日本に必要なことを考えたら出版業界を変革することだった話
BookBaseの代表、オタクペンギン(社長)です。
この度、WiLという日米に拠点を持つベンチャーキャピタルさんに2.5億円出資をしていただきました。現在、セカンドクローズを目指して、合計で最大2.94億円の調達を目指して絶賛動き中です。
資金調達自体はあくまでもスタートラインに立っただけで、事業を大きくして売上と利益を押し上げるのが企業の至上命題ですが、スタートアップの数少ない注目イベントでもあるので、この機会に長文noteを書いて公開しようと思います。
僕自身の背景とかは、今までも都度都度語っているので、noteのバックナンバー見てもらうか、こちらのtogetterさんに取材してもらった記事を見てもらえればわかるかと思いますのでよければ!
https://togetter.com/kiji/2024/09/06/138774
今回は起業家としてのビジョンに関わる『なんで出版業界でスタートアップをやっているのか』という話です。
起業家として成すべきこと
僕は、2024年現在で31歳ということで、学生起業家とかが当たり前になった昨今だとそこそこのオッサンになってますが、起業家としてのキャリアはもう10年以上になります。
最初は資金も経験も知識もなかったので、手早くやれそうな商売から手を出して、京都の町中を野菜持って走り回っていたりしました。
そこそこ稼いだりはしてたんですが、やはりまだまだ長い人生で、自分という命をどこに燃やすかっていうのを考えるとそこそこ食えている、みたいな状況はもったいないなと思っていました。
特に僕は『持たざる者』としてのアイデンティティが強くて、金もねぇ、学もねぇ、家格もねぇ、全く何も背負っていない、そんな人間だったので、それなら大失敗して死んでも何も惜しくないなと思ったんですよね。
なので、リスキーだけど、成し遂げれば日本という国にとってデカいリターンを出すことのできる、そんな事業に挑もうと思いました。
で、そこから色々と模索するんですが、たまたま僕がバッチバチのオタクだったことも相まって、『小説を書く』ということに触れて、そこから大好きなライトノベルの世界を知って、これなんとかしないと日本の未来が大きく変わっちゃうなと思ったので、BookBaseを立ち上げました。
日本の牙城、エンタメとコンテンツ
世界において、日本といえばサブカルチャー。
そんな話を最近よく聞きます。実際、集英社のジャンプなどを中心とした漫画や、スタートアップとして上場まで果たしたANYCOLORのにじさんじやカバーのホロライブなど、世界でオタクを生み出しているコンテンツが次々と日本から生まれています。
これは偉大なことで素晴らしいことです。
でも、こういうニュースを見て、エンタメという世界で日本は安泰だ!となるのかというと全くそんなことはないと僕は思っています。
コンテンツの業界は大きく媒体ごとに分けると、アニメ・映画・ゲーム・漫画・ライブ系(音楽やアイドル)・小説などに分けられると思います。
市場規模でいうと、ゲーム>アニメ>ライブ系≒漫画>映画>小説 とかになるかと思います。(ざっくり肌感覚です)
このうち、アニメと漫画はたしかに日本が圧倒していると思います。しかし、それ以外に目を向けるとかなり厳しくて
・映画→洋画強すぎ
・ゲーム→ソシャゲを中心に中国&韓国が強い
・ライブ系→K-POPなどを中心にアジア圏と北米が強い
という感じで、わりと押されぎみな傾向があり、僕自身がユーザーの領域だとソシャゲなんかは原神&ブルーアーカイブとかで日本のオタクをぶっ刺しに来ている感じもあり、やべぇーって感じがすごいです。
さらに現状は優位にあるアニメについても、日本の労働環境としてアニメーター不足やアニメ制作会社が稼げない問題もあり、業界的な苦境が続いています。漫画もスマホ特化の縦読み漫画(Webtoon)は韓国が中心で勢いを伸ばしているところで、そうそう油断はできません。
『日本のエンタメはすごい!』というのは間違っていませんし、オタクの一人として誇りにも思っています。とはいえ、それはこれからの100年を保証するのか?というと僕はかなり不安に思っています。
そして、日本人的な感覚としてエンタメの分野ですら日本が劣後するならもう終わりじゃない?と思うところもあり、『世界において、エンタメの国は日本』というポジションを譲らないことがこれから生まれてくる日本人にとっても大事なことだと思っています。
そのために最も今やらなければならないことの一つが、『出版業界のアップデート』です。
コンテンツ産業の本質
今の時代、コンテンツにおける媒体の壁はほとんどないと言っても過言ではないと思います。一例ですが、ラノベとして出版された作品が人気とともに漫画になって、ドラマCDになって、アニメになって、楽曲がついて、ゲームになって、映画になる。すべての媒体がコンテンツの入口として機能していて、媒体が増える度にファンが増えていくわけです。
つまり、コンテンツ産業というのは単体で存在しているわけではなく、あらゆる媒体と連動して動いています。
その連動性を確保できるのは、結局のところコンテンツの本質が『コンテンツIP』という、権利の形をしているからです。
なので、コンテンツビジネスをやるぞ!っていうのは、『コンテンツIPを作り出す側』か『コンテンツIPを活用する側』の2つに分かれます。
例えば、アニメ制作会社さんだと後者がメジャーですね。もちろん、オリジナルアニメというのもあるので、前者もやれますが。
その上で現状、日本がエンタメという世界で勝てているのは
・ライセンスを数多く保有し、かつ生まれ続けている。
・各媒体のクリエイターが超すごい。
この2つだと思います。
そして、そのなかでもコンテンツを生み出す担い手として、日本のIPの源流にいる一つが『出版社』という存在です。
コンテンツ産業の土台 『出版業界』
出版社と聞くとイメージは色々あると思います。
かくいう僕もこの仕事をやる前は、あまり良いイメージを持ってはいませんでした。業界として、出版業界が苦境でやばい!みたいな話はもう何十年とありますし、なにかと炎上したりもしているので……。
炎上に関しては様々な要因があるのでここでは書きませんが、そもそも出版社、特に紙の書籍におけるビジネスは年々まずい状況になっています。
このあたりは調べればすぐに出てくるのでここでは解説しませんが、漫画を除いて、日本における『本』というものは未だに紙が大部分を占めます。しかし、この紙の書籍を取り巻く環境は大変な状況で、出口となる本屋さんがどんどん減っており、そこに連動するように印刷所さんや取次さん、ついには出版社ですら倒産が相次いでいる状況です。
なんでこうなっているのか、については少子化や娯楽の多様化など様々な観点がありますので、これだ!と簡単にいうのは危険です。複合的な要因によって、結果的に衰退しているというのが現実であり、これまでの業界がとても巨大だった分、一度マイナス方向に歯車が回りだすと、止めることは容易ではないという現状があります。
そんななか、それぞれのセグメントで生き残るための戦略を練っていますが、産業というのは一社で完結することはほとんどありません。
出版業界でもそれは同じで、持ちつ持たれつでやってきたからこそ、どこかが瓦解するだけで全体を維持できない状態となります。(いわゆるサプライチェーンという考え方ですね、たぶん)
『別に産業が入れ替わったりするのは当然のことやんけ』という話はもちろんあります。なので、産業保護をしなければならない!というようなことを言いたいわけでは全く無いです。ビジネスは商戦ですしね。強い弱いもありますし、むしろ出版業界は政治の分野まで含めて、かなり守られてきた歴史もありますから、他の業界よりも厳しい目で見る人がいるのも仕方がないと思うところもあります。
それも含めて、ヤバい!っていうのは、出版業界が瓦解すれば、さらにそこから連動している他媒体にまで影響が広がるという懸念です。
それほどに日本のエンタメにおける『出版業界』は土台になっている、ということでもあります。
出版社が担ってきた役割
出版社はなにかとニュースになることも多いので、出版社のことを嫌いになっている方も多いのは良く知っています。(昨今は特に…)
しかし、そのうえでも出版社があったからこそ、今の日本コンテンツがあるというのも間違いない事実だと思います。
出版社の仕事は多岐に渡りますが、基本的には『作家さんなどのクリエイターさんから企画や原稿を預かって、編集者とともに磨き抜いて、製品としてパッケージングして、書店に流通する』というのが仕事です。
ファション雑誌やビジネス書、実用書などはまた違うと思いますが、小説などを中心とするエンタメ出版は基本的に同じかと思います。
実際の仕事としてはそんな感じですが、さらに重要な観点として、コンテンツ全体として見た場合に出版社が担っているのは『リスクを請け負うこと』です。
コンテンツビジネスというのは、つまるところ投資業です。
なにせ、どんなものであっても、確実に儲かるとは限らないわけですからね。
超著名なクリエイターさんであっても、100%ヒットするとは限りませんし、ヒットしても儲かるとは別だったりします。
なので、出してみないとわからないですし、そういう博打をやり続けることが出版社に求められる仕事です。
その観点では、実は今回投資をしていただいたベンチャーキャピタルという仕事と極めて近いことをやっているんですよね。
メディアミックスというのは、様々な媒体でいろんな人が投資をして、大きな儲けを狙っていく!という構造なわけですが、そのなかでも出版が担っているのは、0→1となる最初のリスクです。
そして、この最初のリスクを背負うことがとても大事で、小説や漫画などの出版分野でヒットしているからこそ、次のステージとして映像などの大きな制作費がかかるところで勝負できるわけです。
これがないと、何億円と制作費がかかるもので全ロスする可能性もある博打をしないといけなくなり、出したくてもお金を出せないっていう形になります。
もちろん、出版社でもリスクを減らすために、編集者がいて、書店という流通網を作ったりしていますが、それでも確実に当たるわけではないです。
『リスクの担い手』がいる、それが日本のエンタメを支えています。
だからこそ、万が一にも出版社が日本から消えてしまうと大問題ですし、もっともっとリスクを取れる出版社が日本には必要だと思います。
世界のエンタメにおいて『日本』という国が最後の砦となる
さらに昨今の世界的情勢のなかで、『表現』という文化は規制の方向へと向かっています。そのなかで、日本は宗教的な歴史としても文化的な歴史としても、世界で唯一『二次元的表現』に対して寛容で居続けられる国です。
が、それも世界的な同調圧力に負けず、戦っていく強い企業が必要であり、その意味でもこれからの時代に立ち向かう新たな出版社という立ち位置は必要だと思います。
黒船としてのスタートアップの使命
まがいなりにもスタートアップと呼ばれる歴史に乗っかって仕事をしている身として、スタートアップの使命とはなにか、をよく考えます。
一つあるとすれば、やはり『革新(イノベーション)』だと思います。
そして、革新とは『未来を一つ、良い方向に向かわせること』だと僕は考えています。
イノベーションを起こすというと、シリコンバレーで培われたような、今まで誰も見たことがない未来を想像して生み出すことが良く言われますが、僕は日本流としてやるべきは『歴史からの再解釈と再構築』だと思っています。
日本ほど良い国はないと心から思ってますし、実際不便だなとか思うこともあまりありません。それほど日本は整備されているし、良く考えて作られた国だと思います。
しかし、だからこそ、経年劣化というものがあらゆるところにあります。
それは出版業界のような、堅牢な歴史を持っている業界ほど顕著であり、しかも簡単には直せないものです。
時代は変わりますが、大きな組織ほどそれに合わせて柔軟に変われるわけではなく、その時々で作られてきた最適な規則や慣習がフィットしないものになっていきます。
そういうものが積み重なっていけば重大なエラーを引き起こすわけですが、全部がご破産になるのは本当に最後でしかなく、ほころびを持ったままその場しのぎを続けるのが現実です。
変わらければならない、変えねばならないことは当事者なら誰もが思っていることで、気づいていないわけがない。ただ変わることが難しい。
そんなときに、スタートアップという小さなボートが役割を持つんだと思います。
小さいからこそ刹那的な変化が可能であり、歴史を持たないからこそ未来に目を向けることができる。
良い意味で、空気を読まない存在だからこそ新時代の合理性を追求することができる。それこそスタートアップが『黒船』たりえる本質なんだと思います。
日本で生まれた、だから日本のために、日本から戦う
経営者は『こだわるべきところを間違えると会社を殺す』ことになります。
でも、それはこだわらないほうがいいということではなく、ちゃんとこだわるべきことにこだわれ、という話で。
僕の場合、ルーツへのこだわりはすごくあります。
僕のルーツは、日本であり、関西であり、京都です。
なので、できる限り、そこから生まれるものやそこでやれることを重要視しています。
僕が生まれた京都には、任天堂があったり、京都アニメーションがあったりと僕が子どもの頃から夢中になった作品を生み出している企業がたくさんあります。
所在地的に京都は出ちゃいましたけど、安易に東京にいかずに関西に残ってスタートアップしているのは、そういうルーツがあるからです。
『スタートアップするなら東京じゃないと駄目だよ』
『スタートアップならDay1から海外に行くべき』
『もっと新しいテクノロジーや体験を作らないと駄目だよ』
そういう声もたくさんもらってきました。
全部、うるせぇ。
今まで誰も成し得なかった挑戦をする。それはつまり、誰もがやらなかったことをしないといけないということで。
そこにセオリーなんてあるわけがないんです。
むしろ、誰もがこうしたほうがいいっていうなら、その逆こそ活路がある。
起業家なんて偏りの塊でいい。
誰よりも最前線で、勝つまで戦います。
そうして、僕らにできる『一つ良い未来』を手繰り寄せられればと願っています。
つまるところ、面白い物語を味わい続けたいだけという話
さて、つらつらと壮大なことも書いちゃった気がしますが、僕も含めてBookBaseがやりたいことなんて、とてもシンプルな話で、オタクとしてただ死ぬまで面白い物語を見続けたいっていうただそれだけです。
しかし、ビジネスが絡んでくると、エンタメっていうのは途端に腐ったりします。
読者や視聴者っていうのはとても素直で、作り手が思うよりもよく見ていると編集者をやっていると思います。
下心が透けて見えるような媚びた作品なんて気持ちが悪いと思うし、ガワだけ真似て作られたものには見向きもしない。
ちゃんと面白いものを作らないと見てもらえません。
しかし、出版というのは投資事業なので
・斬新な企画に対して『前例ないじゃん』とかいう
・流行りに乗って、二番煎じ三番煎じをやっちゃう
・ユーザーのことがわからなすぎて、考えることをやめて数字に走る
みたいなことになりがちです。
だからこそ、僕らは常に『僕らが本当に見たかったものってなんだっけ?』という問いを持っていないといけません。
たしかに僕らはエンタメで飯を食っています。飯を食うためには稼がないといけません。
けど、エンタメの本質は人を笑顔にさせたり、感動させたりすることです。
すべては『面白い』に奉仕する。
小説の業界で聞く言葉ですが、僕ら作品に関わる人間すべてが忘れてはいけないことだと思います。
どこよりも面白い物語をつくる。
世界中の人が熱中して、人生がそこを起点に変わるような物語をつくる。
そんな挑戦を続けるために、僕らは『超挑戦型の出版社』をやっていきます。
まずはライトノベルからですが、僕らは媒体にこだわってはいません。
僕らは僕らが面白いと思うすべてのことをやっていきます。
そんな試みに、一緒に挑戦したいって思ってもらえる方がいれば、とても嬉しいです。
これから、新しい編集者や小説家さんやイラストレーターさんや漫画家さんやデザイナーなど、たくさんの人のお力をお借りしていきます。
これまでと変わりなく、頑張っていきますので何卒お力をお貸しください。
もちろん、作品を買ってもらって楽しんでもらえるのも一番の応援になりますので何卒よろしくお願いします。
というわけで、『来たれ!編集者!』
最後に本題というかこの記事の目的ですが、ちゃんと編集者を募集します…!
やることは
・作家さんやイラストレーターさんと一緒にライトノベルを制作する。
・作品の宣伝に必要なあれこれ
・ラノベを原作とするコミカライズの制作進行管理
などなどです。
詳しい詳細は下記のスライドにまとめてます。
基本的に所属レーベルは『ダンガン文庫』になりますので、男性向けライトノベルが主軸です。
BookBaseで編集者をやるメリットとしては
・小規模スタートアップなので、面倒くさい人がいない
・会社としてフットワークが軽いので挑戦がしやすい
・大阪なので、生活コストが下げやすくて気楽!
さらに、ほかでは絶対にできないこととして…
年間本数の上限はありますが、実力に応じて権限が開放されていく仕組みにしています。実際、大手出版社で編集になれてもやりたい作品づくりができない!みたいなことがありがちですが、ウチでは『編集者もクリエイターである』という考え方のもと、個々人の方針を独立させられるようにしています。
もちろん、レーベル趣旨の範囲にあることは前提ですが、間違いなく面白い仕事はできます!
キャリアも経験も不問です。しっかり腰を据えて育成もしていきます。
選考のなかで、素質と人格を測っていきます!
いつから仕事するか、とかそのあたりは個別相談なので、とりあえずラノベ編集者をやりたい!って人は気軽に申し込んでください。
応募は公式サイトにフォームを設置してますので、以下のリンクを見てください!
https://bookbase.jp/recruits
以上です!!
ご拝読いただきありがとうございました!!
公式サイト
https://bookbase.jp/
株式会社BookBase
代表取締役社長 オタクペンギン(社長)
https://x.com/NovelPengin