雪だるまとけんた
いつもなら学校の日だけど、今日はお休みです。なぜなら、たくさん雪が積もったから。学校は休みだし、雪は降っている。けんたは朝から大はしゃぎです。
「よーし、雪だるまを作るぞ」
張りきっています。お昼ご飯を食べることも忘れて必死になって作ります。
「やったぁ!ものすごいやつができた。」
けんたの身長と同じくらいの雪だるまが出来上がりました。けんたは満足してご飯を食べ終わるとうとうと…。
「雪だるまさん…。むにゃむにゃ…。」
「ふふふ、疲れたのね。雪だるまと遊んでいる夢でも見ているのかしら。」
翌朝、けんたは一目散に雪だるまを見に行きました。すると、雪はもう止んでいました。
「お母さん、今日も学校休み?」
「今日はあるわよ。早く準備しなさい。」
「はーい!」
けんたは学校に行っている間も雪だるまのことが気になって気になって仕方がありません。学校が終わると急いで家へ帰りました。今日は友達と遊んでいる暇などありません。
「ただいまー」
「おかえり」
「ねぇ、雪だるまさんは…」
雪だるまは一回り小さくなり、片方の目が落ちていました。
「え!お母さん、雪だるまさんが…!!」
「お天気になったから溶けたのよ。」
「なんで!頑張って作ったのに!どうして!!これじゃ溶けてなくなっちゃうよ。」
けんたは悲しくて涙が出てきました。お母さんは言いました。
「けんた、この前、学校で身長を測った時に前より大きくなっていたでしょう。けんたは毎日大きくなって、変わっていっているの。雪だるまさんが溶けてしまったのは、けんたが大きくなって変わっていくのと同じこと。けんたも雪だるまさんも毎日変わっているということなの。もし、けんたが変わらなくて、ずっと今のままだったらどうなると思う?」
「大人になれないってこと?」
「そうね、お友達は大きくなっているのにけんただけ小さいままってことになる。」
「それは嫌だ!けんたも変わりたい。」
「そうよね。雪だるまさんも変わっていきたいって思ってるとお母さんは思うよ。」
けんたは溶けかけている雪だるまをじっと見つめました。
「雪だるまさんにとって変わるって溶けちゃうことなの…?それじゃあ、いなくなっちゃうじゃん。けんたは変わってもいなくならないのに…。」
「けんた、雪だるまさんはいなくなっていないのよ。溶けた雪だるまさんはお水になって土にしみ込んで、今度は雲になって、雨や雪になってまたけんたのところにやって来てくれるわ。だから、消えてはいかないのよ。お別れじゃないわ。形を変えてずっと一緒にいてくれるわ。けんたに雪だるまにしてもらった雪はとっても喜んでいるはずよ。」
けんたは嬉しくなってきました。
「溶けてしまってもずっと一緒なんだね。雪だるまになれたことを喜んでくれているんだね。」
「そうね。」
「ぼく、溶けちゃう前にいっぱい遊ぶよ。」
その時、あたたかい風がけんたの頬をそっとなでていました。
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