらないという問題もあります。

僕が普段関わっている方でも、精力的にラノベの感想をSNSに流したり、ブログで発信されている方はいます。めちゃくちゃ頑張っているのも知ってますし、出版社側としてはとてもありがたい存在です。

ただ、そういう熱心な方でもやめていくことはよくあります
レビューを書くというのは、ちゃんとやろうとすればするほど大変ですし、一朝一夕ではいきません。ただの感想なら、面白かったでいいですが、この作品の何がすごいのか、どうすごいのか、どこが駄目なのか、そういう観点で語るには、それぞれのジャンルの変遷を知っておかなければならないですし、それを言語化していく能力も要求されます。

それを本業やプライベートもあるなかで、やり続けるのはなかなか難しいと思います。
今回のサイト立ち上げにおいても感じたのは、多くの人がそういった方々のレビューの存在すら知らないということでした。

動画プラットフォームでラノベ紹介などをされている方でも、ラノベだとPV数を稼げないからマンガのほうに行ったという方も知ってますし、情熱だけで続けていくには限界があるのだと思います。

こういう状況のなかで
レビューへの信頼が少ない

レビュー書いても反応がない

レビューを書く人が減る

レビューの恩恵が減る

へビューへの信頼度が下がる

というような循環が緩やかに回り続けることになります。
これが自然に逆回転になるのかというと、そう簡単な話でもないですし、今の出版市場が自然発生を待てるだけの余裕もないと思います。

だからこそ、苦肉の策として無理やりインセンティブを付与する形にしました。

レビューに報酬をつける

レビュワーが増える&質が上がる

レビューを見る人が増える

レビューの恩恵を実感する人が増える

レビュワーが増える

という形ですね。
とはいえ、このインセンティブ設計もどこまで長く持つかはわかりませんし、どれだけ見てもらえるようになるかは運営側としての努力も求められると思います。

実験的ではありますが、こういった取り組みを実験すらやらないよりは身銭切ってやるほうが前向きだと思います。

1本3000円で、毎月100本ほどのレビューが集まることを目指そうかなと思ってますが、これも十分な量かはやってみないとわかりません。

ちなみに何度も言ってますが、これ単体では黒字化は無理だと思っています。とはいえ、じわじわ伸びて、一定の熱心なラノベファンが集まって醸成されるようになれば、ここで生まれる熱量がラノベ全体にとってプラスになってくれるんじゃないかという希望は結構あるので、やる価値は高いと思っています。

なにより、好きなものに対してああだこうだ言いながら、おすすめし合ったりできる場所ってそれだけで面白いと思うので、ぜひぜひご参加ください。

最後に

というわけで、つらつら書きました。
本当に反応は様々で、肯定的な意見もあれば否定的な意見もあり、僕も参考にさせてもらっています。
クローズドにする意味がわからない、というような声もありましたが、オープンな場所はディープにはならないですし、すでにあるプラットフォームにはそれぞれの歴史と文化があるわけです。僕らが求めている文化と、そこにある文化は同じではないので、相互ためにも区切られた世界が必要なときがあります。

そして、レビューの重要性はとても大きいもので、一般文芸のほう、特にミステリーですが、あちらは『けんご』さんという小説を紹介してくれるTiktokerさん(Youtubeもされてます)の影響がかなり大きく出ていると思います。

ラノベも多くの作品が発刊されるなかで、どうしても読者さんに上手く魅力が伝わらないまま店頭から姿を消した作品が多くあります。
面白い作品に出会えないというのは、創り手側にも読み手側にも不利益となります。

そういった不利益や機会損失を少しでも無くしていければと思っています。

それこそ、このレビューサイトをベースにして、動画プラットフォームについてもなにかできればと思っています。
弊社のリソースがある間に、できる限りの試行錯誤ができればと考えていますのでぜひぜひご参加いただけると幸いです。


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