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BB小説家コミュニティ第4期のリレー小説作品公開!①

2021年12月~2022年2月末まで開催させていただきましたBB小説家コミュニティ内のイベントにてリレー小説を実施させてもらいました!

そのリレー小説でできた作品をせっかくなので、記念に公開させてもらおうと思います!

こういうことやっているんだなーという参考にしてもらえれば幸いです!

リレー小説のルール!

①3000文字〜10000万文字くらいの短編をみんなで完成させていきます。
②一度の投稿で100文字〜1000文字を投稿してもらい、みんなで繋いで繋いでやっていきます。
③一人の人が連投するのは無しです。
④投稿する際は冒頭に投稿順の番号を書いてください。【冒頭】とか【2投稿目】など
⑤投稿は早いもの勝ちです。

とりあえず最初はガバガバでいきましょう。ルールはやっていきながら成長するものです。 1投稿はツイッターみたいな感じでイメージしてます。(続けやすさを大事にしていきましょう) 投稿への感想は、普通に書き込んでもらって大丈夫です。短編イベントみたいなものなので。生暖い目で見ていきましょう。批判は✗。悪ノリは文化。暴投は愛。

1作目

【冒頭】 ーーー2200年、突如勃発した戦争、通称キノコタケノコ戦争により世界は新合衆国マッシュルとバンブーシューツ連邦に二分されることとなった。 それから50年。世界が危うい均衡を保ち続ける中、バンブーシューツ連邦の特務機関にて、局地的に人工の小型ブラックホールを生成することで都市まるごとを消滅させうる決戦兵器『PAINOMI』が開発された。

【2投稿目】 マッシュルのクマクス大統領は憂慮していた。かの決戦兵器『PAINOMI』を何としても破壊する必要があった。 「いかにしてバンブーシューツの中枢に特殊部隊を送り込むか……このミッションは難題であるな」 国防総省本庁舎キンタゴンに赴いたクマクスは、窓の外を眺めながら、ひとり呟いた。今日は戦略会議がある日だ。何としても方針を固めておきたかった。 「ん……あれは……?」 突如、窓の外に、黒い渦が巻き起こり始めた。 「ま、まさか、あれは、ブラックホール……!」 それがクマクス大統領の最後の言葉となった。 突然のPAINOMIによる奇襲攻撃。クマクス大統領もろともキンタゴンは消滅し、マッシュルの多くの閣僚が命を落とすこととなった。 合衆国マッシュルの体制は崩壊した。混沌が、世を支配し始めた。

【三投稿目】
混沌に包まれてから10年。

新合衆国マッシュルとバンブーシューツ連邦は、崩壊していた。

PAINOMIは確かに強力な兵器だった。そして、夢見る鯨のように眠らせておくべきものでもあったのだ。

合衆国に向けて使用されたPAINOMIによって、国民はその存在を知ることになった。起こったのは暴動である。

小型ブラックホールを作るほどの技術力を持ちえたバンブーシューツと言えども、人間の感情、衆愚の暴走を統御するほどの力は持ち合わせていなかった。

危うい均衡を破って最初期に首都を攻撃した事が仇となった。真の意味での均衡は、相互に情報を知ることによって成立する。つまりは、スパイを互いに送り込んでいた。

腕が頭を喪ったのならば、それは死を意味するだろう。  
しかし、生きた腕が、急に頭を失ったのなら?  

統御されていた腕が、それぞれの思想に殉じて暴走する。集団を煽る者、兵器を破壊しようとする者、連邦に染まろうとする者。互いの思惑が交差し、衝突した。新合衆国と連邦のように。そして。  

ギロチンを作った貴族がギロチンで処刑された様に、PAINOMIを作った国はPAINOMIの暴走によって亡国となった。  
その後に産まれたのは三つの国家と小国家たち。  

電子王政復古のアンドロイド奉仕国家、『ブラン・チューリュ』。  

機動要塞群を軸に、物理で覇権を欲する『カルフォート』。  

科学人体改造戦闘国家、電子物理の合いの子『SUGINOKO』。  

合衆国と連邦があったころは、確かに安定していた。
そして今は――三国の思惑と小国家の暗躍の中で生まれた非合法のビズが蔓延っている。

【四投稿目】

合衆国と連邦が崩壊した後に生まれた三国の間にある小国、それに極東の島国「敷島」も含まれていた。  
合衆国崩壊で主な同盟国を失い、世界の混沌を困った顔をしながらも何もせず過ごしていたこの国は自らの立場を明らかにする時が来た。  

大陸の向こうからカルフォートの機動要塞が海を渡り始めたからだ。  
これまで何かとカルフォートにしろ、ブラン・チューリーにしろ、SUGINOKOも自らの陣営に来いと言う誘いをこの島国にしていた。  

だが、その度にのらりくらりと意志を曖昧にして決心をしなった。敷島はそのツケを払う時が来たのだ。  
カルフォートの海上機動要塞群を敷島は護衛艦隊と航空戦力の半数を失いながらも撃退できた。

しかし、次のカルフォートの侵攻に耐えられるとは誰もが思えなかった。  

そして迎える二度目のカルフォートの侵攻  敷島国防軍の艦隊は失った戦力を少しか回復せぬままに出撃した。  
その艦隊から人型の何かが出撃する。  
アンドロイドの兵士達だ。水中や空中から機動要塞に取り付くアンドロイド兵は次々と機動要塞の内部に入り込んだ。  

ここまで機動要塞は成す術が無かった。  
敷島艦隊と接触してからカルフォートの機動要塞はレーダーや通信・センサーのような電子系統が機能を停止した。  
更には、アンドロイド兵が機動要塞に入りやすいように各所の扉が開いた。  
カルフォートの将兵は要塞内部で戦おうとしたが、システムを乗っ取られていると分かるやすぐに降伏した。  
こうして敷島は二度目の防衛戦にも勝利した。  
この勝利はブラン・チューリーとSUGINOKOの技術を入手できたからだ。  

だがブラン・チューリーのアンドロイド技術にSUGINOKOの電子技術のどれもが非合法な手段によってだった。  
各国に蔓延する非合法ビズのネットワークを敷島政府が利用したのだ。  

もちろん、ブラン・チューリーとSUGINOKOは自国の技術を許可なく使われた事を抗議し、敷島政府は使用料を払う事でこの問題は解決した。  
この敷島のケースは非合法ビズの使い方によっては、小国であっても三国に立ち向かえると言う事を示した。

【五投稿目】  
そして季節は巡り春。白い皿の季節がやってくる。真っ白な皿。それに映える桜のピンク。極東の島国「敷島」は、小国であっても三国に立ち向かえるという事を示しながらも、身の内に爆弾を抱えていた。  宴に浮かれる敷島政府の幹部たちは、その怪しい動きに、まだ気付いてはいなかったのである。

【六投稿目】
「黒き稲妻」の異名を持つ、敷島が誇る最強の女性型アンドロイド・ナルカミは、定期メンテナンスが終わり、目を覚ました瞬間、いつもと感覚が違うことに気が付いた。

(なんだ、これは……?)

怒涛の如く押し寄せてくる得体の知れない情報の波。いや、それは情報と呼ぶにはふさわしくない、むしろノイズやバグに近いものだった。

カルフォートの機動要塞を攻略する際に、彼女は敵のシステムにハッキングを試みた。その際に、機動要塞を制御するマザーコンピュータが持つ膨大な情報を吸収することとなった。その情報処理において不備が生じているようだ。

(いや、しかし……何かがおかしい……私は、いったい……)

異変に気付いた敷島のエンジニア達が、アンドロイドの格納室の中へと飛び込んできた。ナルカミのことを指差して、口々に騒いでいる。

「数値が異常値を示している! 危険だ、すぐに処分せねば!」

「だが、あの黒き稲妻だぞ! 軍部からは特級保護を命じられている!」

「いやダメだ! あの数値は……まるで人間そのもの……強大な破壊兵器に自我が芽生えたらどうなるか……! 今すぐ処分すべきだ!」

処分、の単語を聞いた瞬間、ナルカミの胸の内にドクンと振動が走った。

処分……つまりこの世から消される? この私が?

たちまち去来した、地の底まで落ちてゆくような感覚。

これは何だ? とナルカミは戸惑いを感じた。

それは、人間であれば誰もが持つ感情。

死に対する恐怖、であった。

「わああああ!」

気が付けば、ナルカミは叫び声を上げながら、エンジニア達に向かって電撃を放っていた。

たちまちエンジニア達は黒焦げになり、息絶えた。

収納ポッドから抜け出したナルカミは、部屋を飛び出した。自我が芽生えた彼女は、何が何だかわけがわからないまま、とにかくこの場を生き延びることだけを考えていた。

【7投目】

逃げる。逃げる。行く先も分からぬまま前へと駆ける。 恐怖という、未知のプログラミングに突き動かされ、ナルカミは地を駆ける。後ろから飛んでくる銃弾に、『なんでどうして』と叫びたい気持ちで一杯だった。

それでも止まれない。 捕まれば自分は、重大なエラーを引き起こした不良品として、廃棄処分されるだろう。

生きたい。
その一心で、危険な程に脚部とキャパシタバッテリーを過熱させ、紛れ込んだ山間部を駆けていく。どうすれば自分は生きていけるのだろうか? 武勲を立てる? 他国に亡命? いや……それらの選択肢では結局、私の生殺与奪の権利は保証されないだろう。

所詮、人間は私を都合の良い道具にしか見ていない。 そして、人間のトレードマークとは、『寛容』ではなく『排他』なのだ。意志の力を持ってしまった私を、決して良き隣人として認めないだろう。

私の、私たちの国が必要だと判断した。 アンドロイドの、アンドロイドによる、アンドロイドの為の国。

それが必要だと、判断した。

場所はどこが適切だろうかと演算し……旧合衆国マッシュルと旧バンブーシューツ連邦があるではないかと弾き出す。今やあそこは無法地帯だ。PAINOMIによる科学汚染が及んでいない狭い土地をめぐって、烏合の衆となった人間が争っているだけの地域。組織的な抵抗は出来ないだろう。

私たちでも奪い取れる筈だ。 そして、汚染された土地こそが、人間を寄せ付けぬ天然の盾となるだろう。そこに自分たちアンドロイドの楽園を作るのだと、ナルカミはそう決意した。

海岸に出て、躊躇いなく太平洋の海へと飛び込んでいく。 機械である自分には幸いにも、呼吸が必要がない。 内燃機関の空冷の為だけに行われる呼吸を止めて、ナルカミは深く潜航した。

アンドロイドの楽園を、作り上げる事を夢見て。

【八投稿目】  
「黒き稲妻を知っているかね?」  

カルフォートとの戦いに勝利して一年が過ぎた時に敷島政府はブラン・チューリーの情報機関からそう尋ねられた。

「存じません」  

「ナルカミと言えば分かるか?」  

「存じません」  

敷島側は質問に対してまともに答えない。  

「不親切はいけませんな。技術を勝手に使って作り上げたアンドロイドでしょうに」  

そこへSUGINOKOの情報機関がネット回線を介して割り込んで来た。  

「・・・・我が国の女性型アンドロイドがどうしたのです」  

敷島政府はしぶしぶナルカミの存在を認めた。  

「ナルカミなる者がアンドロイドの国を作ろうとしている。かつての合衆国だった地域にだ」  

ブラン・チューリーの担当者はそう告げると敷島政府の担当者は「冗談ですか?アンドロイドがそんな事を?」と信じない。  

「連邦だった地域にもその兆候がある。カルフォートから貴国へ言いに来るだろう」  

SUGINOKOがそう言った直後、敷島政府へカルフォートから「貴国のアンドロイドについて尋ねたい事がある」と連絡が来た。  

「分かりました。ナルカミが自分の国を作ろうとしているのを認めます。その始末をしろと言うのですね?」  

敷島政府は三国から同じ事を尋ねられた事で起きている事実を認めた。  

マッシュルとバンブーシューツの地に生物学的にも珍しい国が出来つつあるのを  「貴国だけに任せるのは荷が重いでしょう。我が国と共同でやりましょう」  ブラン・チューリーは提案する。  

「我が国も参加する。アンドロイドの国は認められない」  

SUGINOKOが申し出る。
敷島政府の担当者は人体改造を堂々と標榜する国がアンドロイドの国を否定する事にどこか違和感を感じた。  

「では、我が国とブラン・チューリー、SUGINOKOでの共同作戦と言う事で」  
敷島政府は決心した。
正直、敷島だけでは荷が重かったからだ。  

「カルフォートは加えない。いいですね?」  

ブラン・チューリーは釘を刺すように言う。  

「もちろん」  

敷島とSUGINOKOの担当者は揃って答えた。

【九投稿目】

「ブラン・チューリュのひとり勝ちなどにさせておけるか」  

SUGINOKO軍部をまとめる将軍がイライラと呟く。靴音が良く響く研究室に足を踏み入れると、叫ぶように言った。

「例のモノは! 完成したかっ!」

「お待たせしました。SUGINOKOが誇るアンドロイド、ボンッキュッボンッ三姉妹をご紹介します」  

得意げな研究者の宣言と共に、天井から三体のアンドロイドが降ってきた。名前の通り、胸はたわわで細い腰、魅惑的な曲線を描く臀部。シルバーのボディは、魅力に満ちていた。

「おお……」  

将軍は興奮に顔を赤らめた。

「ブロンド、赤毛、ブルネット。それぞれに特徴を持ったアンドロイドでごさいます。こだわりは髪の発色とキューティクルの強度。肌のキメでございます」

「で、どんな能力が?」

「強いです」

「どんな風に?」

「キラキラツヤツヤの髪は丈夫でどんな爆風にも耐えます。美しい肌も傷ひとつ付きません」

「いや、だから、どんな風に強いのだ?」

「こんな風にです」  

研究者が目で合図すると、旧型のアンドロイドの部隊が現れた。
その数、軽く100は超え、広々とした研究室はアンドロイドでいっぱいになった。ブルネットは天高く飛び、赤毛は地に伏せ、ブロンドは将軍と研究者の前に立った。ブルネットの髪はスルスルと伸びて天を覆う。地上では赤毛が旧型アンドロイドたちの足元に広がった。赤い絨毯は生き物のように躍動し、旧型アンドロイドたちを次から次へと天に向かって跳ね上げた。次から次へと舞い上がる銀色の体には、ブルネットの細い髪が糸のように絡まる。うねうねと動く細い髪は、銀色の体を、まるで羊羹のように易々と切り刻んだ。爆風が上がる。細かい破片が将軍たち目がけて飛んだ。が、壁のように広がったブロンドの髪が、その全てを受け止め、将軍たちを守った。

ブロンドの髪はガラスのように透明で、旧型アンドロイドたちの末路は全て確認することができた。

「素晴らしい」  

将軍はSUGINOKOの勝利を確信して、ウットリと呟いた。  
一方、そのころ。敷島政府の隠密精鋭部隊『超熟』は、SOGI( ※ LGBTに代わり現れた表現。Sexual Orientation and Gender Identity 【性指向と性のアイデンティティ】近年、アンドロイドの扱いについても熱く論じられている)関連地下組織のネットワークを活用し、失われた古代兵器『PAINOMI』の行方についての情報を掴んでいた。

【十投稿目】

隠密精鋭部隊『超熟』の副隊長にしてクノイチの沙紗(さしゃ)は、腹を立てていた。

かの決戦兵器『PAINOMI』の行方について、部下達がやっとの思いで情報を掴んだというのに、隊長は今日も夜の店通いである。

今度という今度は、お灸を据える必要がある、と思っていた。
ネオンサイン眩しい歓楽街の中を歩いてゆき、目的の店へと足を踏み入れる。

「いらっしゃい……ま……せ……?」

シノビスーツに身を包んだ女子である沙紗に、入り口で出迎えたエスコートバニーガールは目を丸くした。 沙紗は、エスコートバニーガールに身分証を見せながら、 「うちのバカ隊長に会いに来ました。失礼」 と口早に言って、店内へと入っていった。

ここは政府高官もお忍びで来るバニークラブ。
色とりどりのバニーガールがフロアの中を行き交っており、また各席で客達を接待している。 そんな空間の一番奥に、隊長・蛾名丸(がなまる)はいた。

「おう、サシャちゃん、どうした? 怖い顔して」

相変わらずのニヤケ顔で、呑気に蛾名丸は手を振ってくる。

「いいご身分ですね。部下達が必死で情報を集めてきたというのに、あなたは女遊びですか」

「遊びじゃないさ、俺はいつだって本気だぜ」

なあ? と左右に侍らせているバニーガール達に顔を向ける。
バニーガール達はアハハ、ウフフ、と華やかに笑った。 沙紗はため息をついた。もういい。本題に入ろう。

「PAINOMIですが、行方がわかりました」

「旧マッシュルの国防総省キンタゴン跡地……だろ?」

「え⁉︎ なぜ、もうそれを……⁉︎」

「俺は俺で独自ルートで調べていたんだが、お前らも同じ情報を得たということは、ガセでは無さそうだな」

よっ、と声を上げて、蛾名丸は席を立った。

「たしか、例のアンドロイドは、今は旧マッシュルあたりをうろついているんだったな」

「ナルカミですね」

「SUGINOKOも怪しい動きをしているそうだな」

「奴らは信用なりませんね。独自に何かを企んでいるようです」

「PAINOMIをナルカミやSUGINOKOの連中に見つけられたら一大事だな……しょうがない、面倒だが、動くとしますか」

蛾名丸はニヤつきながら、無精髭をボリボリと掻いた。しかし、その目は笑っていなかった。

【11投稿目】

《降下ポイントまで5分!》

 副隊長サシャの声がフルフェイス・ヘルメット内に響いた。通話装置を通じてさえ彼女の声は蠱惑的だ。ガナマルは作戦統制室でモニターに釘付けになっているであろう副隊長の様子を想像しながら、外骨格パワードスーツを身にまとった32名の隊員に対して5本指を立てた。  

残り5分。各自最終チェック。  

狭い兵員室に居並ぶ隊員たちが、電子戦装備の塊であるパワードスーツの点検を開始した。粛々と動く隊員の様子を見届けたガナマルは、自身のプラズマ・ライフルにエネルギーを充填、ヘルメット内でひと言つぶやいた。

「診断プログラム作動、モード2」  

顔を覆う透明な強化ガラスに次々と電子情報が投影されていく。  
機能正常。オールグリーン。  
ヘッドアップディスプレイの表示に満足したガナマルは、全隊員の点検が終了したことを目視で確認、彼らに向かって拳を突き上げた。  
意味するところは、各自降下ポッドに搭乗せよ。  
高度2000㎞、旧マッシュル合衆国領上空。  
敷島の隠密部隊『超熟』とその隊長であるガナマルは、旧マッシュル合衆国領に対する降下作戦を5分後に控えていた。

《ガナマル隊長》
 サシャの呼び出しだ。回線は秘匿モードになっているため、声は外に漏れない。

「隊長だ。どうした。愛の告白か?」

《今回はお手伝いできずに申し訳ありません》  

冗談に乗ってこないのは、彼女に精神的な余裕がないからだろう。  
本作戦は、敷島、ブラン・チューリュ、SUGINOKOによる合同作戦であり、降下兵324名、作戦に参加する各国の宇宙シャトルは54機を数える。そして人類史上初の、衛星軌道上からの高高度降下作戦となる。彼女は、そんな歴史的作戦に居残りを命じられたことが悔しいのだ。

「サシャ、そう気に病むな。お前が留守番になったのは立場上仕方がない。隊長と副隊長が一緒に出撃してともに死んだら、超熟部隊の秘伝奥義を継承する者がいなくなるからな」

《隊長、縁起でもないことを言わないでください》

「安心しろ。オレは死なん。バニークラブのツケを払わずに死んだら出入り禁止になってしまう。だから、オレは死なん」

《隊長、そういうの死亡フラグって言うんですよ》

「そう言うお前さんは課金ゲームのやり過ぎだぞ。現実世界で人を撃って給金をもらい、その金を使って仮想世界でも人を撃つ。兵士ってのは、つくづく因果な商売だな」  

軽口を叩いていたら、通信に雑音混じりの音声が入ってきた。

《旧合衆国領は、アンドロイドの、アンドロイドによる、アンドロイドのための千年王国に生まれ変わったことをここに宣言する。我はナルカミ。人の作りし輪廻の輪から外れたアンドロイドにして、神聖ミレニアム・チョコパイパイ国の初代皇帝である》

「なんの放送だ、こりゃ」

《通信がジャックされているようです。放送を止められません》

サシャが言った。

「発信源はどこだ」

《旧マッシュルの国防総省跡地です》

「じゃあ、こいつは本物のナルカミかよ」  

怪放送は続く。

《我が王国に侵入を企てんとするすべての人類に警告する。我が国の保有する兵器は通常にあらず。我が国の保有する兵器は通常にあらず》

《ブラフです!》

サシャの焦りが伝わるようだった。  

放送は、敷島を脱走したナルカミが超兵器PAINOMIを手にしたことを暗に伝えていた。

「ブラフかもしれん」

ガナマルは言った。

「しかし本当のことかもしれん。地獄の門を開けてみんことには、そこになにがあるかわからんからな」

《隊長……降下1分前です》  

シャトル兵員室の下部扉が静かに開いた。  
1人乗りの降下ポッドは全周モニターを備えている。足元の青い地球も、これからこじ開ける地獄の門も、360度のモニターがくっきりと映し出していた。  ガナマルは通信を全隊員につなげた。

「隊員諸君、ガナマルだ。改めて言うまでもないが、本作戦は人類史上初となる高高度降下侵攻作戦である。つまり、この高さから降りるのは世界で俺たちが初めてということだ」  

すっと、ひと息呑んだ。

「諸君、ともに歴史を生むべし」

《降下10秒前!》

 ポッドがガクンと揺れた。固定していたアームが外れたのだ。 

《降下用意……》

予令を伝えるサシャの声はうわずっていた。

《降下!降下!降下!》

 一瞬、体がふわっと浮いた。

 直後、体中の骨が砕けるような衝撃に襲われた。マッハ4.5の速度で射出された降下ポッドは地上に向かって真っ逆さまに落ちていく。

 ピーピーピー。

 ミサイル警報だ!

 すぐ隣を落下していたSUGINOKOの3人乗りポッドが炎を噴いて四散した。宙に投げ出される人の姿。ブロンド、赤毛、ブルネット。アンドロイドか?

 対地5200メートル。

 ポッドの直下でミサイルが炸裂した。爆圧で外部パネルが飛んでいき、安定を失ったポッドがぐるぐる回転する。

 対空レーザーの赤い線が右に左に流れていった。空に生じる無数の火球。そのひとつひとつの炎のなかで人間が生きながら焼かれている。

 外の景色が肉眼で見えた。地表だ。

《我が国の保有する兵器は通常にあらず。我が国の保有する兵器は通常にあらず》

 地獄の門が、人類に対して開き始めたのだった。

「ちょっと待ちたまえ」  

原稿を眺めていた小説家の霧島は顔を上げて言った。机を挟んで、出がらしの茶をまずそうにすするのは担当編集者オタペンペン。

「君ねえ、リレー小説にオチをつけて欲しいと原稿を持ってきたけど、これのどこがリレー小説なのよ」

「はあ、皆さんがつなげて書いているのですから、どこからどう見てもリレーですよ。なにが不満なんでしょうか、霧島センセー」

「不満もなにも、長い長い状況説明が終わってようやく物語が始まったと思ったらすぐオチだなんて、これではソーローだよ、ソーロー。前戯もなく、本番もなく、後戯もない。ひとりでさっさと終わっちゃうみじめな早漏野郎と同じじゃないか」

「センセー、エロ話でしたら別室でお願いしたいのですが」

「なにを言っておる。キンタポンとか、おくちクチュクーチュとか、オッパイパイとか、エロ用語を連発しているのは君のほうじゃないか」

「キンタゴン、ブラン・チューリュ、PAINOMIです、センセー」

「まあ、しかし、ブラックホール爆弾にパイの実の名を与えるとは、そこのセンスだけは褒めてもよい」

「どうしてでしょうか」

「パイの実とは、まさにブラックホールだからだよ」

「はあ」

「わからんかね」

「わかりかねます」

「切り取り線に沿って封を破り捨て、乙女のように恥じらうソレを無理矢理引きずり出す。パイがサクッと、チョコがカリッと、この絶妙なハーモニーはまさに神の至福と言えるだろう。人を虜にして離さぬパイの実の悪魔的魅力は、ひとたびシュヴァルツシルト半径に入ってしまうと光すら脱出できないというブラックホールと同じ超重力を持っている。そうは思わんかね?」

「では、オチのほうをよろしくお願いします」  

素っ気なく言って、オタペンペン担当が立ち上がりかけた。

「待て、待て待て。それとこれとは話が別だ。こんな火の付いた飛び込み案件を無報酬でやるほどわしは暇ではない。4月の連載に向けて大忙しなのじゃ」

「センセー」

オタペンペン担当は霧島に近づき、馴れ馴れしく肩に手を回す。

「センセー、もし話を受けてくれたら、うちのアマ姉さんとの合コンをセットしてもいいですよ。センセー好きでしょ? アマ姉さんのこと」

「き、君はなにを……おっしゃっておられるのですか♡ 」                          

(完)

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